jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

ちょうど今がピーク ・・・ RIGHT NOW!/ JACKIE McLEAN

2024-08-18 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

 

京都、四条河原町から八坂神社方面へ向かって行くと四条大橋の手前に高瀬川に架かる四条小橋がある。川に沿ってほんのちょっと上がると、その昔、名曲喫茶「ミューズ」があり、その左横辺りの路地に「ダウンビート」があった。うなぎの寝床のように細長く、左サイドにカウンターが奥まで続き、場所柄からしてジャズ喫茶というよりジャズ・バーと言った雰囲気が強かった。

まだジャズを聴き始めて間もない頃、初めてそこを訪れた時、入口のすぐ左の新入荷コーナーに本作が飾ってあり、”LET FREEDOM RING”の演奏に衝撃を受けていたばかりの僕は躊躇することなくリクエストした。イントロなしにいきなり、asとは思えぬ迫力あるトーンで鋭く吹き始めるマクリーンにまたしても強烈なパンチを喰らった。必死にマクリーンのソロを追いかけているうち、まるで自分が灼熱の砂漠をラクダに乗り先陣をきって疾走する「アラビアのロレンス」(映画)にでもなったかのような高揚した爽快感に包まれ、二曲目がどんな演奏だったか全く記憶がなかった。まぁ、とにかく、躍動感溢れるマクリーンのasに又しても圧倒されたのだ。

本作はマクリーンの数ある作品の中でもA面、B面、各2曲で構成された異色のワンホーン・カルテットで重量感あるtsでもこうした構成はあまり多くなく、本作の充実度、テンションは高い。しかし、僕の思い過ごしかもしれないが、「ハード・バップ」ジャッキーに人気が集まり、巷では冷遇されているようだ。

だが、マクリーンの音楽的ピークは好むと好まざると間違いなく、”RIGHT NOW”、ちょうどこの時期(1965.01.29録音)なんです。
本作の2曲目”Poor Eric”では、彼の人気の秘密とも言える「青春の甘酸っぱさ」など微塵もなく、クランショーのボーイングも効果的に利き、深く掘り下げられた哀悼の意はかってないほどの表現力を帯びている。また、B面では、コールマン、コルトレーンの影響がモロに出ている部分が垣間見えるが、「変わらずして変わる」といった矛盾を背負いながらも、果敢に攻め続ける姿は、聴く者の胸に響いてくる。ダウンビートに行く度にリクエストし、ここで聴く”RIGHT NOW!”はいつも格別だった。

 

「ダウンビート」から少し上がった所に「ブルーノート」があり、ある時、「(学生は)もっと明るい時においで」と窘められ慌てて外に出ると、空はすっかり暮れていた。あの頃、全くの世間知らずでした。

 


万年青年の挑戦 ・・・・・ONE STEP BEYOND / JACKIE McLEAN

2024-03-15 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

自分にとって「ジャズ喫茶の大名盤、人気盤」と言えば、‘COOL STRUTT'IN’でなければ‘MOANIN'’、‘SIDEWINDER’でもなく、‘AT THE GOLDEN CIRCLE / O・COLEMAN’。ざっくり言えば、ジャズ喫茶に行く度に、いつも流れていた思い出が強い。そう言う時代にJAZZを聴き始めた。随分、前に一関のベイシーを訪れた時にも流れ、驚いたぐらいです。その、コールマンに一番、インスパイヤーされたジャズマンと言えば、同じasのマクリーンを置いて他にはいない。共演までするほどですから。

前作”LET FREEDOM RING”で見せた新生マクリーンを更に推し進めた作品。カヴァ写真に映るマクリーンの険しい表情が、これから始まる新しい航海への並々ならぬ決意を物語っているようです。その決意のほどは、‘LET FREEDOM RING’と本アルバムとの間に、かって、「幻の名盤」と謳われ、後年になって発表されたドーハムが参加した「4116」の他に、S・クラークが入ったカルテット盤”TIPPIN’ THE SCALES”をボツにしている点でも窺い知れます。裏を返せば、‘LET FREEDOM RING’から本作への道程は、必ずしも平坦な一本道ではなかったワケです。

