廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ビ・バップへの目配せ

2017年02月19日 | jazz LP (Atlantic)

Ornette Coleman / Change Of The Century  ( 米 Atlantic 1327 )


"来たるべきもの" が発表されて、ニューヨークを中心にして各地で騒ぎになっていた最中に録音されたアトランティック第2弾。 いろんな意味で相当
注目されていた作品だっただろうと思うけれど、前作はオーネットの作品の中ではかなりポップな(と言っていいだろう)作風だったのに対して、この
アルバムは本格的にジャズを演奏することに真剣に取り組んだ辛口な内容だ。 明らかにパーカーとディジーの演奏を意識していて、それが裏コンセプトに
なっているのは間違いない。

前作で見せた音楽の形式へのこだわりをここでは鮮やかに脱ぎ捨てて、楽曲の主題をすべて拭い去っている。 だから音楽はより抽象的になっている。
その中でオーネットはかなり力強くアルトを演奏していて、時にはパーカーのようにファットなトーンで、時にはドルフィーのように咆哮してみせる。
スピード感もあり、前作のどこか子供が遊んでいる時に見せるような遊戯感のようなものは今回は影を潜め、大人のジャズを聴かせてくれる。

このアルバムを聴いた後にパーカーのサヴォイのレコードを聴いてみると、この2つはさほど距離が離れていないということがよくわかる。 見かけ上の
形式は似ても似つかぬものではあるけれど、核心部分には共通したものがある。 オーネットの音楽には革新と保守の要素が必ず奇妙に同居していて、
それを感じ取ることができさえすればこの人への抵抗感は消える。 そういう意味では、このアルバムはジャズを演奏することによりこだわっているので、
そういうマーブルなブレンド感がくっきりとしている。

聴き終えた後に残る充実感は前作を上回る。 とにかく真面目に真剣に取り組んだ音楽で、後の彼の音楽の原石のようなラフカットされてざらりとした質感は
他ではなかなか聴けない。 折に触れてこういう音楽に接しておかないと、自分の中で上手く音楽への感性を維持し続けられないような気がするのだ。



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今週末の安レコたち

2017年02月18日 | Jazz LP


今週拾った安レコたち。 この辺りはふと聴きたくなる時があるので、手許にあると重宝する。 だから安いのが見つかった時に、サボらずに拾っておく。 



Bill Evans / Time Remembered  ( 日本ビクター VIJ-4035 )

これは探していた未発表録音ものの1枚。 エヴァンスのカッコいい時代の写真をあしらったジャケットが嬉しい。 これを聴くと、日本ビクター盤の
音質の品格の良さが改めてよくわかる。 日本ビクター盤でリヴァーサイド諸作を買い直そうかな、と考え込んでしまう。 何だかんだ言ったところで、
私はこの音を聴いて育ったのだ。 愛着の度合いはオリジナルなんかよりはるかに深い。



Jimmy Rowles / We Could Make Such Beautiful Music Together  ( 米 Xanadu 157 )

スタンダードを原曲のメロディーを解体して演奏しているので何の曲を演奏しているのか一聴するとよくわからないものが多い、とてもよく考えられた
内容になっていて、なかなか硬派だ。 単なる甘いスタンダード物にしていないところに、ベテランの矜持を感じる。 ザナドゥはプレスの版数が多く、
レイタープレスは音が薄くて興醒めするが、初期プレスの盤で聴くと音質はいい。



Mel Torme / At The Crescendo  ( 米 Bethlehem BCP 6020 )

昔からメル・トーメの代表作と言われるけれど、エンターテイメント過剰なところがあり大味な内容だと思う。 同じクレッセンドのライヴなら、
素直に歌に集中しているコーラル盤のほうが出来が良い。 あちらは、作者本人の "The Christmas Song" が聴ける。



Jimmy Raney / Solo  ( 米 Xanadu 140 )

この人はプレスティッジ盤などで聴いても本当の良さはわからない。 クリス・クロス盤やザナドゥ盤で聴いて初めてギタリストとしての良さがわかる。
これは無伴奏のソロ演奏なのでギタリストとしての真価がよくわかる内容で、年老いた見た目の印象とは違う瑞々しさが素晴らしい。 ギターを触ったことが
あれば、この作品の良さは身に染みるはず。


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少し認識が変わった Flight To Demnark

2017年02月12日 | Jazz LP

Duke Jordan / Flight To Denmark  ( デンマーク SteepleChase SCS-1011 )


