雪の中の、駅のバスターミナル。
わたしが乗るつもりのバスの来るホームのはしっこに、一人の男の人がいた。中年…くらいだよな。ホームレス…まではいってないけど、一歩手前感が漂う風貌。この雪の中、コートも着ていなくて、古びたトレーナー一枚だった。座席に小さなレジ袋を置いていて、その中に半分飲みかけのワンカップがあった。
その人はホームに立ち、自分の手を見ていた。ふるえる右手だった…。はじめは、寒いのかな?と思ったけれど…ずっとずっとふるえていて、きっと寒さのせいじゃないんだ…。
「失踪日記」で読んだ、アル中の時の、吾妻ひでお先生のことを思い出した…。
バスが来ても、彼は乗りこまない。しばらく姿を消したかと思うと、また新しいワンカップを持っていた…。
そして、また彼は、自分のふるえる右手の手のひらをずっと見つめているのだ。
わたしは、人間は自由であるべきだと思っている。どんな風に生きたってかまわないと思っている。そして、他人の生き方に出来る限り干渉はしないつもりでいる。
でも、そのひとがずっと手を見ている姿を見て、少し、涙が出た。その手は、アルコールに侵されて、ふるえるための手ではなかったはずだ。なんでもいいんだ、なにか仕事をして、なにか作り出す手だったかもしれないのだ。子供を抱き上げる手だったかもしれないのだ。
しかし、降りしきる雪の中で、その手は、ただふるえていた。
わたしの住む町に、めったに雪はふらない。雪のせいでセンチメンタルな気持ちになっているのかもしれない。
昼前に雪は雨になった。用事を済ませて帰ってきたわたしが、同じホームに降り立った時、もう彼の姿はなかった。
わたしが乗るつもりのバスの来るホームのはしっこに、一人の男の人がいた。中年…くらいだよな。ホームレス…まではいってないけど、一歩手前感が漂う風貌。この雪の中、コートも着ていなくて、古びたトレーナー一枚だった。座席に小さなレジ袋を置いていて、その中に半分飲みかけのワンカップがあった。
その人はホームに立ち、自分の手を見ていた。ふるえる右手だった…。はじめは、寒いのかな?と思ったけれど…ずっとずっとふるえていて、きっと寒さのせいじゃないんだ…。
「失踪日記」で読んだ、アル中の時の、吾妻ひでお先生のことを思い出した…。
バスが来ても、彼は乗りこまない。しばらく姿を消したかと思うと、また新しいワンカップを持っていた…。
そして、また彼は、自分のふるえる右手の手のひらをずっと見つめているのだ。
わたしは、人間は自由であるべきだと思っている。どんな風に生きたってかまわないと思っている。そして、他人の生き方に出来る限り干渉はしないつもりでいる。
でも、そのひとがずっと手を見ている姿を見て、少し、涙が出た。その手は、アルコールに侵されて、ふるえるための手ではなかったはずだ。なんでもいいんだ、なにか仕事をして、なにか作り出す手だったかもしれないのだ。子供を抱き上げる手だったかもしれないのだ。
しかし、降りしきる雪の中で、その手は、ただふるえていた。
わたしの住む町に、めったに雪はふらない。雪のせいでセンチメンタルな気持ちになっているのかもしれない。
昼前に雪は雨になった。用事を済ませて帰ってきたわたしが、同じホームに降り立った時、もう彼の姿はなかった。
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