そうした試行錯誤にケリを付けたのが、マクリーンがボストンで見つけた録音当時、僅か17歳の天才ドラマー、ANTHONY WILLIAMSの存在。その辺りの経緯は、マクリーン自身が書いたライナーノーツに載っている。

この作品の特異性は、楽器の編成。通常であれば、tbではなくtp、vibの代わりにpとなる。つまり、マクリーンはモード、或いは、フリーといった演奏手法上のアプローチの他に、グループ全体のサウンドの変化をも狙っている。そして、出て来たサウンドは、青白くクールに、しかも、以前よりもエモーショナルに燃え上がっている。

A面、B面、それぞれ1曲ずつ、マクリーン、モンカーが書き下ろしている。モンカーの二曲は‘FRANKENSTEIN’、‘GHOST TOWN’と、なにやらお化け屋敷を連想してしまい、本作へのイメージと重なり、とっつき難いかもしれませんが、御心配無用。

 

 

‘LET FREEDOM RING’ほどの衝撃度はありませんが、本作の充実度は高い。ただ、隙が無いか?と言えば、そうでもない。けれども、ウィリアムスのドラミングが全て埋め尽くしている。TOPのマクリーンのオリジナル‘SATURDAY AND SUNDAY’ではbのカーンと刻む細かなビートはそれまでのドラマーとは違うリズム感を生み出しているし、‘FRANKENSTEIN’では3/4拍子とは思えぬテンションが漲っている。

ここが、単なるスタジオ・セッションではなく、マクリーンが新たに結成したレギュラー・バンドの強みだろう。

 

マクリーンはライナー・ノーツの最後で、同じバンドで直ぐにでも次作を録音したい、とコメントしている。結局は実現しなかった(ウィリアムスがマイルス・グループへ移籍)が、マクリーンの心情は、正に‘ONE STEP BEYOND’、万年青年マクリーンの新たなる本当の挑戦が始まった。

"Bluespirits20100630”


自己革新宣言・・・・・LET FREEDOM RING / JACKIE McLEAN

2024-01-26 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

これは、衝撃のレコード。その頃、下鴨高木町から下鴨一本松の下宿長屋に移り住んだ。FM放送の「ジャズ・フラッシュ」が聴きたくて、母親を拝み倒してSONYのトランジスターラジオ、「ソリッド・ステート・11」を買ってもらった。
ある夜、その「11」からこのレコードが流れ始めた。まだ、ジャズを聴き始め二ヶ月ほどの初心者の僕は、マクリーンの名すら知らず、その重厚で尋常ならざるイントロを聴いたとたん、すぐに鉛筆とメモ紙を用意した。そして、マウスピースのリードを強く噛んだ?時にでるあのフリーキー・トーン(後でこの奏法はフラジオと知った)を聴いた瞬間、全身にまるで電流が流れたようなショックを覚えた。
演奏が終り、児山紀芳氏の「レット・フリーダム・リングからメロディ・フォー・メロネェ、ジャッキー・マクリーン四重奏団でした」を紙に書く指先は、なぜか汗ばみ、しばらくの間、こんな熱情的な演奏があるのか、と茫然としたものだった。

タイトルの”LET FREEDOM RING”は1963年8月28日、キング牧師のワシントンDC・リンカーン記念館での名演説、”I have a dream"のなかで屡々、登場するフレーズですね。本作の録音は前年の1962年3月19日なので、恐らくキング牧師は前々から機会が有る毎に使っていて、マクリーンが引用したとするのが自然です。W・クオーテーション・マークもそれを意味している。なお、キング牧師は1964年度のノーベル平和賞を受賞したが、68年に暗殺されている。

