沖縄タイムスで「往復書簡ー沖縄をめぐる対話ー」という連載が行われていて、憲法について川満信一氏と佐藤優氏のやりとりがあった。その中で佐藤氏が次のように書いている。沖縄の日本帰属の問題について意見が交わされたあとの文章である。
「ここで最も重要な論点は、川満さんが指摘された、〈沖縄戦の体験から推測しても、(日本の)周辺島嶼に対する見方は、威嚇的(である)〉という沖縄の人々の認識を内地の人々に正しく伝えることです。
大民族は周辺の小民族、ロシア人ならばポーランド人、イギリス人ならばアイルランド人に威嚇的行動をとってきたし、現在もとっていることが、認識できないのです。それだから、ポーランド人、アイルランド人は、常に過去の歴史を反芻し、異議申し立てを行うのです。川満さんのご指摘を得て、同様の構造が内地と沖縄の間にあると思いました」(沖縄タイムス二〇〇八年五月一日付朝刊)。
この一文を読んで思い出した佐藤氏の発言がある。安倍政権の外交について河合洋一郎氏と対談したときのもので、引用は講談社の雑誌「キング」の編集部ブログからである。
『対台湾 沖縄共同体を創設せよ』
ーー中国に、微妙に絡む台湾はどうですか?
河合 台湾はまた、国民党が力を持ち始めているね。
佐藤 日本は台湾に対して冷た過ぎますよ。李登輝総統の時代みたいな形になれば、取り戻せるんだけどね。
河合 問題は、尖閣諸島の領有権を巡る日台の間に中国が入ってくる危険性ですね。
佐藤 そう。台湾が日本の仲間だという安心感を一瞬で失う危険性がある。
河合 キーはやっぱりアメリカだね。
佐藤 台湾の人たちは、今の情勢を冷静に見ている。中国が台湾侵攻したときに、実際に米国は助けてくれるか?
河合 今の状況では、米国は助けてくれないと台湾は冷静に見切っていますよ。
佐藤 だから、日本が出来る事は、台湾有事となった時に自動的に沖縄が巻き込まれる状況を作っておくべきです。
河合 どのように?
佐藤 台湾と沖縄にフリーゾーンを作る。パスポートもいらずに行き来できる自由通商圏を構築する。
河合 中国が台湾に侵攻すれば、自動的に沖縄が巻き込まれて、沖縄駐留の米軍が自動的に参戦する環境を事前に作っておく、ということ?でも、フリーゾーンを作るだけで、そういう形ができるかな。
佐藤 できますよ。
(http://www.x-king.jp/blog/mt-tb.cgi/152)
何ともすさまじい対談だ。中国が台湾に侵攻した時に在沖米軍を参戦させるため、沖縄が中台戦争に自動的に巻き込まれる仕組みとしてフリーゾーンを作っておくべき。佐藤氏はそのように主張しているわけだが、沖縄にいる者からすればたまったものではない。その戦争で死んでいく者への想像力などかけらもない議論だ。初めて読んだ時は不快感や怒りと同時に、なるほどね、これがインテリジェンスの専門家の発想というものか、と思ったが、その視点にはかつて国体護持のために沖縄を「捨て石」にした大本営参謀たちと共通のものを感じる。自分は戦争に巻き込まれることのない場所にいて、「国体」や「国益」のために沖縄を利用するという視点だ。
