ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

コネチカットリバー渡し船

2017-11-18 01:43:30 | 生活
コネチカットリバー渡し船とは、コネチカットリバーを横断する交通用フェリーをいう。地球上の多くの生物にとって河川は貴重な真水の供給源として大切に利用されている。また“川向う”“対岸の火事”という言葉もあるように、サルから分離して以来縄張りの拡大を続けたニンゲンにとっては、河川は村や国の境界線としても利用されている場合がある。近代以降ではそのような境界線を越えるために、河川には橋が架けられるのが常であるが、橋が架かる前までは舟による渡河が一般的であったようだ。日本でも江戸川の矢切のように、観光用を含めていくつかの地域で渡し船が今も営業されているそうだが、筆者が開発途上国以外で交通手段として舟で川を渡るのはコネチカットリバーが初めてであり、なかなか粋であったため紹介しておこうという企画だ。



この渡し船の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①コネチカット川
コネチカット川は、長さ約655㎞であり利根川のちょうど2倍の長さを持つというから日本人からするとこれは大河である。だいたい東京都から岡山県までの距離になるようだ。高速道路91号や、ハートフォード市・スプリングフィールド市などのニューイングランド地方の主要な都市がコネチカット川に沿って建設されていることから、歴史的にも水源や物資の輸送などのために利用されてきた河川であることが見て取れる。ハートフォード近辺のコネチカット川は東西に大きく蛇行しており、両岸は木々で覆われ、ベイエリアの乾燥しきった大地ではなかなか見られない豊かな自然を感じることができる。


②アクセス・料金
この渡し船はコネチカット川で分断されたグラストンベリー市とロッキーヒル市を渡している。グーグルの地図を見ても州道160号線がコネチカット川で分断されており、その河川上を破線でフェリーの航行が示されている。この地点は北方に架かる橋まで約5キロ、南方に架かる橋まで約10キロもある。その距離と交通渋滞などのタイムロスや燃料費を鑑みて、片道6ドルという高額にも関わらず利用している人は少なくないようだ。



③渡り方・楽しみ方
小さなフェリー船が、乗用車を3台分運搬できるバージを曳いて航行している。営業時間内は常に運行し、1往復10分程度であるため、時刻表や予約などはなく渡りたいときに渡し場へ行けばいいようだ。いかにも川渡しの親父といった風貌の白さが少ない白人男が2人おり、彼らに従って車をバージ上に運転し、窓から現金を支払う。常連以外が来たと察したおやじ達は、「外に出て写真撮ったっていいんだぜ」などと声をかけてくるのでにこやかに対応するといいだろう。あとはコネチカット川の遊覧を楽しむだけだ。間近で見るコネチカット川の流れは、まるで秋元康さんの詞に出てくる川の流れのようにとめどなく、おだやかで、いつまでもこの身を任せていたくなる。が、ものの5分で対岸に着く。


 生まれてこのかた船で渡河したことのない30代ベイエリア独身日本式サラリーマンにはお勧めのアトラクションだ。舟がタイミングよくやってきたときの“渡りに舟感”や、渡り終えた後の“川を渡り切った感”には、“橋”では体験できない充足がある。また、振り返ってさっきまで自分が居た対岸を見ると不思議な時間感覚に襲われ、また戻ってみたくなる。六文銭を忘れて奪衣婆に身ぐるみを剝がされて、泣く泣く鬼と共に渡る三途の川が、人生最初の舟での渡河(片道)にならぬよう、生きているうちに現世の川を渡っておいても無駄な時間ではないだろう。