昔聴いてつまらなかったのに、今聴き直すと印象が変わっているものと言えば、このアルバムなんかもそうだ。 デューク・ジョーダンのトリオの代表作と
名高い作品だけど、若い頃はまあこれがさっぱり面白くなかった。 他のアルバムと比べて選曲がいいので人気があるのはよくわかる、でも何度聴いても
自分の中に引っかかるものがない。 だからレコードは早々に処分して、それ以来このアルバムのことは意識の中から消えていた。

デューク・ジョーダンが腕の達者なピアニストとは言えないことは、マイルスの供述を待つまでもなく、大方の人が認めるところだろう。 但し、だからと言って、
それが音楽家として失格ということではもちろんない。 彼の書いた名曲たちは永遠に輝き続ける。 ベニー・ゴルソンなんかと同じタイプだ。
この2人がいなかったら、ジャズという音楽は随分と味気ないものになっていたに違いない。 

今これを改めて聴いてみると、まずは鍵盤へのタッチの素直さが心地好いことに気付く。 運指はなめらかではないけれど、そこから出てくる音の真っすぐな
ところが意外に気持ちいい。 こういう感じはジャズのフィーリングに欠ける、と捉えられ兼ねない部分で賛否は分かれるかもしれないけれど、今の私には
この音たちが心にうまく響くようになってきている。 だからその感覚に身を任せると、音の触感をトリガーにして音楽が身に染みるようになった。

"No Problem" や "Here's That Rainy Day" というセンスのいい曲が目に付くけれど、このアルバムの白眉は "Glad I Met Pat" というオリジナル。
欧州に移住後、ニューヨーク時代に近所に住んでいた愛らしい少女の想い出を綴ったこの曲は彼らしい慈愛に満ちた優雅で優しいメロディーが素晴らしい。
何気なくこういう曲をアルバムの中に入れるところも、何ともこの人らしい。 もっと前面に出して演奏すればきっと有名な曲になったのに、奥ゆかしい
というか、欲がないというか。

以前は気が付かなかったそういうことが、今はちゃんと受け取ることができる。 私も歳を取り、少しは成長したのかもしれない。
音楽を長年聴いていると、そういう風に自分を相対化できる瞬間がある。 それは決して無為な行為、ということではないのだ。


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少し認識が変わった Brad Mehldau

2017年02月11日 | Jazz LP

Brad Mehldau / 10 Years Solo Live  ( 米 Nonesuch 549103-1 )


入手してからかなり時間が経った。 まあ8枚組の大作なので、何度も繰り返し聴いて、自分の中での評価が固まるのにはそれ相応の時間がかかる。
別に義務としてそうした訳ではなく、この麗しい美音を全身で浴びるように聴くことをただ単に十分愉しんだだけだけど。

このブログにはこれまで1度も登場したことがないことからもわかる通り、私はブラッド・メルドーが「好きではない」。 私がこの人を初めて聴いたのは
"The Art Of The Trio" がリリースされて少し経った頃のことだったから、もう20年も前ということになる。 その時に思ったのは「何てつまらない音楽
なんだろう」ということだった。 そして、それが決定的な印象として自分の中に貼り付いた。 もちろん、その後もポツリポツリといくつかの作品を
つまんで聴いてきたけれど、その張り紙が剥がれ落ちることはなく、いつしかこの人への興味はすっかり無くなってしまった。

そんな中でこの大作に手を出したのは、ECMの作風へのアレルギーが無くなったことと関係がある。 それを克服した今なら、以前のような嫌悪感なく
もっと自然にこの人の音楽に接することができるんじゃないか、という個人的な理由からだと思う。 それに、レコードというフォーマットでリリース
されていることも大いに後押ししてくれた。 CDだけのリリースなら今でも聴いていなかっただろう。

第1面から聴き始めて最初に感じたのは、相変わらず頭で考え過ぎている音楽だなあ、ということだった。 白人のインテリ・アーティストらしい、高級ブランド
スーツで身を固めたスノッブな音楽。 そして、この人は自分を解き放つのが下手なんだなあ、とも思った。 なんでこんなにカチコチに固まった演奏を
するんだ? もっと肩の力を抜いて、自由に飛翔すればいいじゃないか。

