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風のささやき 俳句のblog

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春風に襟元を引っ張られて 【詩】

2019年03月28日 | 
「春風に襟元を引っ張られて」

春風に僕は
シャツの襟元を引っ張られて歩いている
必要以上に誇らしげに大きく胸元は膨らんで
地面と水平にネクタイは靡いて

春風が僕の
透明な羽を靴底に生やした
それでこんなにも交互に動かす速い足が
疲れも知らずに進んで行くんだ

けれどそんな春風の勢いだけで
世の中を渡っていけるほど
甘くは無いと僕は知っているから

思いがけずに飲まされる苦湯に
焼けただれた舌を持つ
疑心暗鬼の僕は
表情を晴れ晴れとしきれないでいるんだ

それに膨らんだ僕の胸の内は空虚だ
透明な水素で膨らんだ
あの空を行く赤や青の風船ほどにも中身がなくて
どこでつぶれてしまうのかさえ分からない

張り裂けてしまえば飛び出してくるのは
かき集めてきた幾つかの寂しさと
それに纏わる幾粒かの乾いた涙

だから春風よ
お前が手を離してしまった隙に
僕は糸の切れた操り人形のように倒れてしまいそうだから

いつしかその手を離すのであれば
春風よ そんなに
僕の襟元を引っ張るのはやめてくれないか
強がる僕の強がり以上に見せるのは