jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

アンニュイな魅力も ・・・・・ AT THE CROSSROADS / SONNY CRISS

2022-08-31 | ジャズ・as

 

積極的にオリジナル盤探ししたワケでもないけれど何故かオリちゃんを手元に置きたい一枚。長年、縁なく国内盤で過ごしている。以前、ずっと探し求めていたJ・ネッパーの”A SWINGING INTRODUCTION”(Bethlehem)を諦めかけ、ブログにUPしたら、2、3ヶ月後に忽然と目の前に現れた成功例から、今回もと・・・・・・(笑)

クリスのレコード上の活躍時期はザックリ言って三つの時期に絞られる。一つがImperial三部作で知られる1956年、二つ目はPrestige七部作の1966~1969年、そしてMuse二作とXanaduの1975年とほぼ10年周期で、本作は丁度一期と二期の間、1959年3月、シカゴでマイナーなピーコック・レコードに吹き込まれたもの。曲によりO・ハンセン(tb)が入り、W・ケリーが契約上の問題からJOE SCOTTの変名で参加している。60年代の荒波に巻き込まれる前、不安、不信、焦燥、等々のネガティブな感情を感じさせないクリスの安定したアルトが披露されている。

 

 

クリスの個性、魅力と言えば、エキセンテリックに高速で歌ったと思えば、ブルージーにバラードを吹いたり、そのギャップの大きさですが、もう一つ、アンニュイな吹きっぷりは知られざる魅力です。A-3の”I Got It Bad”は”SATURDAY MORNING”(XANADU 105)のラストの‘Until The Real Thing Comes Along’に通ずる気怠さが堪らない。他には”You Don´t Know What Love Is”ではいきなりメロディをストレートに吹くハンセンのtbに妙にドキッとさせられ、この曲のメロディの良さを再認識し、続くクリスのイノセントに歌うasも上等です。

後年のような毒気はまだ感じられないが、こうした薄味なクリスも結構、イケます。

 


R.I.P. ・・・・・ CURTIS FULLER

2022-08-20 | ジャズ・tb

 

お盆期間中、大人しく自宅に籠城し、Net散策を。C・フラーが昨年の5月18日に亡くなっていることを知りました(忘れていたかもしれない)。死因は明らかにされてなく、享年86。

追悼に選んだアルバムは70年代に入り、MAINSTREAMに録音した2作。ジャズ・メッセンジャーズ在団中に吹き込んだ”CABIN IN THE SKY”(1962年)以来のリーダー作です。

ハバード、ショーター、フラーから成る三管編成ジャズ・メッセンジャーズの解散(1964年)後のフラーの活動は、1971年録音”CRANKIN’”(右)までの7年間、音信不通状態と言っていいほど。

次世代のリズム・セクションとエレキ導入と70年代を背景に、カヴァから窺えるよう結構、熱くバリバリとtbを鳴らしている。ハード・バップ時代の僚友ハードマン(tp)の参加はどうかな?と思うけれど今となれば微笑ましく聴けます。

 

翌1972年録音の”SMOKIN'”(左)もエレキを導入しながら、サイドは同世代のメンバーで固められ、特段、新鮮味は感じないが、持ち味は十分に発揮している。笑顔が出来栄えの納得さを表している。

 

 

批評家達の評価ではJ.J.ジョンソンの独走状態のtb界ですが、愛される点ではハード・バップ時代の人気盤が多いフラーがジョンソンを上回っているでしょう。

遅れ馳せながら、R.I.P. CURTIS FULLER


数より熱量 ・・・・・ UNKNOWN SESSION / BILL EVANS

2022-08-13 |  Artistry of Bill Evans

 

聴く前からグッと引き込まれるミステリアスなタイトルとカヴァ。

録音テープの存在が一部を除き明確でなかったのか、日本のビクターがこの単体レコードの形でリリースしたのは録音から21年後の1983年。

もう少し遅く、吉祥寺のご領主様がジャズ文壇に登場した時期後にリリースされたならば、このタイトルではなく、”MEETS ZOOT”、或いは”WITH ZOOT”になっていたかもしれません(笑)。

