ジュリーニのベートーヴェンにはまっている。
ジュリーニはレコード会社やオケは異なっているが、ベートーヴェンの交響曲を全曲録音している。
ジュリーニのブラームスが遅いのは知っていたが、ベートーヴェンも超スローテンポで乗り切ってしまう
巨匠ぶり。スローテンポのベートーヴェンではクレンペラー、ザンデルリンクと並ぶ風格。
ジュリーニのベートーヴェン英雄を聞いてそのあまりの遅さに慄然とした。
遅いにも程がある。余りの遅さに小さな音で聞いているとやる気がないのかと勘違いしたくなる。
スカラ座フィルで大方録音しているが、第九はスカラ座フィルと残していない。
ジュリーニの遅いベートーヴェン、耽美的だ。
子どもにはわからない大人の楽しみだ。
背徳的な耽美感だ。
英雄、遅い。田園も遅い。第九も牛歩。
好みは分かれるようで、異様な遅さに対して、弛緩している、緊張感がない、肥大症だという声もちらほら聞く。だが、数百枚ベートーヴェンを聞いてきて思う。
この耽美的な遅さは奇特だ。ジュリーニの遅さは癖になる。
ザンデルリンクの遅さは飽きないがジュリーニの遅さは退屈と言う声もある。
私には退屈に聞こえない。悠久の時間が流れている。
英雄、田園、何度聞いても飽きない。一度聞くと、またもう一度、である。
永劫回帰の音楽化である。
悠久の時間の永遠の繰り返しに汝は耐えられるか。
私はジュリーニのベートーヴェンが面白くて仕様がない。
さすが巨匠である。夕映えの美しさ全開である。
廃盤のがちらほら有り、やや高値のが散見されるのが残念だ。
レコード会社の垣根がなくなり、全集化されると素敵だが。
録音全部、巨匠テンポで乗り切ってしまう大人物だ。
ブラームスもよかったが、ジュリーニのベートーヴェン、耽溺できる。
悠久の流れを運ぶ音盤を繰り返し聞き耽溺する救い