山に自生していれば、原種と勘違いするエビネファンがいます。
その様なことではなく、自然界では蜂などにより、自然交雑種が生まれてタカネ、ヒゴ、ヒゼン、サツマなどが生まれてきました。
これらが、原種か交配種であるかを知る方法があります。
それは、同じ株から咲いた花同志を交配(セルフ)させて、複数の2代目を咲かせ、その花が親と全く同じで、株毎に変化がなければ、原種の可能性があります。
写真は、記録にある原種黄エビネの特徴である花の色や大きさや香りなどを持ち、葉も50cm以上になり、全体的に大型の黄エビネでセルフを繰り返しても、全く変化がないことから、原種の可能性が高いと睨んでいます。
花弁の直径は、最大8cm有り、見応えがあります。
今宵、写真のエビネの作者である恩師から、この花のルーツをメールで聞かせて頂きました。
この花は、両親が、染色体が4倍体と2倍体の交配種から成り、3倍体のエビネであることが判りました。
キリシマエビネと地エビネの交配で、鹿児島産のヒゼンと呼ばれる種類です。
倍数体の特徴である葉や花に肉厚観があります。
改めてこのエビネの素晴らしさを実感しているところです。
こんなに風変わりな自然交配種もあります。
南州梅といいます。
おそらく、黄エビネと地エビネが蜂たちのお陰で交配が実ってこの様な花が生まれたのでしょう。
これも全国的に知られている有名なエビネなのです。
他にない印象的な花には、虫たちだけでなく人たちも魅力を感じているようです。
どんな花でも、美しいのに。
エビネは日本各地に自生していましたが、今では乱獲によりそれらの自生地からほぼ消えてしまいました。
一般的に、地エビネは全国に分布し、黄エビネは九州や四国各県、山口県、和歌山県、三重県、キリシマエビネは主に南九州、ニオイエビネは伊豆7島、サルメンエビネは関東以南に自生していました。
またどちらかと言えば、気候が温暖な地域ほど、エビネの色あいが赤っぽいものが自生していたようです。
昨日の「織姫」や今日の写真「サツマ紅」も鹿児島に自生していたエビネです。
この様な花を山の中で出会ったら、黄が仰天するほど興奮したでしょうね。
今では、過去の話となってしまいました。
エビネファンなら一度は手に入れたいと思うのが、写真のエビネなのです。
つまり60年代に鹿児島の北薩地方で採取されて以来、名品として君臨してきたエビネです。
どことなく気品があり、透明感があり、俗に頬紅と言われるマークがあって愛嬌を持ち合わせています。
赤と白のコントラストにも素晴らしい特徴があります。
一株のエビネが、今ではセルフ交配と無菌播種で、日本中に出回るようになりました。
日本のエビネには、大まかに原種が5つ(地エビネ、黄エビネ、キリシマエビネ、ニオイエビネ、サルメンエビネ)あります。
地エビネと黄エビネの交配種はタカネと言い、地エビネとキリシマエビネでは、ヒゼンと言い、キリシマエビネと黄エビネはヒゴと言い、これらの地エビネ×黄エビネ×キリシマエビネが交配されたものをサツマと呼ばれています。
写真のエビネは、タカネで「済州島」という伝統的な名品とされています。
この「済州島」名前の由来を想像すると、文字どおり済州島と勘違いしてしまいますが、これは同じ韓国の黒山島(フッサンドウ)から日本の愛好家が採取して持ち帰ったものと専門書には書いてあります。
おそらく、60年頃だろうと推測していますが、それ以来、この「済州島」は極一部の愛好家によって保存されてきました。
そのお一人が、昨秋故人と成られたために、大きな鉢植えを預かるましたが、その花が見事に咲いてくれました。
せめて原種や自然界で交配されたタカネやヒゼン、ヒゴ、サツマを遺伝資源としてりっぱに保存することが、愛好家の重要な役目だろうと考えています。
良い花は、いつまで経っても時代遅れすることなく、素晴らしい花を咲かせてくれます。