ちょっとしたZOOTブームが沸き上がった中、便乗的に本作の評価、人気が上がったか、と言えば、不思議なことにそうならなかった。勿論、レギュラー作品でなかった経緯かもしれませんが、エヴァンス・ファンは思いの外、冷静だった。

中には、「ズートはゲッツではなかった」とする見方もありますが、ゲッツとのセッション(VERVE)もお蔵入りになっているので一発回答ほどの説得力を持たないけれど、当たらずとも遠からず、のラインは越えているのではないか。詰まる所、相性の問題と思う。強いて技術、演奏面で探せば、ズートの特徴の一つである啜り上げるような下町ぽいフレージングとエヴァンスのpとの調和の度合いです。

もう一つ、不幸なワケは、エヴァンスの不純な動機(金目当てとされる)により録音された所でしょう。リリースすれば、ひょっとしてその動機が表沙汰になるリスクを恐れたエヴァンスが自ら闇に葬った(笑)、とする推理もまんざら荒唐無稽ではありません。逆説的に言えば、リスクを冒してまでリリースするほどの出来ではない、と自覚したのでしょう。

ただ、タイトル、カヴァ、成り立ち等々、何一つ華がなく「陰」のイメージが強いものの、隠れた魅力を探り出し、支持するファンの熱量はその数ほど少なくない。


屈指の名盤に成り得たのに ・・・・・ THE TOKYO CONCERT / BILL EVANS

2022-08-05 |  Artistry of Bill Evans

 

エヴァンスの初来日のコンサート録音(1973.1.20 )の割に巷の評価、人気はそれほど高くない。出来が悪いわけではないのに。元凶は朱のカヴァ、将又、むさ苦しさを漂わすロング・ヘアか? 

米FANTASYの初版もの(1974年リリース)はSONYのオリジナル国内盤(”LIVE IN TOKYO”)とタイトルが微妙に異なります。少しでもエキゾチックな雰囲気を出そうとしたのでしょうが、笑える冠(デザイン)です。

で、指折りの名盤に成り損ねた理由は何かと言えば、100%独断ですが、選曲でしょう。

全9曲、59分の長丁場、最後の2曲”Gloria’s Step”(7:56)、”Green Dolphin Street”(6:47)は盛り過ぎと思います。ステージでは必要でも、レコードではそうでないものもあり、折角、来日記念にありがちなヒット曲オン・パレードを避け、”My Romance”を除いて日本で初演、それに近い曲で構成され、従来のライブものと違うエヴァンス像を築き上げているのに最後の最後に緩手が出ちゃいましたね。

”Yesterday I Heard The Rain”の「皆さん、雨音が聞こえるかい?」と、会場の一人一人に語り掛けるようなバラード、C・フィッシャーの”When Autumn Comes”のメランコリックなメロディにさりげなくリリシズムを織り込む表現力は他の誰も足元にも及ばない。マイルスのミュートと同じですね。他の”Mornin’ Glory”、“Up With The Lark”、”T.T.T.T”、全部良いではありませんか。”My Romance”もゴメスのアルコは如何なものか、と思いますが、ライブならでは演出とポジティブに捉えたい。

選曲はエヴァンスが決めたはずで、”AT TOWN HALL”では曲数を絞り過ぎるほど完璧主義に徹したのに・・・・・、ゴメス(b)とモレル(ds)の進言でピアノ・ソロに急遽、変更した7曲目”Hullo Bolinas”までで押さえておけば、我が国が世界に誇れる傑作”THE TOKYO CONCERT”(LIVE IN TOKYO)が誕生したでしょう。

なお、このFANTASY盤、元の録音が良いのでしょう、やや腰高ですがいい音してます。我が国の技術陣、さすがですね。一方、CD(SONY マスター・サウンド)はダイナミック・レンジが広く、前に音がせり出してきます。