半世紀も前の臨時増刊号が出てきた。1967年と言えば、コルトレーンの急逝というジャズ界にとってショッキングな年でしたが、我が国では空前の「モダン・ジャズ」ブーム、「ダンモ」とも呼ばれ各地でジャズ喫茶が花開き、大いに賑わっていました。
自分もこの年の春から聴き始めたばかりですから懐かしいですね。
何十年ぶりに目を通しました。興味深かったのが「新モダン・ジャズ十傑」という座談会。選考者(敬称略)は、本多俊夫、岩波洋三、児山紀芳、野口久光、油井正一の五名。
今となっては、遠い昔話の感がしますが、当時の自分にとってはチンプンカンプンの話。
二年半前に「モダン・ジャズ10傑」を選出したばかりで、「新」をどう解釈するか、入口で確認したものの、「新世代」という何ともファジーな着地点から始まったため、途中から脱線気味に。
前回の「モダン・ジャズ10傑」に選出されたのは、ロリンズ、G・エヴァンス、マイルス、モンク、ゲッツ、ガレスピー、パウエル、ローチ、コルトレーン、ミンガス、パーカー、クリスチャンの10名と、言いたいところだが、何故か12名になっている。その経緯について触れられていないので分かりませんが、多分、紛糾した所産と推測できます。
前回で揉めたのは、「モダン」という「縛り」で例えば、エリントンが外された遺恨?があったようです(笑)。
今回も「モダン」という縛り、そして前回選出された者は除外、補欠選出ではない、というのが大原則です。
そもそも、僅か2年半の間に新しい「十傑」が生れるのか、と指摘もありましたが、「今後の期待感を含めた新世代」で一応、一致したけれど・・・・・・
予め編集部から候補者50名ほどがリスト・アップされ、一次選考は全員一致(フルマーク)で、A・アイラー、O・コールマン、E・ドルフィー、E・ジョーンズ、B・エヴァンス、C・テイラーの6名が決定。時代を反映して、ニュー・ジャズ派がズラリと。
ところで、その50名ほどのリストの中で、?と思う人達が随分います。例えば、A・ファーマー、J・ハンディ、G・マクファーランド、ラロ・シフリン、ジェラルド・ウィルソン、D・ザイトリン、J・ホール、G・ザボ、A・ゾラー等々、他に名を挙げればキリがありません。ま、自分が知らない(活動を)だけかもしけませんが。
で、二次選考で残りの4名を選出する前に、ある一人から、リスト外で対象候補者を挙げてはどうか、と提案が出されすんなり承認。筋書き通りか?
ここから、当初の縛り、大原則が崩れ、自己主張の世界が始まる(笑)。前回選出済みで死んだはずのコルトレーンの名が挙がるほどの迷走ぶり。
結局、D・チェリー、L・コニッツ、G・ラッセル、D・エリントン、H・ハンコック、R・ディビスが、アレ、6名!また計12名に。
最後は、ギブ&テイク、立場上の力関係、押しの強さ、妥協ですね(笑)。10名なんて端から建前ですよ。
早い話、誰が選出されか関心はなく 、各人がどういう選考基準で、誰を、そして、どういうコメントをしているか、興味がありますね。
この辺りで止めようと思いましたが、チョット暇なので、もう少しお付き合いを・・・・・・・・・・・
おもしろい発言をピック・アップ。
★「前の10傑に入った人でもいいなら、マイルスを押したい」に対し、
「彼自身はそれほど変わっていない」、「以前ほどスリルがない」、「エリントンを降ろすのになぜマイルスを二度も入れなければならないのか」と反対意見が出て却下。マイルスに聞こえたのかも(笑)。エレキを導入し始める。
★リスト外の「コニッツを強く推したい」に対し、
「果して新世代の音楽としてどうか」と「それなら他にも良い人がいる」と反対意見もあったが、提議者の「今から考えれば、前回、ゲッツを入れてコニッツを落とすなんて・・・・・・・・・・・・一言いいたい」で逆転勝訴。もう怨念?と立場上の力関係ですね。
★一次選考で3人も当選に挙げ次点トップのC・ロイドについて、二次選考では
「この人はクリティック・ポールで一位になれない人なので落す」の一言で却下。変な理屈だなぁ~ 3人の立場も無いし。なお、キース、ディジョネットの名はかけらすら出ていない。
★「ロリンズを落としたら、コルトレーンも前回入っているから落し、アイラーに代表させましょう」、「そうしましょう」と、
もう支離滅裂状態に。
★一次選考でD・エリス、B・ハッチャーソン等よりかなり低く、D・アイゼンソン並で誰一人、当選に挙げなかったハンコックなのに、二次選考で4人が豹変、A・シェップとの接戦を制し大逆転勝訴。
「入れないと心ある人から笑われる」と、全く意味不明です。
発言者名を記するとリアリティが増しますが、50年も前の事なので伏せます。
「選考座談会」より、「古の読み物」と懐かしむ方が良さそうですね。