ただ、聴き進めていくうちに、少し違うことも感じるようになってくる。 昔聴いたピアノトリオの演奏がまったくスイングすることなく、陰鬱な室内楽を
聴かされているような感じだったので、この人はジャズに対してどこか醒めていて距離を置いているんじゃないかと思っていたけれど、よくよく考えると、
「ジャズはスイングするもの」という定義は60年代の中ごろには既に完全に崩壊している訳で、ジャズが現代までに辿ってきた経緯を十分踏まえた上で、
この人は今でもジャズという音楽を強く信じているのかもしれないという気がしてきた。 キースのソロを聴いているとそのあまりに自我を垂れ流し過ぎる
様子に恥ずかしくて正視できないような気分になることがあるけれど、この人のソロは一定の構築感を指向することを常に忘れない。 潔癖過ぎるほどの
清潔感を感じるけれど、息が詰まるようなところはないし、嫌なところもない。 その端正に整った造形には感服するし、最初は硬過ぎると感じた音楽も
よくよく聴いてみると意外にしなやかな質感があるな、という風に認識も変わってきた。

この人の弱点は打鍵の(おそらくは生来的な)弱さだと思うけれど、鳴っている音の粒立ちの良さとピュアさはそれを補って余りある。 圧倒されるものは
感じないけれど、それでも現時点のジャズというフィールドでピアノをここまで純粋に聴かせることができる人はあまりいないのではないだろうか。
ECMを含めて美音系ピアニストは世界中に存在するし、高度な録音技術の汎用化で音の質感だけで誰のピアノなのかを識別することはもはや難しいけど、
そういう副次的なところではなく、奏でられるピアノ音楽そのものの中に聴く者を黙らせるものがあるのは間違いない。 現にこれだけの量にもかかわらず
飽きることなく何度でも聴き通せるのだ。

50~60年代の演奏を思うと、ジャズピアノというのはなんと様変わりしたことか。 パーカーやマイルスに聴かせたら、これのどこがジャズなんだ?
と言うかもしれない。 でも、ジャズという音楽は常に変わっていくものだということを証明したのはあなたたちじゃないか、と我々は返すしかない。
現在この人が多くのポピュラリティーを獲得しているということがそれを物語っている。 私もこれからはもう少し前向きに聴いてみようと思うようになった。


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「不安」の感覚

2017年02月05日 | Jazz LP (Verve)

Stan Getz / Focus  ( 米 Verve V-8412 )


エディー・ソーターとは何者なのか。 殆どの人がそういう感じだろう。 私もソーター・フィネガン・オーケストラの名前は知っているけれど、その作品は
聴いたことがない。 ドラムやトランペット奏者としてプロの活動を始めて、スイング時代にアーティー・ショウやベニー・グッドマンに楽曲やアレンジを
提供するようになり、その後は作曲・編曲家として身を立てた。 その道では大家となったのだろうけど、こういうのは日本では最も理解されにくい分野だ。

そういうあまり馴染みのない人が、いきなりこのアルバムで我々の前に立ちはだかる。 冒頭の "I'm Late, I'm Late" の劇的でショッキングなオープニング。
間隙入れずにロイ・ヘインズのドラムが不吉な音で鳴り響き、そしてゲッツがいつになく感情剥き出しなブロウで迫ってきて、聴いているこちらは思わず
背筋が凍り付いてしまう。

ソーターの書いたスコアは決して耳当たりがいいものではなく、聴いている者を不安な気持ちにさせる。 幻想的なバラードも何かを暗示するように
深い霧が立ち込めている。 その中を、ゲッツのサックスはあてもなく彷徨うかのように進んでいく。 我々はその姿を見失いそうになりながらも懸命に
彼の後を追って深い霧の中を彷徨うけれど、いつになったら視界が晴れて目的地に到着できるのかがわからない。 辿り着けそうだという予感すらない。

当たり前のことだけど、これをジャズというフレームの中で評価するのは無意味だ。 どこかにある形而上的な空間の中で何かを暗示し続ける誰かの声、
なんだかそういう感じのものを既存の秤で測ってみてもしかたがない。 「不安」に身を任せられるかどうかを試される、そこが面白い。
だから、このアルバムには中毒的にハマってしまうのだ。


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ゲッツ、天才の証

2017年02月04日 | Jazz LP (Verve)

Stan Getz, The Kenny Clarke-Francy Boland Big Band / Change Of Scenes  ( 独 Verve 2304 034 )


Gigi Campiって、欧州のノーマン・グランツだなあ、と事あるごとに思う。 音楽プロデューサーとは言え、根っこが興行師なのだ。 だから、こういう
レコードを作る。 アメリカから流出した多くのジャズミュージシャンの受け皿として作り上げたこのビッグ・バンドは異例の長い活動期間を誇った。
アメリカに戻ってもジャズの仕事は無い状態だったから、メンバーたちも前向きに活動したんだろう。 そういう彼らにいろんなレコーディングの機会を
用意して、質の高い作品を数多く残したこのプロデューサーは立派な仕事をした。