本作のライナー・ノーツをマクリーン自ら書き、その中の一節に”Jazz is going through a big change, and the listener or fan, or what have you ,should listen with open mind. they should use a mental telescope to bring into view the explorers who have taken one step beyond,・・・・・"がある。つまり「ジャズは大きな変化の中を進んでいる。聴く者は誰もが心を開き、一歩先を歩んでいる開拓者たちを心的望遠鏡で熟視する必要がある。」と。

これは、ハード・バップの終焉を予感し、新しいうねりの中へ身を投じる覚悟を宣言したものと捉えていいだろう。その心意気を”LET FREEDAM RING”(自由の鐘を響かせよ」と表し、フラジオ演奏に託したのではないか。

本作はマクリーンのキャリアを語る上で必ずUpされる一枚ですが、ポジティブに語らない層が少なからず存在し、焦点はこの「フラジオ」に絞られる。

60年代のジャズは時代背景、社会情勢を抜きにして聴くことは出来ない。

僅か二ヶ月ほどのビギナーが「フラジオ」をキング牧師の言葉を借りたマクリーンの自己革新宣言と直感した。それは激動の60年代が持つ空気なのだろう。今でもこのアルバムを聴くたびに指先が汗ばむ。

"bluespirits20030207"


かって風雲児の一人だった ・・・・・DESTINATION OUT / JACKIE McLEAN

2021-08-22 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

10年ほど前、TSUTAYAの創業者、増田氏がTV番組「カンブリア宮殿」にゲストとして出演され、その時、増田氏はインパクトのあるコメントをさりげなく言われた。

要約すると「一からのオリジナルでなくても、あるものとあるものを組み合わせることによっても、オリジナルと言える価値あるものができる」と。うぅ~ん、さすが、ベンチャー界の「風雲児」と知られる方の一言って、重みというか説得力がありますね。

60年前、マクリーンの‘Aggressive Voyage’は同じように価値ある道のりだった。”ONE STEP BEYONDに次ぐ本作は、bとdsは異なるもののモンカー、ハッチャーソンが入った同じクィンテットでカヴァのマクリーンから想像できるように、ハード・ボイルド度をより深めている。前作同様、片面2曲ずつ、計4曲、マクリーン、モンカー、ハッチャーソンのソロがたっぷり聴ける。

一曲目、モンカーのオリジナル・バラード'Love And Hate’、この一発!で殺られてしまう。バラードと言っても、通常のバラードとは趣を全く異にしている。
朝もやの中、まるで遠くに聴こえる念仏のようなテーマの後、目の前に修験者、マクリ-ンがパッと現れ、深く静かに吹き始める。所々、ラプソディックなフレーズを織り交ぜながら、真正面から迫る腹の据わったソロに心が揺さぶられる。

確かに、マクリーンは変わった。


ある本のなかで、マクリ-ンはかってこう述懐している。

「プレスティッジ時代は、自分なりにありのままを出していたのに、いつも、パーカーと比較され悩んだこともあった。ハード・バップ~モードに至る自然の流れは自分にとってピッタリ合ったものと感じたが、何か欠けていて、パーフェクトではなく、そこにサムシング・エルスを加えなければ自分の音楽は完成しないと思った。BN時代初期の作品に於いても、音楽的不満は解消されず、そんな頃、ファイブ・スポットで聴いたオーネツト・コールマンに体中、電流が流れるようなショックを受け、これこそ、自分が求めていたサムシング・エルスの答になるのではないかと思え、試行錯誤の中で初めて満足の出来る作品が”LET FREEDOM RING”だった。これを更に発展させるには、レギュラーコンボを持ちたいと考えた」と。

そして、63年になってレギュラー・クィンテットを結成、4月30日に吹き込んだのが”ONE STEP BEYOND”。ハード・バップ、モードとフリー・ジャズを融合させた新境地こそ、マクリーンが追い続けたオリジナリティ溢れるジャズだったのだ。
 
