9日の統一地方選挙から一夜が明けて、県内紙の報道を見ていると、〈名護辺野古反対過半〉という見出しが打たれていて、辺野古新基地建設に反対する名護市議会野党の健闘が強調されている。だが、野党側は14名全員の当選を目指していたが、貴重な1議席を失った。与党が立候補者を絞り込んでいたら、もっと厳しい結果になっていたかもしれない。
それでも、名護市は与野党が拮抗しているからまだましだ。宜野湾市や沖縄市、南城市、石垣市などは保守系の与党勢力が大勝し、オール沖縄陣営は過半数を獲得するだけの議員を、最初から立てることすらできていない。人口の多い都市部でこのような状況なのだ。
今回の市町村議会の結果は、30日に迫る沖縄県知事選挙に反映する。各議員の得票数が佐喜真淳氏と玉城デニー氏の基礎票になると考えれば、玉城デニー陣営は大きく水をあけられているのではないか。私には全議会の得票を与野党別に集計して分析する力量はないが、県内紙を読んでの印象はそのようなものだ。
沖縄の政治状況の保守化は今に始まったことではない。もはや革新共闘という枠組みでは県知事選挙や県内各市の市長選挙を取り組めないまでになっている。それが「オール沖縄」という新たな枠組を生み出す背景にあったが、状況は翁長雄志知事を誕生させた4年前よりも数段厳しくなっている。
翁長知事の死去によって想定外の変化があったといっても、状況は日々刻々と変わっていく。玉城デニー氏がラジオのDJをして若者に人気があったのは何十年も前のことで、30代以下の若者はほとんど知らないだろう。若者層や保守・中間層にどれだけ支持が広がるかは未知数だ。
20年前の若者たちも今は子育てに追われていて、教育や福祉でどのような支援策を打ち出してくれるかに関心があるだろう。そのための財源を含めて、具体的な政策を示せなければ支持は得られない。たとえ基地受け入れにつながる再編交付金であっても、教育や育児の経済負担が減れば助かる、という親たちは多いのだ。それにどう説得していくかが問われている。
県知事選挙まで残り20日だ。ここで日本政府の言いなりになる人物が当選すれば、辺野古新基地建設だけでなく、沖縄の将来にわたって米軍と自衛隊の基地の強化、固定化が進む。玉城デニー氏の陣営は支援者ともども、強い危機感を持って運動を取り組まないといけない。出遅れを取り戻すにはぎりぎりの時間しかない。