そんな中で、スタン・ゲッツを招いて共演させたこのアルバムは、バンドの作品としても、ゲッツの作品としても、素晴らしい傑作に仕上がっている。
ゲッツにはオケをバックにした作品がたくさんあるけれど、それらの中でもこれは "Focus" と並んで一、二位を争うクオリティーだ。

楽曲はすべてフランシー・ボラン作曲のオリジナルで、幻想的な雰囲気で統一されたスコアを楽団が非常に繊細且つダイナミックに演奏していく。
その中をゲッツのビッグ・トーンが鳴り響き、圧巻の音楽になっている。 ドイツの最高の録音技術で録られた音響も素晴らしく、すべてに圧倒される。

それにしても、スタン・ゲッツの柔軟性の高さには驚かされる。 こういうビッグバンドの中にいてもその音量の豊かさはダントツだし、スコアが指示する
抽象性にもきちんと応えることができる。 どこの国の音楽だろうと、いつの時代の音楽だろうと、この人には吹けない音楽などないのかもしれない。

この作品は1971年に録音されたが、翌72年にヴァーヴは独ポリドールに買収されてジャズ部門の新規制作は廃止になる。 その直前に欧州で制作された
ため、このレコードはアメリカでは制作・発売されなかった。 まあ、アメリカでは受けないだろうな、こういうハイブラウな音楽は。


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長年探していた本盤だったが、UK買付けロー・プライス品の山の中に独盤と英国盤の2つがあっけなく入っていた。 どちらも900円台だったが、その血統を
考えると独盤のほうが血筋が正しいような気がしたので、独盤を選んだ。 このロー・プライス・シリーズ、私には宝の山。


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愛という憂鬱と現ナマ

2017年01月28日 | Jazz LP (Bethlehem)

Herbie Nichols / Love Gloom, Cash, Love  ( 米 Bethlehem BCP-81 )


ハービー・ニコルズはとにかく録音が少なく、理解を深めるのが難しい。 1952年のサヴォイ録音、1955,56年のブルーノート録音、そして1957年の
ベツレヘム録音の3種類しか残っていない。 本人は常にレコーディングすることを望んでいたけれど、彼を支援してくれる人が現れなかった。
このあたりがモンクなんかと違うところで、どうやら人から好かれるところがあまりなかったようだ。 モンク自身、この人のことを評価しなかった。

その奇妙な作風や演奏スタイルから常にモンクと比較されるけれど、モンクが多くの人から愛され、ニコルズがスルーされるのはやはりメロディーへの
こだわりの有無だろう。 モンクはとにかく自身の曲のAメロにこだわって作曲しているけれど、ニコルズの曲は主題が曖昧(というか、ないに等しい)。
ものすごく好意的に解釈すればニコルズのほうが現代音楽的だ、と言えなくもないけれど、さすがにこれは言い過ぎでちょっと苦しい。

サヴォイ盤は未聴なのでどんな演奏なのかはよくわからない。 3枚の中ではブルーノートが一番入手が簡単だが、私は今も昔もこの演奏をどうしても
愉しむことができなくて、結局レコードは処分してしまった。 それに比べて、このベツレヘム盤ははるかに聴きやすい。 スタンダードが2曲含まれて
いることもあるけれど、自身のオリジナル曲もブルーノート盤よりも楽曲としての纏まりが良く、耳に残るのだ。 この盤で演奏される曲には主題らしき
ものが比較的はっきりしているし、演奏の表情も明るい。 ダニー・リッチモンドのドラムが元気よくて、演奏全体もポップな感じだ。 音楽的にはこの盤の
ほうが明らかに優れていると思う。 無理にモンクの名前を持ち出さなくても、少しクセのある、それでいて聴き応えのあるピアノトリオとして愉しめる。
ニコルズのレコードを何か1枚手許に残すのなら、これがいいのではないか。

意味深なタイトル曲のワルツの拍子がなかなか優雅で、スイングしていないにも関わらず印象的だ。 ブルーノートでは聴けないそういう意外な側面が
この盤には刻まれている。 ただ、その声はとても小さく、聴き取るには普段よりも注意を払わなければいけないかもしれないけれど。


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見識が必要なゲーム

2017年01月28日 | Jazz LP



今月に入ってUK買付けロー・プライス品が放出されて、段ボール箱に入れられて床にずらりと置かれている。 懐かしい光景が戻ってきた。
それらをゴソゴソと漁り、今週はこれらを引っこ抜いた。 これだけ買って、合計2,900円。 まあ、とにかく安いのだ。

これらの中で意外な拾い物だったのは、以下の2枚。



Al Haig / A Portrait Of Bud Powell  ( 米 Interplay Records IP-7707 )

