AOBATO'S PHOTO

花や鳥たちの美しさや可愛らしい仕草などを写真に修めようと奮闘中です。

猫の心意気

2013-06-20 19:06:24 | 

 

5.おかんの教え

 一寸自慢話になってしまったけれど、おじんちはこの広い畑の北側にあって、家の前ではおばんが、ちっとばかり野菜を作っているのよ。その野菜畑の横っちょには、余りなったところを見たことがない柿や大きな栗の木が植えてあるの。小さいときは何時もこれらで木登りをおかんから習ったものよ。おかんはミルクを飲ませないで、自分で何回も何回も木登りするの。そして木の上の方で、じっと待っているの。あたいらに木登りするようにそれをいやと言うほど繰り返すのよ。晴れた日には毎日のように。そんなことを繰り返す内に、あたいらも木登りをマスターしたのよ。仕舞いには子らだけで競争するように駆け登ったものよ。

ところが、ここは良いところだけれど、冬には苦労する。寒いの寒くないのと言ってはいられないくらい雪も積もるし、氷も張るの。おじんが花作りの趣味をしているので何時も温度を測るのを置いてあるが、目盛りの0に合わせて赤い線が、暑いとかなり上まで伸び、寒いと0まで上がってこないけれど、おじんちの冬の寒い日には、0からずっと下の10の目盛りのところまで上がってこない日が結構あるのよ。そんなときに毛先を濡らすものなら、あっという間に凍り付くことがあって、それは大変な目に遭うことがあるのよ。

こんな寒い時のことを考えて、おばんちの外縁には、あたいらのために座布団入りの段ボール箱が置かれていたの。段ボールになれてからは、寝心地抜群で、寒い時だけでなく、すっかりマイベッドになったものよ。昼寝暮らししていると、おばんが「子猫の頃は、大きい段ボール箱と思っていたけれど、まだ半年ちゅうのに入りきれないじゃないの」とおかしなイントネーションでこぼしていたっけ。

 昼寝暮らしを専念していた訳じゃないのよ。ミーコらを生んで子育てするには、夜の生き物だけでは子らの餌が偏ってしまうので、昼間に出没する鳩だのスズメを調達しなければならないのよ。前にも話したけれど、鳩などは牛小屋が狩り場だけど、鳥らを上手に捕まえる方法には自信があったの。この狩りの極意を身につけられたのは、おかんにいやと言うほど見本を見せつけられたお陰だと思っているの。まあ学習学習の繰り返しだったのよ。そのお陰で、狩りについてあたいは、いっぱしの名人気取りなのよ。鳩をくわえてミーコらのいるおじんちに持って行くもんだから、おじんが「おまえは鳩捕りの名人じゃ」と言い「時にはわしにも持ってこい」と何度も声かけるのよ。狩りをマスターしたことで、これまで数え切れない鳥やネズミらを捕まえたけれど、実はあたいは、それらを自分では全く食べていないのよ。子供達にそれぞれ順番に平等に分け与えてきたのよ。あたいがまだ乳のみ猫の頃は、おかんが自分は食べないであたいらに食べさせてくれたものよ。これが子育てちゅうものよと、いつもおかんから習った気がするの。おかんは偉かったのよ、教育者顔負けのね。

 子育てするには安全で豊富な食材を、と人さんらが言うのを聞くけれど、あたいらの子育ても全く同じことが言えるのよ。都会の野良と違って、あたいら自然がいっぱいだし、加工品じゃなく、がんばるだけがんばって捕っては即ご馳走という具合だから、とても健康的でラッキーな暮らしが出来ていると満足しているの。