風のささやき 俳句のblog

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見えない手紙 【詩】

2020年11月12日 | 
「見えない手紙」

まどろみの中に
祖母の顔が浮かんでいた
暗闇の中でそこだけが
蝋燭で照らされたように明るく
祖母はうっすらと微笑んでいた

あれは小学生の夏休み
東京へ帰る僕の車を
見えなくなるまで見送ってくれた祖母の顔だ
手を振る僕のバイバイに
いつまでも応えてくれていた
優しい祖母の顔だ

寒い冬の夜のこと
僕は胸が温かくなることを覚えて
久しぶりの深い眠りに誘われる

僕はどれだけ
救われて来たのだろう
気がつかない間に
僕に注がれていた暖かな眼差しに

知らず知らずの間に
僕の胸を満たしていた
無償の慈しみの火照り
迷いの中でいつでも僕を
導いてくれる温もりに

祖母は誰からその温もりを
もらったのだろう
そうして分け与えられた温もり
僕も誰かに伝えられる
者になれるのだろうか

言葉にならない僕の思いを書き足して
人から人へと手渡されていく
目には見えない手紙の束として


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