jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

日陰の男 ・・・・・ PRIME TIME / HUGH LAWSON

2024-09-29 | ジャズ・p

 

ライナー・ノーツは同じピアニストのH・パーランが書いており、ロウソンについて”underratted(過小評価)と言うよりも、“under-exposed”、直訳すると「露出不足の」、つまり「日陰の男」と評している。まぁ、42才にして初リーダー作(本作)とは、彼の長いキャリアと比較すると、的を射た表現と言える。

本レコードの特徴はまず「音」。NY録音(1977年)だが、まったくアメリカの匂いがしない。「JAZZCRAFT」がデンマークのレーベル、そして、エンジニアも名前(MICHAEL EWASKO)からしてヨーロッパ系?ということも手伝い、粘りっ気の少ないクリーンな音作りがなされている。それに加え、もともとソリッドなピアノ・タッチを聴かせるロウソンだけに、最初のアップ・テンポの‘The Highest Mountain’を聴くと、「チョット、潤いに乏しいなぁ」と感ずるやもしれませんが、逆にロウソンの初リーダー作に掛ける意気込みと感じ取るのも不思議ではありません。

また、本作では、久々にB・クランショウのウッド・ベースが聴かれるのも嬉しい。パーランもコメントしている通り、以前とはかなりサウンドが異なります(交通事故の後遺症?)。でも、伸びの良いツン・ツン・ベースが楽しめます。それと、ライリーのナチュラルで絶妙なシンバル・ワークも聴き逃すわけにはいきません。

で、中身はどうかと言うと、”The Highest Mountain”はともかく、ロウソンのオリジナル(2曲)を始めミンガス、パウエルもの、スタンダード、映画音楽等とバラエティに富む構成で最後まで聴き手を飽きさせない。

ロウソンも所属していた“The Piano Choir”のピアニスト、SONELIUS SMITH作の‘The Need To Smile’、オリジナル曲、ゴスペル・フィーリングに満ちた‘Rip-Off’では77年という時代感覚を十分表現している。そしてラスト・ナンバ-、映画‘Fitzwilly’からの‘Make Me Rainbows’。ソウルぽさを体全体で撒き散らすロウソン、イケてる。

ただ、全体に無愛想なピアノ・プレイが惜しく、いい意味での「野心」の香りが些かでも有ったならば、誰にとっても「プライム・タイム」になったであろう。
なお、ロウソンは1997年、僅か3枚のリーダー作を残しこの世を去っている。終生、“under-exposed”であった。

 

 


家内のバースデー祝い ・・・・・中国飯店 麗穂

2024-09-22 | 日記・エッセイ・コラム

 

この暑さ、先延ばししていた家内のバースデー祝いを済ませました。名古屋駅前のミッドランド・スクエア 41Fの中国飯店「麗穂」。

初めてでしたが、ゆったりした空間の中、上海と広東が融合した創作中華を楽しみました。

ウリと海老のあっさり炒めです。ひんやりして美味しいです。

 

デザート(マンゴー)の演出です。久し振りにオルゴールを聞きました。

 

眺望が一番良い席を用意して頂きました。左のやや上方の森が見える所が名古屋城です。やや右手奥、遠くに薄っすらと見える山は恵那山(百名山)でしょうか。スマホで撮っているのでボケ気味です。

 

ミッドランドへの半地下連絡通路のドライミスト、気分的にも、ヴィジュアル的にも涼感が得られますね。

 

 

「今までで一番、口に合っている」とのお言葉を(笑)頂きました。やれやれ 😥


本音はラストに ・・・・・INVITATION / AL HAIG

2024-09-12 | ジャズ・p

 

本作の目玉を1、2曲目の”Holyland”、”Invitation”とするのは、間違いではありませんが、正しい聴き方か?と言えば疑問が湧きます。通称、ミントのヘイグといわれる"TODAY"から9年を経て吹き込まれた本作の一番の聴きものは、ラストのヘイグのオリジナル曲”Linear Motion”。ミディアム・ファーストのテンポで魅力的なメロディをモーダルに弾き切るヘイグに、「伝説のパップ・ピアニスト」の面影を探すのはまず困難だが、この”Linear Motion”に新生ヘイグを聴き取る事が正しい聴き方で、本作が単なる懐古趣味的作品ではなく、74年という時代性を感じさせてくれます。

タイトル曲の”Invitation”ではボッサのリズムに乗り、煌びやかに格調高く奏でるスタイルはやはり魅力が有ります。右手の華麗なヘイグ・タッチは健在で他のオリジナル2曲もいい出来です。ただ、”If You Could See Me Now’、”Daydream"’といったスロー・ナンバーでは、感情移入にやや乏しい所が見受けられます。自分のオリジナルと比べると、大げさに言えば別人に聴こえる時があります。そうした、傾向は、以前の演奏からも時折、垣間見えていたのも事実です。例の"TODAY"でも自作曲"Thrio"のテンションの高さに対し、他の曲は甘く流れているあたり、気になります。同じ「伝説のパップ・ピアニスト」でも、オーバニーやマーマローサと違いpに立向かう気迫とか一途さが希薄と思います。でも、その軽さが、ヘイグの魅力なのかもしれません。
チョット辛口になりましたが、1982年11月16日、急逝するまで、カンバック前より多くのリーダー作を発表するヘイグの再スタートを記念する充実した一作であることには、違いありません。

