海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

2月28日の高江の状況

2011-03-01 00:29:54 | 米軍・自衛隊・基地問題

 2月28日は午前6時過ぎに高江のN1に行った。新緑が朝露に濡れるヤンバルのさわやかな朝に、そのさわやかさを打ち消す一行が午前7時40分頃姿を現した。福島土木課長が乗った沖縄防衛局の車を先頭に、土嚢を積んだ大型ダンプカー、ユニック車などが続いている。25日(金)と同じように福島課長ら防衛局員がN1入口周辺の状況を下調べし、10分ほど遅れて他の防衛局員や作業員が乗った車がやってきた。

 すぐにダンプカーやユニック車の周りに住民・支援者が並んで抗議行動を行った。沖縄防衛局はこれまでよりも作業範囲を南側に設定して道路使用許可を得ていた。土嚢を積んだ車両を少しでもN1の入口近くに止めたかったのだろう。しかし、28日はそれがかえって逆効果となっていた。

 ゆっくりとダンプカーやユニック車が前進したが、停止位置に不満な福島課長は警察官に文句を言い出した。警察官は、作業範囲まで誘導したので、あとは当事者同士で話し合うようにと勧め、住民・支援者も、今日の作業の説明をしてほしい、と話し合いを求めた。福島課長は、あんたらと話してもしょうがない、と言い捨ててその場を離れようとしたが、よほど苛立っていたのか、左右確認をせずに片側車線に飛び出し、危うく走ってきた車にぶつかる所だった。急ブレーキをかけた車のなかで、転んだ子どもが大泣きしていたが、福島課長は一言の謝罪もなく去った。

 そのあと土嚢は下ろされることなく膠着状態が続いた。その間にも新たに支援者が次々と訪れ、トラックやユニック車のそばで抗議行動を行う人の数が増えていった。28日はN1入り口付近から南北に車列が続き、両端は見えないほどだった。最終的には120人の支援者が集まったという。沖縄防衛局側は局員が27人、作業員が62人の計89人であり、住民・支援者の数が上回ることで、土嚢は最後まで一袋も下ろされなかった。

 午前9時15分頃、スコップを持った作業員らが森の中に入った。福島課長は防衛局員らにも、外にいても仕方がないから…、と言って森に入るよう指示した。この時点で、ダンプカーやユニック車から土嚢を下ろすのは無理、と判断したようだった。作業員と防衛局員らは、森に造った道に敷いた砂利や森のあちこちにこぼれた砂利をスコップや手で拾い集め、土嚢袋に詰めると作業現場に運んでいった。この1ヶ月で森に敷かれ、こぼれ落ちた砂利はかなりの量がある。それを使って工事を進めた。

 住民・支援者からは、これは砂利の除去作業ではなく証拠隠滅だ、という批判が飛んだ。酸性土壌の森に大量の琉球石灰岩の砂利がばらまかれることにより、土質が変化し植生に影響を与えてしまう。土嚢の砂利は粉末にまみれていたが、雨で流されて石だけが残っている箇所も多い。沖縄防衛局は県道から土嚢を運ぼうとして抗議行動にあうと、森の中に道を造って運び始めた。そして、若い作業員を使い、マスコミの目が届かないのをいいことに、暴力的な土嚢運びを強行してきた。その結果として森にばらまかれた石灰岩を、後かたづけにかこつけて工事に使い、ヘリパッド建設地までの道路用に敷き詰めている。砂利は除去されたのではなく拡散されたのであり、まさに証拠隠滅である。

 県道では膠着状態が続くなか、山内徳信参院議員のあいさつやまよなかしんやさんの路上ライブが行われた。また、沖縄・生物多様性市民ネットワークの伊波義安共同代表が、ヤンバルの森の特徴や価値について説明し、同ネットワークが3月1日午前11時から嘉手納町の沖縄防衛局で行うヘリパッド工事中止要請行動への参加を呼びかけた。3月1日に工事が強行された場合には、沖縄防衛局で抗議の座り込み行動を行うので、多くの人が参加してほしいとの呼びかけもなされた。

 午前11時半頃、沖縄防衛局が住民・支援者に対し、工事で使った重機などをフェンスの外に出したい、と言ってきた。住民・支援者は集まって話し合いをもち、3月以降は音が出る工事だけでなく一切の工事を止めること、中の重機やチエンソーなどがすべて出されたか確認させること、現時点での工事の進捗状況、終了範囲を確認させることなどを沖縄防衛局に求めた。山内参院議員を含めて住民・支援者側と沖縄防衛局側の話し合いがくり返されたが、沖縄防衛局はすべて拒否し、話し合いは決裂した。

 午後2時10分頃、沖縄防衛局は話し合いが決裂した状態のまま、重機などを載せる大型トラックを強引にN1入口前に止めようとした。すぐに抗議行動が取り組まれ、大型トラックは重機を載せることなく別の場所に移動した。2月28日で砂利の敷き詰め作業や樹木の伐採作業を止めるのなら、使用した重機などを搬出することは予定に組まれていたはずだ。沖縄防衛局はどうしてそのことをもっと早く住民・支援者に説明し、調整を図らなかったのか。数日前に説明し、協力を求めていたら別の展開があったかも知れない。

 人のいない未明に重機を搬入し、裁判中にもかかわらず工事を強行する沖縄防衛局への強い不信が、住民・支援者にはある。本当に3月以降は工事をやらないのか。また不意打ちを食らわせる形で工事を強行するのではないか。音が出ない工事をどんどん進めるのではないか。住民・支援者のそういう疑念や不信は、これまでの沖縄防衛局の行動が生み出してきたものだ。住民・支援者の要求を一切認めなければ、逆に疑念や不信を高めてしまう。沖縄防衛局はもっと丁寧に調整を図るべきだ。

 大型トラックは戻って来ることなく、森の中の作業も終わって、そのあとは特に動きもないまますぎた。午後3時15分をまわり作業員が道路上に置かれたカラーコーンを片づけ始めた。午後3時半までには大型ダンプカーや作業員、防衛局員などが乗った車がすべて去った。

 そのあと総括集会が開かれ、山内議員や住民の会の伊佐真次さん、伊波共同代表のあいさつがあり、最後に島田善治牧師の音頭でガンバロー三唱を行った。

 琉球朝日放送のニュースもご覧ください。

http://www.qab.co.jp/news/2011022826207.html


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2 コメント

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春から夏へ (ゲンシケンのうえざと )
2011-03-01 16:45:51
毎日、息詰まり、憤り、高江ニュースを注視しています。
世界に起こる出来事と直結する沖縄に森も海も取り戻し、全ての動物とともににんげんも滅亡しないように人間は、自分たちが同じ地球のひとつの家族であることを自覚しなければならない。そうしなければ、宇宙の孤独な青い美しい星は漆黒の中に消えてしまう。
だから、闘うことが希望に繋がるのだ。

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高江 (anna)
2011-03-25 13:22:01
2月23日に高江の座り込みに参加した者です。あれから沖縄を離れ、自分の生活に戻ってしまいました。私がどのようにこの運動に関わっていけるのかというと、正直厳しい状況です。それが、とても辛いですね。

沖縄の外にいて、基地やそれに関連する暴力事件などを聞くたび、心が痛くなります。
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