まずは音の良さに驚かされる。 70年代の録音とは思えない、くっきりとした輪郭で生々しい音。 楽器が生きている感じがする。
アル・ヘイグの演奏も非常に闊達で、パウエルの息吹をしっかりと発している。 これは素晴らしい演奏で感動した。 



Dexter Gordon / Jive Fernando  ( 米 Chiaroscuro Records CR 2029 )

デックスにこんなアルバムがあるなんて知らなかった。 1981年8月のサンフランシスコでのライヴを収録したものだが、ピアノがジョージ・デューク
というのが珍しい。 この人の生ピアノなんて初めて聴いたけど、これが正統派のジャズピアノで、ブラインドで聴いてその名前を当てられる人はまず
いないだろう。 デックスは相変わらず絶好調で、太く大きな音でアフタービートながらなめらかな演奏が最高だ。 音質も良好で、何も問題なし。
"The Shadow Of Your Smile" を見事なバラードに仕立て上げていて、これで "いそしぎ" の名演がまた1つ増えた。


結果的には満足度の高い漁盤だったけれど、やっぱり探すことそのものが愉しい。 いかに安くていいものを買えるか、というこのゲームは止められない。
音楽やレコードへの見識が試されるのは、まさにこういう時だろうと思う。


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コマーシャルのどこが悪い?

2017年01月22日 | Jazz LP (Emercy)

Jullian "Cannonball" Adderley and Strings  ( 米 Emercy MG-36063 )


フロリダで音楽教師をしていたキャノンボールがニューヨークに出てきて演奏を始めた頃の有名なエピソードがある。 フィル・ウッズがクラブで演奏を
していたある夜、ジャッキー・マクリーンがやってきて「ちょっと来いよ」と彼をカフェ・ボヘミアへと引っ張って行くと、オスカー・ペティフォードの
ビッグバンドの前座としてキャノンボールが演奏していて、それを聴かされたウッズはマクリーンと顔を見合わせて「なんてこった!」と興奮し合った、
という話だ。

私はこの逸話がとても好きだ。 たくさんの夢を抱えた若い2人のミュージシャンが突然現れた新しいライバルの姿に興奮してその演奏にじっと見入って
いる姿がすがすがしく微笑ましい。 彼らのその時のドキドキした気持ちが何だか手に取るようにわかって、こちらも高揚した気持ちになるのだ。
特に、驚いたマクリーンがすぐにウッズを探して引っ張って行った、というところがとてもいい。

1955年にニューヨークに出てきたキャノンボールは、弟のナットと共にクインシー・ジョーンズの家を訪れ、レコーディング出来るレーベルを紹介して
欲しいと頼んだ。 そこでキャノンボールに演奏させたところ、あまりの凄さに驚いたクインシーは当時自分が専属編曲家として契約していたエマーシーの
ボブ・シャドにすぐ電話をかけて、「凄いぞ、次のパーカーが現れた」と興奮してレコーディングを勧めたという。 ちょうどチャーリー・パーカーが亡くなった
ばかりの時期だったのだ。 そして、キャノンボールはエマーシーと契約して「新しいバード」という謳い文句付きでレコーディングを開始し、その一連の
中で作られたのが、このウィズ・ストリングスだ。 これはもちろん、大ヒットしたパーカーの例のレコードの2匹目のどじょうを狙ったものだった。

デビューして間もない頃なので遠慮気味だけれど、非常に知的な雰囲気と最高度の技術となめらかな歌い方が同居していて、当時の人々が驚嘆したことが
よくわかる演奏になっている。 他の誰とも似ていない、聴いてすぐにキャノンボールだとわかる演奏になっているのが凄い。 紐付きでスタンダードで
時間も短くて、というコマーシャルな音楽として真剣に評価されることがないスタイルだけど、このアルトは他のものとは次元が違う。 コマーシャルの
一体どこが悪い?と開き直ってでも聴きたい。

キャノンボールの悪いところは、先輩の忠告や教えをあまり聞かないところだった。 マイルスは当時一番信頼できて自由にやらせてくれるアルフレッド・
ライオンと契約するように強く勧めたのに、キャノンボールはその忠告を無視してエマーシーと契約してしまう。 その結果、ミュージシャンの意向など
考えずにレコード制作のすべてに口出しするエマーシーの制作陣のせいで、キャノンボールはやりたいことも彼がやれことも何一つさせてもらえず、
一番大事な時期にその実力に見合わない作品ばかりを残すことになり、それが彼のミュージシャンとしてのキャリアを駄目にしてしまった。 
後に彼は親会社であるマーキュリーに対して、そういう制作サイドの無能と横暴を批判し不満を表明することになったが、それはもはや手遅れだった。
誰が味方で誰の言うことを信頼するべきかを見極めることは何より重要だ、という当たり前の教訓がここにはある。


