米国盤の音の特長は、カッティング・レベルが高いと言うより、SPからの「音離れ」が良く、ボリュームを上げなくても音が確り前に出てくる。エヴァンスのpも音が煌めき、これ以上はケバイ、下種っぽくなる寸前で止まっている。
Warner Bros.の「音」の狙いは、オーディオ的見地よりも一般的な音響システム、環境でエヴァンスの魅力を最大にプレゼンテーション出来る「音造り」を優先したのではないかな。ゴメスのbも誇張気味な面も否めないが、音に色、表情が乗り、粘りも生まれエヴァンスとの呼応が以前より聴き取れるレベルに至っている。つまり、出来る限り多くのジャズ・ファンに本作の良さをダイレクトに伝えたいという方針からなのでしょう。加工臭が少ない自然なサウンド・クオリティを求めるならば、噂のドイツ・プレス盤等々が候補に挙がってくるでしょう。
Warner Bros.の作戦は大成功となったけれど、リリース後、すんなりと評価、人気が上がったワケではなく、一つの壁がたちはだかった。それは、A-4の”We Will Meet Again”がJ・グリフィン(ts)の十八番ナンバー”Hush A Bye”にソックリというパクリ疑惑が表立った。同曲はリリース上、前作となる同名のレコードにも収録されており、81年のグラミー賞受賞(前作)により公に不問が確定し、今では、一部から最高傑作とまで崇められるようになり、ファンのエヴァンス復権の願いが叶った「起死回生の一発」ですね。
その余波で今でも、歴としたレーベルから怪しげなブートまで発掘音源が賑やかですが、アタリ、スカを問わず、「聴いてみたい」と思わせる不動の人気を保っている。
好きな曲は、名もなき小品A-3”Gary's Theme”、エヴァンスの懐の広さ、深さを感じさせるリリシズムは無量無辺。
B-2”Sometime Ago”、ゴメスのメロディアスなプレイが聴きものですね。