 

いっそ"Linear Motion"をトップに持ってきていたならば、本作の価値がもっと上がっていたのではないでしょうか。ヘイグの本音は、ひょっとしたらこの"Linear Motion"だったかも。まぁ、そのあたりが、「伝説のパップ・ピアニスト」と言われるようになる所以かもしれません。


絶頂期の残像 ・・・STELLAR REGIONS / JOHN COLTRANE

2024-09-04 | ジャズ・ts

 

本作はコルトレーンが急逝(1967年7月14日、肝臓癌)する5ヶ月前に録音されながら、1995年に初めて(1曲を除き)日の目を見た音源(輸入盤CD)。久し振りにコルトレーンのIMPULSE後期の一枚を聴いた。

得体の知れない何かがこちらに向かってだんだん近づいて来るような不気味を雰囲気をアリのdsが醸し出し、左チャンネルから、コルトレーンの魂のかたまりのようなテナーが低く、深く響き亘る。横っ腹に強烈なボデー・ブロウを叩き込まれた感じを受け、明るかった部屋がたちまち暗くなり、まるで60年代後半、伝説の「あの頃のジャズ喫茶」と化す。一気に11曲(オルタネイト・3曲含む)を聴き通す。そして、もう一度、聴き直す。本作には、後期コルトレーン・シンドロームに悩むジャズ・ファンが恐れるラジカルなプレイはかなり退いているけれど、コルトレーンの音楽自体が持つ密度の濃さにテンションは張りっ放し。中でも2曲目の”Sun Star”が素晴らしい。
印象的なカヴァの写真は「クル・セ・ママ」と同時の別ヴァージョンで、Chuck Stewartが担当している。David  Wildが書いたライナー・ノーツに目を遣ると、本作に収録されている‘Offering(EXPESSIONで発表済)を除く新7曲は録音当時、タイトルを付けられず、リリースの際に付けられたそうです。読み流せば、何ともないが、チョット気になる。恐らく、この時点で、既にコルトレーンは死期を悟っていたのだろう。コルトレーンはインパルスと再契約した際、録音からリリースまでほぼ全権を得ているので録り溜めしていた可能性も高いです。

一休みをして更にもう一度、聴き通した。上手く表現出来ないがこのカヴァの様に深々とした前人未到の世界を粛々と突き進むコルトレーンの姿がはっきりと浮かび上がってくる。



 

当時「モダンジャズ界の黒い牽引車」と謳われた男の最後期の姿がここにある。こんな荘厳な演奏を耳にすると、しばらく他は何も聴けなくなる。この作品が録音された1967年2月15日はモダンジャズ・絶頂期の一日だった。そして、この種のJazzが当たり前の様にジャズ喫茶で流されていた「あの頃」は今振り返ると、もう二度と来ない凄い時代でした。


遅すぎる春がやっと視界に ・・・THE MOONTRANE / WOODY SHAW

2024-08-25 | Portrait of Woody Shaw

 

西海岸での数年間の生活を終え、心機一転、再び東海岸にその活躍の場を求めたショーは、73年にジョー・フィールズによって設立された新興レーベル「ミューズ」から新録を発表した。

コンテポラリーの先2作は、例えるならば、何処かしこ研究論文の発表のような堅苦しさが見え隠れしたけれど、JM、ハッチャーソンのコンボ(LIVE AT MONTREUXでの白熱のプレイが聴きもの)での経験を経て、また、プロデューサー、カスクーナのアドバイスも大きいと思うが、レコードと言う商業メデイアの側面を理解し、ハード・バップを基調に、コンガ、パーカッションを加え、色彩感と時代性を織り交ぜながら、己の存在を主張している。

本作の聴き所は、ショーのtpの吹き方の変化で、力み、突っ張りが影を潜め、スムーズで柔らかなソロ・ワークが前面に出始め、表現力の巾が増している。その好例がショーのオリジナル、妻に捧げた‘Katrina Ballerrina’、しなやかなtpプレイに愛の深さ(当時の)が覗く。

18才の時に作曲したというコルトレーンに捧げたタイトル曲”Moontrane”と天を仰ぐショーのポーズが妙に重なるこの作品、やや新鮮さに欠けるが、仕切り直しという意味ではショーにとって意義のあったアルバムではないでしょうか。このポーズ、後年、リリースされたコルトレーンの‘STELLER REGIONS’とそっくりです。

 

 

本作は当時、ジャズ喫茶でもよくかかり、ショーの認知度も上がるきっかけとなり、その頃、ショーは既に30才になっていたが、「遅すぎる春」がやっと視界に入ってきた。