先日、B・EVANS生誕90周年記念として上映された”TIME REMEMBERED”を観てきました。
よく出来た作品ですね。ちょっと驚いた事が二つ。
一つはJ・HALLとのデュオ・アルバム”INTERMODULATION”の中から”All Across The City”がスコア付きでUP、二つ目は、少し前に紹介したGETZとの”LIVE IN BELGIEUM”から”The Peacocks”があの赤いカヴァと伴にフューチャーされていた。どちらも秘かな愛聴曲なので・・・・・・・・
監督のB・スピーゲル氏と波長が合います(笑)。
シンプルなタイトルの二作を。
”TRIO 64”(1963.12.18 )
昔から「通」の間では高い支持を受けているアルバム。エヴァンスはマイ・ペースで、ピーコックはノンビート・ライクで付かず離れず、困惑気味で腕は動くが手は動かないモチアン、そうした微妙な演奏空間に聴き耳が立つのだろう。
飽くまで想像の域を出ないけれど、TOPの”Little Lulu”(TV番組の主題歌)はエヴァンスにとって本意だったのだろうか?ひょっとして交換条件として好きな「サンタが街にやってくる」の収録を主張したのでないかな。聴き比べるとノリが違う。
本作の聴き所はB面のラスト3曲、”For Heaven's Sake”、”Dancing In The Dark”、”Everything Happens To Me”。
エヴァンスはソロ・ピアノ気分で弾き、能弁ではないけれど語りは決して薄口ではない。”Dancing In The Dark” の後半、ピ-コックがエヴァンスに周波数を合わせるパートはGooで、それなら他も、演れたのに・・・・・・と(笑)。でも、聴くほどに渋さが増す3曲ですね。なお、ピーコック、モチアン、二人とも映画のインタビューに出ている。
”TRIO 65”(1965.2.3)
人気曲をズラッと揃えた一枚。意図せず初心・入門盤としてのイメージが付き纏っているのか?演奏レベルの割に今一つ人気がない。どうせならRIVERSIDE盤を聴けばいいとでも聴き手の心理が働いたのか・・・・・・・、また、整い過ぎが裏目に出た感が無きにしも非ずです。ベスト・トラックは皮肉にも初出の”Who Can I Turn To”か、こうした曲を弾かせたらエヴァンスの右の出る者はいない。
で、これも推測ですが本作録音の下地となる作品がこれではないでしょうか。
1964年7月7、9日、CAのThe Trident in Picturesque Sausalitoでのライブもの。リアルタイムではエヴァンスがリリースを強く拒み、VERVEとの契約が切れていた1971年、日の目を見た音源。その際、VERVEは「タウンホール」のカヴァを流用し、タイトルもそっけなく、味気ない青の単色摺りの仕打ちを。いくらビジネスと雖もちょっとえげつないんじゃない。ま、国民性の違いでしょう。
それはともかく、これが結構良く愛聴盤の一つ。ウエスト・コースト屈指の名エンジニア・W・Heiderの録音もいい。
ライヴとあってこちらもお馴染みの曲が肩を並べている。ただ、聴衆の反応が良過ぎてストイックなエヴァンスは「オレはこんなに客受けするプレイをしてしまったのか」と、自責の念に駆られたかもしれない。
リリースしない条件として、同じメンバーで完璧を狙って半年後、スタジオ録音したのが”TRIO 65”では?
この”Live”をすんなりOKするぐらいの大らかさを持っていれば、もっと長生きできたのに。
しかし、命と引き換えても「美と真実」を追求する姿勢こそ、エヴァンス流美学の「神髄」だったのだろう。凡とは違う。