祈りとも念仏とも聴こえるこの'Love And Hate’の厳粛さは、アグレッシブ・マクリーンの極みの象徴と言っていいだろう。

3/4拍子から4/4拍子と変化するスリリングな‘ESOTERIC’、爽快なスピード感と火傷しそうな熱いソロが続く‘KAHLIL THE PROPHET、どことなくほんわかムード漂うブルース曲‘RIFF RAFF’、どれをとっても密度の濃い演奏が続く。つまり、モンカー、ハッチャーソンを始め、メンバー全員のベクトルが正に一つ!
本作も前作同様、マクリーン自身がライナー・ノーツを書いており、、こんな一節がある。
‘Everything changes with time, and music is no different. Today the compositions are getting more and more involved with form, rhythm changes and breaks.
更に、
‘Today we live in an age of speed and variety,We live in an age of men seeking to explore worlds beyond.

 

(1963. 9. 20)

60年前、マクリーンは、風雲児の一人だった。ジャズ・マスコミが盛上げ喧伝するハード・バップ・ジャッキーだけがマクリーンではない。

”Bluespirits”(2012.3.2)


熱を以って暑を制す ・・・・・・・ JACKIE McLEAN / JACKNIFE & HIGH FREQUENCY

2018-08-08 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

1975年にRE-ISSUE シリーズもので陽の目を見た未発表作品2枚組。

元々、”JACKNIFE"(4223)、”HIGH FREQUENCY”(4236)としてリリースされる予定でしたが、発売ローテーション事情?により「お蔵入り」した音源。シリーズの画一的なカヴァ・デザインのせいか内容の割にそれほど話題に上らなかった記憶が。

パーソネルは、”JACKNIFE"(1965年9月24日)

Lee Morgan (tp) Charles Tolliver (tp) Jackie McLean (as) Larry Willis (p) Larry Ridley (b) Jack DeJohnette (ds)   

”HIGH FREQUENCY”(1966年4月18日)

Jackie McLean (as) Larry Willis (p) Don Moore (b) Jack DeJohnette (ds)

カヴァ表記では”JACKNIFE"のQUINTET、SEXTETのみでメンツは出ても”HIGH FREQUENCY”のQUARTETが抜けている。しかもtp二本のSEXTET演奏は1曲のみと、なんともはやいい加減で手抜き状態に。

一般的にはモーガンが入った”JACKNIFE"に関心が行くけれど、このメンバー、コンセプトからはもう微妙な立ち位置に置かれている事がハッキリと浮かび上がっている。モーガンのソロだけを切り取って聴けば決して悪くないが、流れの中に落し込むとちょっと苦しいかな。しかもトリヴァーと比較すると尚更。好きなトランペッターですが、残酷な言い方をすれば、周回遅れの感が否定できない。

かってE・ヘンダーソン(tp)がモーガンに教えを請うた時、親切に細かな点まで教えてくれ、モーガンは常にストック・フレーズを幾つか用意していてそれを上手く組み立てる演り方を取っている事を知ったそうです。なるほど、その演り方では皆で渡れば怖くないハード・バップ時代であれば兎も角、多様性を孕んだ60年代半ばになると・・・・・・・

一方、付け足し扱いのワン・ホーン・カルテットの”HIGH FREQUENCY”、実はこれがイイ!

1年前の”RIGHT NOW”の120%フル・ショットもいいが、80%コントロール・ショットの本作は更に素晴らしい。熱いマインドはそのままに表現力に磨きがかかっている。

SIDE3の2曲はコルトレーン、コールマンの影響を受けながら確立されたアイデンティティがしっかりと刻み込まれ、asとは思えぬずっしり重くディープな音色にマクリーンの気迫が乗り移っている。ここまで凄みあるasを吹いたのは後にも先にもマクリーンだけだろう。

SIDE4の3曲はパッション一本槍ではない柔軟性が美味しい。

”Wise One”(CRESCENT/J・COLTRANE)を想わせる”Moonscape”の深々としたバラード、モーダルなボッサ・ロックの”Jossa Bassa”、そしてサイドワインダー風モーダル・ファンクの”The Bull Frog”、どれもそんじょそころのヤワな演奏とはレベルが違い、ハード・ボイルドです。

”High Frequency”と”The Bull Frog”の2曲を提供しているハンコックもどきのL・ウィルスのpも見事。

で、本作のもう一つの聴きものは、本格的にデヴューしたばかりのJ・DeJohnetteのドラミング!