沖縄タイムスに書いた川満氏との往復書簡の文章と、河合氏の対談での発言が、佐藤氏の中でどのようにして併存しているのだろうか。「(日本の)周辺島嶼に対する見方は、威嚇的(である)」の実例として、上記の佐藤氏の発言以上のものは、最近ではそうはないだろう。「川満さんのご指摘を得て、同様の構造が内地と沖縄の間にあると思いました」と佐藤氏は書くのだが、当の自分がその構造を露骨に示した発言をしたことを思い出すことはあっただろうか。
母親が久米島出身ということもあって、沖縄には「遠隔地ナショナリズム」を抱くと佐藤氏は「琉球新報」の連載エッセーで書いていたと思う。その言葉は真実だろうが、であるなら、沖縄が自動的に中台戦争に巻き込まれる仕組みを作れ、という発想は、自らの内なる「遠隔地ナショナリズム」とどう繋がっているのだろうか。河合氏との対談で述べたことを佐藤氏が沖縄のメディアで書くことはないだろうが、今も同じように考えているのか、あるいは変わったのか。
宮古島に住んでいた時に、平良港に停泊している海上保安庁の船の数で、尖閣諸島周辺の緊張状態が分かった。ある日、車を運転して平良港のそばを通った時、今日はやけに海上保安庁の船が多いな、と思ったら、香港の活動家らの尖閣諸島上陸問題が夜のニュースになっていた。以来、平良港の前を通る時は海上保安庁の船の様子を注意して見るようになったのだが、宮古・八重山・与那国といった地域は、中国・台湾・日本の政治的緊張関係が住民の日常生活に直結する位置にある。中国と台湾の本格的な軍事衝突ではなくても、その危険性があると報じられるだけで、観光客が激減して地域経済に打撃を与えることは、9・11以後の沖縄の状況を考えれば容易に予測できる。そういう島で生きる人々のことも考えずに、沖縄が中台戦争に巻き込まれる仕組みを作れ、と発言することは、私には愚劣としか思えない。
「ここで最も重要な論点は、川満さんが指摘された、〈沖縄戦の体験から推測しても、(日本の)周辺島嶼に対する見方は、威嚇的(である)〉という沖縄の人々の認識を内地の人々に正しく伝えることです。
大民族は周辺の小民族、ロシア人ならばポーランド人、イギリス人ならばアイルランド人に威嚇的行動をとってきたし、現在もとっていることが、認識できないのです。それだから、ポーランド人、アイルランド人は、常に過去の歴史を反芻し、異議申し立てを行うのです。川満さんのご指摘を得て、同様の構造が内地と沖縄の間にあると思いました」(沖縄タイムス二〇〇八年五月一日付朝刊)。
この一文を読んで思い出した佐藤氏の発言がある。安倍政権の外交について河合洋一郎氏と対談したときのもので、引用は講談社の雑誌「キング」の編集部ブログからである。
『対台湾 沖縄共同体を創設せよ』
ーー中国に、微妙に絡む台湾はどうですか?
河合 台湾はまた、国民党が力を持ち始めているね。
佐藤 日本は台湾に対して冷た過ぎますよ。李登輝総統の時代みたいな形になれば、取り戻せるんだけどね。
河合 問題は、尖閣諸島の領有権を巡る日台の間に中国が入ってくる危険性ですね。
佐藤 そう。台湾が日本の仲間だという安心感を一瞬で失う危険性がある。
河合 キーはやっぱりアメリカだね。
佐藤 台湾の人たちは、今の情勢を冷静に見ている。中国が台湾侵攻したときに、実際に米国は助けてくれるか?
河合 今の状況では、米国は助けてくれないと台湾は冷静に見切っていますよ。
佐藤 だから、日本が出来る事は、台湾有事となった時に自動的に沖縄が巻き込まれる状況を作っておくべきです。
河合 どのように?
