第二の故郷と言える「ヴィレッジ・ヴァンガード」での1974年1月11、12日、二日にわたるライブ録音、プライベートでは新しい女性との結婚とメンタル面では高揚していたに違いない。実に能弁なエヴァンスが聴かれる。
右の”SINCE WE MET”はリアルタイムでは録音からやや遅れてリリースされたが、左の”RE;PERSON I KNEW”は追悼盤?として死後の1981年に。
決して上手いとは言えない黒を基調としたイラスト・カヴァの”SINCE WE MET”は何となく期待を持たせるが、一方は聴く気も失せる酷さ。
結論を先に言えば、70年代屈指のクオリティを有していると思う。しかし、”SINCE WE MET”を押すファンに今までお目にかかった事が無く、最近発刊されたジャズ批評の40名による「私が選ぶ3枚」でも僅か1人しか”SINCE WE MET”を挙げていない。勿論、”RE;PERSON I KNEW”はいない。
何故だろう?理由は「音」です。エヴァンスのpはキンキンと耳に当たり、しかも厚みがなくキラキラ過ぎ。ゴメスのピック・アップを通したbも味気なく無遠慮に押してくる。また聴衆の拍手まで意図的に増幅?されように大きく、これじゃ、折角の「名演」が台無しです。
録音が拙かったのか、それともマスタリングの段階で何か余計な処理を加えたのか?
”SINCE WE MET”はSTEREOだが、”RE;PERSON I KNEW”は音を是正しようとして?MONOとなり、観客の雑音が入る(これが自然)曲があるものの、pのキンキンさがやや和らぎ、bも引っ込み、拍手も抑えられ、多少マシになっている。
ただ気になるのは、音の拙さについての噂は耳に入っていないのでCDは良くなっているのだろうか?
少しでも聴き易くと、マッキン34Vのイコライザー・コントロールで1,500ヘルツと10Kヘルツを絞っている。
TOPのタイトル曲、新しい夫人との出逢いを綴ったオリジナル曲”Since We Met”はさすがエヴァンス、ロマンティックな香りを放ちながら起承転結がビシッと決まったプレイは見事ですね。この時点でトリオとして初出の”Time Rememberd”もいい。ただ、テンションが張った演奏が続くのでちょっと欲張り過ぎ、詰め込み過ぎの感がして、ラストの”But Beautiful”が付け足しのように聴こえる。
方や、エヴァンス・ファンも悲鳴を上げる”RE;PERSON I KNEW”、このカヴァのセンスは何処から生まれるのでしょう。しかし、所謂「ボツもの」と言ってもこの二日間のレベルは高く侮り難し。珍しくグルーヴィー感を出す”Re;Person I Knew”、このヴァージョンが一番好きかも知れない。続く”Sugar Plum”、バカラックの”Alfie、初めの3曲の流れが抜群にいい。
自分の好みで一枚に仕上げると
A面が、”Since We Met”、”Time Rememberd”、”Re;Person I Knew”、
B面が”But Beautiful”、”Sugar Plum”、”Alfie”、
これで音がまともだったらマジで太鼓判を押すのですが・・・・・・・・