風のささやき 俳句のblog

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苦しみの秋に 【詩】

2021年10月28日 | 

「苦しみの秋に」

苦しみから逃れる術を知らない心を持って
これからも生を続けなければいけないことを
また感じている今年の秋の風は
一際に澄んで僕の胸をしめつけるから
生を続けている自分の健気さが少し哀れにも思えてきて
僕は自分の手をじっと見つめてみる
この歩みの果てにどこまで
僕の生は届くことができるのだろうか
その深さを測りかねてすくむ足を
進めさせるものもまた
立ち止まることの怖さに耐えかねてのこと
若き日の痛みもいつしか消えるものと思っていた
空に失われていく白い雲を真似て
けれど生の迷いと苦しみは深まるばかりで
暗澹たる思いに胸を塞がれている毎日に
精一杯の強がりの声さえくじかれて弱く
目に映るものの上には雨のように灰が降り積もり
景色はわびしく色を失うから
僕を慰めに来る秋の陽射しも弱々しく
肌の上に弾けて消えて行く
生に弄ばれているかのように
苦しみの周りを彷徨している僕の歩みは
遅々として進まないけれど
せめては明るんで見える方に歩いて行かんことを
僕自身が生を見捨てない限り
僕が生に見捨てられることはないのだと
心が確かに信じていられる間は
苦しみの固い結び目を一つ一つほぐしながら
喉の奥から零れ出る嗚咽を言の葉に換えて



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