jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

THE FIRST RECORDINGS / ALBERT AYLER

2021-10-23 | ジャズ・ts

 

 

初めからアイラーが解ったわけではなかった。最初に聴いたのはあの“SPIRITUAL UNITY”、場所は京都「シャンクレール」。

まだ、ジャズを聴き始めて一年足らずの初心者の時である。何か異物を体内に注入されたような不快感を覚えたが、周りを見渡すと、皆、頭を垂れ、神妙に聴き入っているではないか。

はたと思った。こういうジャズを演るミュージシャンとそれを解読できるリスナーが現実にいるとは、なんてジャズは奥深く、高く険しいものかと。それから3、4年後、絶作となった“LAST RECORDING 1、2”を聴き、多くの?人達がそうであったように、初めてアイラーが解った。

“THE FIRST RECODINGS”(上)は元々はバード・ノーツというレーベルから200枚ぐらいの限定盤(タイトルはSOMETHING DIFFERENT !!)で出され、後年(69年?)、ソネットから再発されたものである。

下の“Vol.2”もサンプルでほんの10枚ほど出されたらしく伝説化されていたが、90年、DIWがバード・ノーツのオーナー、ノルドストローム氏と交渉し、リリースにこぎつけたものである。
アイラーは若い時に「リトル・バード」と言われるほどのテクニシャンだったと聞く。この2枚に納められているスタンダードやロリンズ、マイルスのオリジナル曲を聴くと、テーマ部分では確かにその片鱗が窺い知れる。後年のようなスピリチュアルな世界には程遠いが、反面、彼がやろうとしたジャズの原型がここにある。

62年10月25日、ストックホルムの‘アカデミー・オブ・モダン・アーツ’でのライブ録音。母国を逃れ、異国の地でストリート・ミュージシャンのような演奏活動を通しながらも、己の信念を貫くアイラーの姿が克明に刻まれている。

アイラーは、当時のジャズシーンの中で一般的には、死ぬまで「疎外」され続けたが、今はどうなんだろう?

収録曲を。

“THE FIRST RECORDINNGS”
 *Ⅰ’LL REMEMBER APRIL * ROLLIN’S TUNE  * TUNE UP  * FREE

“Vol.2”
 * SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE  * I DON’T KNOW WHAT TIME IT WAS  * MOANIN’  * GOOD BAIT

なんと、あのモーニン」を演っており、僅かながらの聴衆の反応がちょっと聴きものです。ここにはアイラーと聴衆の間に「疎外」という壁はない。

 


EL PAMPERO / GATO BARBIERI

2021-10-12 | ジャズ・ts

 

70年代のジャズは二人のプロデューサー、CTIのクリード・テイラーとフライング・ダッチマン(F/D)のボブ・シールによって、幕が切って下ろされた、と言っても過言ではありません。両レーベルのキャラは全く違い、ザックリ言えば、CTIが文科系、F/Dが体育系といった所か。しかし、両者の共通項が一つあり、どちらも、「芸能」の度数を上げている点です。それが、70年代ジャズのキーワードと、二人の俊敏プロデューサーの嗅覚は一致していた。

で、F/Dの強力な助っ人がジャズ史上、稀代のペテン師、ガトーである。人気は今では、想像出来ぬほど凄かった。大袈裟に言えば日本中のジャズ・ファンがそのいかさまに引っかかったのだ(笑)。

南米のタンゴやフォルクローレの美しいメロディを、官能的なリズムに乗せ、ラプソディクに、時には前衛もどきにコルトレーンばりの大ブローを織り交ぜ、キメにここぞとばかり演歌調のフレーズとこぶしを連発するとなれば、誰だってメロメロ、その上、あのビターなテナー・サウンドとくりゃー、そりゃーもう、皆、イチコロよ。ガトーのtsに「人間の寂しさを感じ、人生観を語る」ファンまで現れる始末であった。

この“エル・パンペーロ”は71年6月に開かれたスイス・モントルー・ジャズ・フェスティバルで‘フライング・ダッチマンの夕べ’と題したデモンストレーションでライブ・レコーディングされたもの。F/Dレーベル絶頂期での3作目。。最初から最後まで「ガトー節」のオン・パレード、ガトー、会心の「いかさま万国博」が暴発している
でも、安心されたし。日本だけでなく世界中の人まで、コロコロだったのだ。聴くところによると、日本での人気が凋落した後でも、アメリカでは依然人気が高く、特に中年の女性がステージのガトーに絶叫していたと言う。アメリカ版、かっての「杉様」って所でしょうか。

この世の中、「本物」なんてごく僅かで、「偽者」ばかり?である。本物を愛し偽物を楽しむ、これがJAZZを嗜む極意かもしれない。ガトーは「本物のペテン師」だ。「本物」に引っ掛かるなら、それもまた良し、である。 まぁ、ジャズ・ミュージシャンとしては「偽者」だろう(笑)。