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無口なベンソンがカッコいい

2017年01月21日 | Jazz LP

George Benson / Beyond The Blue Horizon  ( 米 CTI Records 6009 )


ビル・エヴァンスのモントルー・ライヴを聴いてからCTIレーベルを見直すようになり、値段の安さにも後押しされて、昔からの愛聴盤をCDからレコードへ
ボチボチと切り替えている。 さほどたくさんある訳ではないけれど、好きな作品というのは時間が経っても相変わらず好きだから、これがなかなか愉しい。

この作品も冒頭の "So What" がとにかくカッコよくて、折に触れてよく聴いてきた愛聴盤。 こうやって原盤で聴くと、CDの音の悪さが際立つ。
デッドワックス部には手書きのRVGと機械打ちのVAN GELDERの2つが刻まれており、カッティングまで本人が手掛けたことがわかる。

ロン・カーター、ディ・ジョネットのリズム隊にオルガン、パーカッションと本人のギターというシンプルな構成で本腰を入れて取り組んでいる。
一般的に嫌われるイージー・リスニング風要素は皆無で、この時代の雰囲気を色濃く反映した直球ど真ん中のストレート・ジャズだ。
その心意気がビンビンに伝わってくる。

ベンソンのギターはケニー・バレル直系で、太いシングル・トーンでしっかりとギターを弾いていくのがいい。 ギターを聴いたなあという手応えがしっかりと
自分の中に残る。 ジャズ・ギターでこういう感触が残る作品は意外に少ないもので、ギター・ジャズが日陰者扱いされる原因の一つになっていると思うけど、
このアルバムはそういうフラストレーションを晴らしてくれる。 オルガンもコンガも音楽を下品にすることなく、全体の雰囲気の中にうまく溶け込んでいる。

ソフィスティケートな歌声をメインに切り替えた後年の作品も好きだけど、無口にひたすらギターを弾いていたこの頃の作品もとてもいい。
"So What" の曲のとしてカッコよさをより引き出した、という1点だけとっても、このアルバムはもっと褒められていいと思う。



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聴かせる1枚

2017年01月15日 | Jazz LP (Verve)

Lee Konitz / Motion  ( 米 Verve V-8399 )


リー・コニッツはある意味でジャズ愛好家泣かせの人かもしれない。 誰もがこの人のことを心底好きになりたいし、白人アルトでワンホーンが基本の
作品群も手放しで称賛したいのに、我々の理想とする作品、こうであって欲しいという形を常に裏切り、距離を置き、突き放してくる。 時期やレーベルに
よってスタイルも変えていて、聴き手はそれに翻弄される。 基本的に、芸術家なのだ。

大勢の見解と同じく、私もアトランティック盤にはいくつか好きなものがあるけど、ヴァーヴに残された多くの作品は聴く気にはなれない。 別に演奏が
悪いということではもちろんなく、聴き手の勝手な思い込みでそれらの多くがやはりコニッツらしくないと思うだけだ。 ただ、何事にも例外があるように、
この "Motion" だけは無条件にいいと思う。

ありふれた5曲のスタンダードを素材に、冒頭のお決まりのテーマ・フレーズを排してアドリブから入り、逆に曲を閉じる最後にテーマのメロディーを吹いて、
それが何の曲だったかのネタ晴らしをするという凝った仕掛けにしている。 ただ、これはコニッツ・オリジナルではなく、既にパーカーがやっていた手法だ。
パーカーを批判することも辞さなかった厳しい音楽観を持ちながらも、ある時はこうしてパーカーともシンクロする。 ただ、パーカーのように技巧性と
音楽性の信じられないような調和は見られず、アドリブラインを冗長なくらいに吹き繋げていくだけに終始していて、そこが逆に批判の対象になる。

バックはソニー・ダラスとエルヴィンだけだが、この2人の演奏はまるでフリー・ジャズの演奏のバッキングのような雰囲気だ。 エルヴィンはリズムを
生み出すというよりはおかずの過剰なまでの多さで変化を与え続け、ダラスのダークなベースが不気味に疾走することで音楽が進んで行く。 コニッツの
アルトはコード進行に沿ったアドリブラインなので、このサックスのラインとベースの複線だけで調性が維持されている。 その様が素晴らしい。