佐藤 台湾と沖縄にフリーゾーンを作る。パスポートもいらずに行き来できる自由通商圏を構築する。
河合 中国が台湾に侵攻すれば、自動的に沖縄が巻き込まれて、沖縄駐留の米軍が自動的に参戦する環境を事前に作っておく、ということ?でも、フリーゾーンを作るだけで、そういう形ができるかな。
佐藤 できますよ。
(http://www.x-king.jp/blog/mt-tb.cgi/152)
何ともすさまじい対談だ。中国が台湾に侵攻した時に在沖米軍を参戦させるため、沖縄が中台戦争に自動的に巻き込まれる仕組みとしてフリーゾーンを作っておくべき。佐藤氏はそのように主張しているわけだが、沖縄にいる者からすればたまったものではない。その戦争で死んでいく者への想像力などかけらもない議論だ。初めて読んだ時は不快感や怒りと同時に、なるほどね、これがインテリジェンスの専門家の発想というものか、と思ったが、その視点にはかつて国体護持のために沖縄を「捨て石」にした大本営参謀たちと共通のものを感じる。自分は戦争に巻き込まれることのない場所にいて、「国体」や「国益」のために沖縄を利用するという視点だ。
沖縄タイムスに書いた川満氏との往復書簡の文章と、河合氏の対談での発言が、佐藤氏の中でどのようにして併存しているのだろうか。「(日本の)周辺島嶼に対する見方は、威嚇的(である)」の実例として、上記の佐藤氏の発言以上のものは、最近ではそうはないだろう。「川満さんのご指摘を得て、同様の構造が内地と沖縄の間にあると思いました」と佐藤氏は書くのだが、当の自分がその構造を露骨に示した発言をしたことを思い出すことはあっただろうか。
母親が久米島出身ということもあって、沖縄には「遠隔地ナショナリズム」を抱くと佐藤氏は「琉球新報」の連載エッセーで書いていたと思う。その言葉は真実だろうが、であるなら、沖縄が自動的に中台戦争に巻き込まれる仕組みを作れ、という発想は、自らの内なる「遠隔地ナショナリズム」とどう繋がっているのだろうか。河合氏との対談で述べたことを佐藤氏が沖縄のメディアで書くことはないだろうが、今も同じように考えているのか、あるいは変わったのか。
宮古島に住んでいた時に、平良港に停泊している海上保安庁の船の数で、尖閣諸島周辺の緊張状態が分かった。ある日、車を運転して平良港のそばを通った時、今日はやけに海上保安庁の船が多いな、と思ったら、香港の活動家らの尖閣諸島上陸問題が夜のニュースになっていた。以来、平良港の前を通る時は海上保安庁の船の様子を注意して見るようになったのだが、宮古・八重山・与那国といった地域は、中国・台湾・日本の政治的緊張関係が住民の日常生活に直結する位置にある。中国と台湾の本格的な軍事衝突ではなくても、その危険性があると報じられるだけで、観光客が激減して地域経済に打撃を与えることは、9・11以後の沖縄の状況を考えれば容易に予測できる。そういう島で生きる人々のことも考えずに、沖縄が中台戦争に巻き込まれる仕組みを作れ、と発言することは、私には愚劣としか思えない。






ウィキペディアによれば、皇室信奉者でもあるらしく、彼の使い方、母親が久米島出身で、いうことが
面白いからというのもいかがなものか。
連休中、その台湾を歩いた。
沖縄からは、たぶん、何千人か行ったはず。
キーワードは「神社跡」「原住民」「今後の台湾」。
なんか、又吉盛清ゼミみたいだが、独自の旅。
中台、戦争やるかといえば、外圧ではあるかもしれないけど、基本的にはやらないだろう。
アメリカは、一方でF-16なんかを台湾に輸出しているけど、空中給油機なんかは売らないとのこと。
むしろ、不倶戴天の敵、国民党と共産党がなかよくなって、独立派つぶし。今回の総統選挙はその一里塚。
ともあれ、佐藤優なんかがいうのとは全く違って、
沖縄はもっと台湾の歩みと向かい合う必要を
感じた旅でした。
佐藤氏の発言や書くことは、その裏を読む必要があります。例えば、沖縄と台湾がフリーゾーンを形成するのを牽制するために、わざとそういう発言をしているのではないかと。彼の基本的なスタンスは、沖縄独立を阻止することです。沖縄が独自の経済政策をとって台湾に接近するのを防ぐために、そういう発言をしているかもしれない、と考える必要もあるでしょう。
それは地べたを生きている僕らと違って、
語る対象にしがらみがないからだと思う。
あえてそうした自分をつくってきたのでしょう。
佐藤さんが守りたいのは日本、
それも明治以降の
官僚制度の整った国民国家としての日本。
そのためには、家族も自分をも犠牲にするという、
そういったスタンスを取っている。
どこまで本気かはわからない。
その地点から語られる話は聞く分には面白くはあるのですが。フォロアーがいっぱいでてくるだろうなあ。