ロイド・グループに入る前(JACKNIFE)と入団直前、直後?(HIGH FREQUENCY)で若々しくキレのあるパフォーマンスがホント素晴らしいです。音がややハイ上りもあってこれほどまでに前面に出ている例は直ぐに思い出せない。

将来が約束されたセッションですね。これはもう一つの「掘り出しもの」ですよ。

酷暑の中、所用で街中へ、もうヘロヘロでした。帰宅してこの一枚を。暫し暑さを忘れ聴きに没頭しました。


熱くてクール ・・・・・・・・ACTION / JACKIE McLEAN

2018-07-23 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

家の中の温度計は34℃に、念ため外気温(日陰)を測ると40℃を。アスファルトの街中じゃぁあるまいし・・・・・・・

明日のゴルフを早めにキャンセルして大正解。

熱い一枚を。「長時間聴いても聴き疲れしない音」、オーデイォの極意、王道と言われている。

その観点からすれば、この「音」は即、失格、落第だろう。いきなり、不穏めいたメロディがけたたましい音で飛び出してくる。

 

 

ゲルダーは「極意?王道? それがどうした」とばかり、当時のマクリーンの抑えても抑えきれない創造意欲と燃え盛る熱量をダイレクトに伝えるには「これしか無い」音で録り、ウルフはローアングルで力感・躍動感を高め、マイルスは敢えてネガを、そして朝顔の上に”ACTION”をやや斜めに三段重ね、しかも余白を充分に。

聴く前からイマジネーションを駆り立てられる。BNならではの「いい仕事」してますね。

 

 

 N・ヘントフはライナー・ノーツで本作は「アウトサイド(新しい方向性)とインサイド(伝統)の両方を表現している」と。

確かに”LET FREEDOM RING”(BLP4106)から始まるこれまでのアグレッシヴ・ジャッキー作品群の中では「アウトサイド面」がやや薄らいでいる印象を受けるけれど新進性が後退しているわけではない。

その例が、「パーカーの完璧なプレイに対し、自分は今まで何度トライしても納得できる演奏は出来なかった」と述懐している”I Hear A Rhapsody”。

この時代のマクリーンがスタンダードを取り上げるのは珍しく「やっと納得できるレベルになった」証だろう。

この曲は57年の”MAKIN' THE CHANGES"(NEW JAZZ)にも収録されていて、聴き比べると7年の間に何を捨て、何を習得し、進化・深化したか良く解ります。BNでは一曲だけスタンダードを一種のサービス?のように取り上げるケースがまま有りますが、本作は趣旨が全く違います。このポイントを聴き逃すと ・・・・・・・・

一番好きなナンバーはラストの”Hootman”。フラジオを織り交ぜ悠然と吹くマクリーン、実にクール。フラジオをネガティブに捉える人もいるけれど、自己表現に制約は無用、何の抵抗もなく聴けます。

好むと好まざると、この時期がマクリーンの音楽的ピークですね。


貴重なアルバム TIPPIN' THE SCALES / JACKIE McLEAN

2014-02-22 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

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左が、かって「世界初登場」としてキングからリリースされた所謂、「初版もの」、右が、暫くして、米国、及び東芝から発売されたカヴァ。内容は同じです。

