風のささやき 俳句のblog

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思いに重なるために【詩】

2024年06月20日 | 

「思いに重なるために」

風がそっと心に
あの人の面影を置いていった

随分と ご無沙汰ねと言うように
その人の長い黒髪がなびいて
その人の甘い香りがした

いつでもその人は笑っていた
今でも向日葵のような
野原にひときわ明るい笑顔かしら
それは僕の導だった

少しの間 忘れたふりを
していたかっただけ
離してしまった悔いが
ずっと棘のようにチクチクと苛んだから

けれど 閉じた心のページには
あなたの栞をしっかりと
はさんでいたよ

その腕に包まれたときに
自分が大事な贈り物だとさえ思えた
怯えた心に震えがなくなった
死んでもいいと自棄になる心の
愚かさを知った

それから
長い時間を一人歩いて
あなたの胸に
抱きしめられた幸いに
改めて気がつく

人は感じ取れないものを
確かに胸に受け止めるために
どれだけの回り道を
しなければいけないのだろう
もう思い出の中でも
その胸に帰ることはできないけれど

共にあったありがたさを
忘れることはできない
胸に刻まれたあなたがくれたこと
その深い愛情を
全て感じ取れるように
僕はまた歩を進める



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