狂乱のステージ、“エロ・パンペーロ、否、「エル・パンペーロ」、もう、グチャグチャですわ。この人の頭には「破廉恥」という文字はない。こりゃ、「破廉恥の世界遺産」だ。この手練手管のエロ事師に一度、嵌ってみるのも、一つの道だ。物書屋の手引き書に疑問を感じたら、或いは、ベテラン達のありがた迷惑な蘊蓄が苦手な方、一度お試し下され。嵌ったら、嵌ったとき、嵌った数だけ奥へ進んでいると思えばいい。


ガトーが一世を風靡したのは、50年近くも前、今思えば、実に楽しい時代でした。

 

“Bluespirits(2004.11.10)


ONCE UPON A SUMMERTIME / CHET BAKER

2021-10-07 | ジャズ・tp

(1977.2.20)

 

大好きな映画の一つに、もう、かれこれ30数年前に公開された‘ONCE UPON A TIME IN AMERICA’があります。主演はロバート・デ・ニーロ、監督は、あのセルジオ・レオーネ、そして遺作です。日本では当時、単なるギャング映画として紹介され、しかも、上映時間が短く編集されていたためか、初めて観た時、途中で解らなくなるシーンも少なからず有り、それほど評判にならなかった。それでも、レオーネ監督が描こうとした複雑な人間模様を核として壮大にしてノスタジックな世界はミステリー・タッチも手伝い感動的ですらありました。なお、後年、完全版が出され、正当な評価が得られるようになりました。

このベイカーの作品は、「栄光と挫折」といったベイカー自身の軌跡の一つとして、自分の頭に中では映画と妙に符丁が合う。カヴァの写真も、デ・ニーロがラスト・シーンで見せた意味深な笑いと何故かダブってくる。


チェット・ベイカー、かって、あのマイルスでさえ足元にも及ばなかった大スターである。因みに、ダウンビート誌の1954年のtp部門・人気投票を見ると、第1位がベイカー(882)、以下、ガレスピー(661)、H・ジェームス(449)と続き、9位にマイルス(126)、11位にブラウン(89)となっている。

ゲートホールドの内カヴァには、ベイカーのヒストリーが貴重な写真と共に掲載されていて、ディスコグラフィーのリーフレットと合わせベイカー・ファンには見逃せない一枚です。


さて、本作の聴きものは、ラストにセットされたルグランの‘Once Upon A Summertime’ですね。ダンゴのイントロに続いて、ベイカーのミュートが呟くようにテーマをなぞる。初めのワンフレーズを聴いただけで、そのハーマンの音色に魅了されるでしょう。マイルスと異なり、響きに俗っぽく言うと、「色気」がある。
アーティスト・ハウス盤は総じて好録音で、テクニカル・データも詳細にクレジットされていますが、このハーマンは抜群に「音」が生々しい。

ただ、他の曲の出来が今一つなのが残念です。

この頃、ベイカーは既にビックリするほどシワ顔になっていたが、この‘Once Upon A Summertime’で聴かせるハーマンには一筋のシワもない!!! 

そして、誰しも心の奥底にそっと仕舞い込んでいる若き日の切ない「夏の想い出」を、ベイカーは無遠慮に蘇らす。
11:20、ミラクルなのか、それともミステリーなのか? 両方だろう。

 

“Bluespirits”(2010.12.6)


ちょっとした拾い物 ・・・・・ SHURE M91ED

2021-10-03 | お遊びオーディオ

 

偶々、立ち寄ったHARD OFFで手に入れたSHUREのカートリッジ。

数あるモデル・ナンバーの中でM91ってあまり存在感がないけれど、カモメ・マークに擽られました。手を加えずテクニクスのシェル付きで聴いた所、何だか野暮ったい音が出て来ました。

ルーペで確認するとスタイラス・チップは接合ではなく無垢で針先も充分、尖っている。EDなので楕円針です。

恐らく長い間、あまりいい環境下に置かれていなかったのでしょう、リード線の金メッキ端子が見事にサビ付き、外すと端子が真っ黒に変色していました。

メンテはまず接続端子の磨きと接点復活剤でクリーニングを。そしてリード線の交換ですね。

 

 

磨き、クリーニングは普通の綿棒では大きいので、最近見つけたこの手のタイプが使い易いです。

 

 

ついでにシェルが一つ遊んでいたので交換しました。

 

 

リード線はOFCのリッツ線を。

 

 

随分、ルックスが良くなりました。

 

 

さぁ、新生M91EDはどうでしょう?

これ、アタリですね。初めはダルな音が出てきましたが、LPの片面の後半辺りからググッと生気に満ちた音が出始めました。やや、高域にアクセントを持たしているのでしょう、ソースによっては荒っぽく聴こえるかもしれませが、しっかりと芯があり、60年前後のハード・バップものにはバッチシと思います。

英世、4枚ならもう、🎯です。

 

PS、最後の画像をみて、取付けボルトの長さが左右違いに気が付き手直ししました。さらに良くなり、くどいですが大当りです。知られざる・・・・・なんちゃって(笑)