1962年9月28日に録音され、ずっと「お蔵」にされた一枚です。

パーソネルは、

JACKIE McLEAN (as),SONNY CLARK (p),BUTCH WARREN (b),ART TAYLOR (ds)というクァルテット。

マクリーンとクラークと言った人気者の作品にしては、それほど話題、注目されていない一枚です。しかし、マクリーン、クラークのファンなら是非、揃えて頂きたいアルバムですね。たとえ「お蔵入り」作品といえども。

何故ならば、マクリーンが、それまでのハード・バップ・スタイルから新しいジャズの流れに沿い「自己革新」するまでの、正にその成長過程を刻んだ記録として、また、もう一人のクラークの最後期のプレイを記録した極めて貴重な作品なのです。

それなのに、あまり日が当らないのは、推測の域を脱してしていません(邪推やもしれません)が、マクリーン・ファンは‘LET FREEDOM  RING’を境に、二分され、両者から「谷間」的作品のような扱いを受けているのではないでしょうか。確かに、本作のマクリーンは「保守と革新」が混じり合っていて、それが「お蔵入り」の主因だったのだろう。

でも、ジャズ(レコード、CD)の聴き方(コレクション)にセオリーなどありません。

惚れた、或いは、好きなミュージシャンの作品は、世評に惑わされずとことん聴いたり、収集すると意外な発見をします。

例えば、本作のB-2、クラーク作の‘TWO FOR ONE’、モーダルな色合いが濃い曲調の中、新しい試みに確信を得たようなHOTでフレッシュなソロ・ワークを聴かせるマクリーンと、ハード・バップ・オンリーのイメージが強いクラークが美しいシングル・トーンで応える展開が実に清々しい!

TOPのタイトル曲もGooですね。 

また、ラストのスタンダード、‘CABIN IN THE SKY’でも単なるスタンダード解釈に終わらず、新しい方向性をも示唆している。

このレコーディングの約4ヶ月後の1963年1月13日、クラーク急逝、享年31歳。

本作からは到底、想像できないほどクラークのプレイは充実している。ひょっとして「最後の雄姿」だったかもしれません。


JACKIE McLEAN QUINTET

2010-12-26 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

                                               boston acousticsで聴いた今日の一枚

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           Jackie Mclean Quintet / Jackie Mclean   (Blue Note 4116)

1962年の6月14日に録音されながら「お蔵入り」となり、後年、日本で初めてリリースされた所謂「幻の一枚」ですね。ただ、その時(LP)は、非売品扱いで、確か、BNのレコードを何枚か購入すると特典として配布される仕組みだったと思います。上手い商売を考えたものですよね。自分もダブリを承知で手に入れました(ムカッ)。

バカバカしい事に、この非売品はしばらくすると、中古店で9,800円位の価格で出ていた記憶があります。

その後、CDになってからは、ちゃんと販売品としてリリースされています。

personnelは、KENNY DORHAM (tp),JACKIE McLEAN (as),SONNY CLARK (p),BUTCH WARREN (b), BILLY HIGGINS (ds)

この作品は61年に結成され、評判となったドーハム=マクリーンの双頭コンボの一連作の三枚目。一枚目はPJの‘INTA SOMETHIN'’、次がUAの‘MATADOR’、そして本作となります。面白い事に、PJ盤は二人がリーダー、UA盤はドーハム名義、本作がマクリーン名義となっていますが、何故か?本作だけリアル・タイムでは発表されませんでした。その理由として、当時、マクリーンの演奏スタイルの変化の過渡期的演奏と見做されたようですね。

そうした事情を抜きにして、改めて聴き直してみると、いゃー、なかなかどうして、BNらしくしっかりした枠組みの中、充実した演奏が繰り広げられている。フロントの二管も好調ですし、リズム・セクションもさすがです。ソニ・クラの存在もうれしいですね。

ただ、重箱の隅を・・・・・・・・式で突っ込むと、ソツが無さ過ぎる感がしないワケではありません。

この辺り、ライオンが見送った主因かもね。

でも、車の中で聴くと、丁度、イイ塩梅なんですけどね~