若い頃と同じ切れるような感触はここでは聴けないけれど、それは後退したのではなく、成熟して新たな姿になっているものとして前向きに歓迎したい。


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ステレオプレスで聴く Bass On Top

2017年01月14日 | Jazz LP (Blue Note)

Paul Chambers / Bass On Top  ( 米 Blue Note BST 81569 )


ある日、突然 "Bass On Top" をステレオ盤で聴きたくなった。 耳にタコができるくらい聴いてきたこの有名な作品の冒頭の "Yesterdays" の
アルコの深い音色のことは折に触れてよく想い返すのだけれど、記憶の中で鳴り響いているその音をステレオプレスで聴くとどんな感じなんだろう、と
ふと思ったら居ても立っても居られなくなり、ステレオ盤を探す羽目になった。

調べてみるとステレオプレスが出されたのはリバティーへの売却後になってからのようだ(金色のSTEREOシールが貼られたものを過去に見たような気も
するけど、日本盤だったかもしれない)。 探し出してみて気が付いたことだが、これが意外と見つからない。 すぐに見つかるんじゃないかと高を括って
いたが、再発とはいえ、このあたりになるとやはり人気があるのかもしれない。 流通自体はしているんだろうけど、うまくタイミングが合うかどうかに
かかってくる。 そして、そうこうしているうちに数週間の時間が経って、ようやく入手できた。 

ブルーノートがステレオ録音を開始したのは1957年3月7日で、1958年10月30日まではモノラルとステレオの2種類同時録音が行われた。 この作品は
1957年7月14日にハッケンサックのRVGスタジオで録音されているから、マスターテープは2種類あったことになり、疑似ステレオではないようだ。

オリジナルのモノラル盤は1曲目の "Yesterdays" を劇的に演出するためか、かなり過剰にエコーを効かせてマスタリングされているが、2曲目以降は
普通のサウンドに戻るのが特徴になっている。 このステレオ盤もそれと同様の傾向になっている。

モノラルの方は音圧は高く音も太く、4つの楽器の音がリボンでくくられた1つの花束のような感じだけど、ステレオのほうはそのリボンを解いたように
音がきれいに分離していて、右からベースとピアノ、左からギターの音が出てくる。 でも、その振り分けはステレオ初期の稚拙な技術の割にはさほど
不自然な感じでもなく、特にケニー・バレルのギターは中央で定位する。

各楽器の音の艶やかさもモノラルとステレオでは変わることなく、聴いていて違和感なども特にない。 古い録音なのでいわゆるハイファイ感などは
まったく無く、そういうものを期待するとがっかりするかもしれない。 コロンビアの同時期のステレオ盤と比べると、そういう面では劣っている。
でも、冷静に考えると、モノラルのほうが音場感としては不自然なのかもしれないなあ、と考えさせるようなところがどこかある。

ステレオ盤には耳マークもRVG刻印も無いけれど、そういう知識が邪魔して音楽を愉しめないのであれば高いオリジナルを買えばいいし(特に弾数が少ない
ということもなく、割と出会う機会はたくさんあるだろう)、もっと自由に音楽を愉しめるのであれば、これを選択するのも悪くないと思うな。


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シュワちゃんも真っ青

2017年01月09日 | Jazz LP (Europe)

Bruno Marini / West Of The Blues  ( 伊 LMJ 3342 )


"ダダッダッダダン、ダダッダッダダン ~" というテーマ曲が聴こえてきそう。 タフで、マッチョで、危険な香りがする。

バリトン、ベース、ドラムスのピアノレス・トリオで自作のブルースのみをゆったりと流していく、ジャケットの印象そのままの内容だ。
ダークでディープな色合いのサウンドが深夜の雰囲気を吐き出していく。 

ベースの音程が少し甘くてリズム感もちょっとユルいのが気になるけれど、音楽を駄目にするほどではないし、幸いにして全編ブルースなのでそれくらいで
ちょうどいいのかもしれない。 ドラムもちょっと無駄なおかずが多いかなあとも思うけど、3人の音量のバランスもいいので耳障りではない。
マリーニのバリトンは相変わらずよく鳴っている。

例によって自主制作のようだけど録音も良く、オーディオファイルが喜びそうな感じだし、ジャケットも凝った造りになっている。 イタリア人らしい
モノづくりへのこだわりに満ちている。 空間表現に長けた音場感なので、音量を絞って聴いたほうが逆に雰囲気が出る。 深夜聴きに向いている。

まあ、特に変わったことをしているわけではないのでそれ以上の感想は出てこないけれど、渋い刑事サスペンス物の映画のサントラなんかに使われそうな
カッコイイ音楽になっている。 ひねくれたところもなく、素直な感じがこの人の最大の美点なのかもしれない。 人は見た目ではわからないのである。


