超人日記・作文

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モースの『贈与論』早わかり

2023-02-20 06:32:01 | 無題
フランスの社会学者で人類学者のマルセル・モースは『贈与論』を書くことで「ひとが贈り物をするように促す、原古的な心のはたらきの起源」を探ろうとした。
 その一番の情報源をニュージーランドのマオリ族という部族社会の人々が語ったことに求めた。「マオリの森林伝説」の中で、タナティ・ラナイピリという人がこう言っている。
「私は物に宿る霊、ハウについてお話しします。ハウは吹いている風ではありません。かりに、あなたがある品物タオンガを持っていて、それを私にくれたとしましょう。そして私がしばらく後に、その品物を他の人に譲ったとしましょう。その人はお返しとして、何かの品を私にくれます。彼が私にくれたものは、私が初めにあなたからもらい、そして彼に与えた『贈与の霊』なのです。
私はそれをあなたにお返ししなければなりません。それはあなたがわたしにくれた贈り物の霊だからです。このようなものが、物に宿る霊、ハウなのです。これについては、もう十分でしょう。」
モースは、この話をこう要約する。品物や一切の所持品はひとつのハウ、霊的な力を持っている。「贈り物の中には贈った人に由来する贈与の霊が宿っていて、それが元の古巣に帰りたがっている。だから贈り物は、贈られた人にお返しをさせる」。モースは人類学的なポイントを取り上げる。第1に物のやり取りが作る掟をとらえることができる。第2に贈与交換、贈り物のしきたりの心理をよりよく理解することができる。その人に由来するものは、受け取った人に、呪術的、宗教的な影響力を与える。その物は古巣に帰りたがる傾向があって、それを生んだ一族や土地のために、自分の代わりになる恩恵をもたらそうとする。メラネシア人は、ポリネシア人よりも、儀礼的な贈り物のしきたりをよく残し、発展させている。トロブリアンド諸島では、「クラ交易」と呼ばれる、「儀礼的な品物を次々によそに送り渡してゆくしきたり」がある。儀礼的な品物となるのは、美しい腕輪や首飾りであり、円をなして、島から島へと回される。また、アメリカ北西部の先住民の富の儀礼的な投げ出し、すなわちポトラッチも、一種の贈与といえる。富の消費と破壊の見栄の張り合いには、際限がない。度外れの気前のよい富の投げ出しは、お金の経済以前の社会に、広くみられるしきたりである。
現代の私たちの心と習慣は、贈与のしきたりを留めている。人は借りをそのままにしておくことができない、と思う。私たちも、もらったものより多くを返そうとする。人は太古のしきたり、基本的な気前の良さに立ち返る必要がある。
個人と集団が互いに富を譲り渡す仕組みは、経済と掟のもっとも古いしきたりを守っている。それは贈り物の心性をなす背景である。古い社会において、物がやり取りされるのは、損得ではない、別の感情による。純粋な経済は、本来は、贈り物のやり取りであり、利益とは別のところにある、富の投げ出しから始まっている。経済人類学の見方から言って、決定的な論点をマルセル・モースは提示した。

純粋な経済は贈り物であり贈与の霊が世に巡り来る

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