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しばらく安レコばかり漁っていたお陰で余っていたお小遣いが少しあったので、セールの売れ残りに手を出してみた。 あとは黒いジャケットのやつが未聴だが、
いずれ安いのが出てくるだろう。


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二番煎じとか言われても

2017年01月08日 | Jazz LP

Bill Evans / Montreux Ⅱ  ( 米 CTI Records 6004 )


後期のエヴァンスのレコードの中では、これは他の物に比べて少し高い値段が付く。 なぜだかはよくわからない。 今のDU価格で5,000円+税。 
だから、他のところだともっと高い値段がついていてもおかしくない。 特に演奏が秀でているわけでもないし、格別に音がいいわけでもない。

CTIというレーベルは一般的に好かれているレーベルとは言えない。 特にこれはジャケットデザインも理解に苦しむ感じだ。 別にレアな印象もないし、
そもそも「お城のモントルー」の二番煎じだし、ということで特別扱いされる要素も思い付かない。 不思議だ。

この作品をちゃんと聴いたことがある人はさほど多くないんじゃないだろうか。 余程エヴァンスに心酔していて彼の作品なら何でも聴きたいと思っていたり、
ブートまで追いかける熱心なコレクターくらいのレベルにならないとなかなかこの辺りまで手を出すことはないかもしれない。

エヴァンスは時代ごとにライヴでの鉄板のレパートリーを持っていたが、この時はリヴァーサイド時代の曲をプログラムのメインに置いているのが
ちょっと珍しい。 ジャズ・フェスでの演奏だからテンポも速めで闊達な演奏をしているけれど、まあ、どこをどう切ってもビル・エヴァンスのピアノで、
なぜリヴァーサイド時代ばかりが褒められるのか私にはよくわからない。 "How My Heart Sings" や "Peri's Scope" なんか、初演の雰囲気そのままで
嬉しくなる。 ビル・エヴァンスは何も変わっていないのだ。 

このレコードはヴァン・ゲルダーがエンジニアだけど、例のくぐもったような音ではなく、非常にクリアでピアノらしい音になっている。 エヴァンスの
ピアノの生の音はこうだったんだなあ、ということがよくわかる。

当時は無名だったマーティー・モレルは恒例の冒頭でのメンバー紹介の際には一番拍手が少ないけれど、コンサートの最後の曲では長いドラムソロで会場全体を
煽るように盛り上げ、観客がみんな熱狂して幕が閉じる。 ここでも、最後の観客の高揚の度合いはすごい。 みんな、きっといい汗を搔いたんだね。

聴けば聴くほど好きになっていく、とてもいいアルバムだと思う。



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インテリ感満載のギター

2017年01月07日 | Jazz LP

Dennis Budimir / Sprung Free !  ( 米 Revelation REV-8 )


不勉強にて全く知らなかった人だが、安レコ漁りをしているとこういうものにも遭遇する。 ジャケット裏面を何気なく読んでいると、なんとベースに
ゲイリー・ピーコックの名前が (但し、1曲のみの参加だった)。 その後ネットの中を覗き込むと結構いろんな記事にヒットして、これにも驚いた。
この体たらくでは、ギター・ジャズが好きだなんてとても公言できない。

冒頭からいきなりゲイリーのゴツンと重いベースの音が鳴って、素晴らしい演奏の予感が高まる。 それに合わせるかのようにギターも6弦から入り、
全体が低いトーンで始まる。 こういうのはたまらない。

ただ、聴き進めていくと何だかフレーズがたどたどしいことに気付く。 もしかして、この人、下手なの? まさかね、ゲイリー・ピーコックが共演して
いるんだし。 でも、1曲しか弾いてないんだよな、もしかして怒って帰っちゃったのか? この頃は既にアイラーやエヴァンスとも演奏を済ませていた
大物だったからなあ。 それともわざとこういう風に弾いているのかな。 いずれにしても、この1枚だけじゃ何ともわからない。

そういうことを考えながらも、ピアノや管のいないギター・トリオの隙間の多い演奏がとてもいい。 どことなくトリスターノなんかの初期クール派を
連想させるような質感もあって、そういうインテリなところもいい。 ステレオ録音だけど、キリッと締まってひんやりとした空気感もとてもいい。
これはすごく気に入った。 他にもリーダー作があるようなので、出逢いを楽しみに待ちたい。

こういうのがあるから、安レコ漁りは止められない。 まだまだ、楽しい漁盤の日々は続く。



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