月に1度の映画を見る会の日です。予定の時間になっても会員の方は誰も来ません。時々ポカを遣らかすのですが、また日にちを間違えたかもしれません。映画を見終わって家に帰り、告知を見直すと、日時は合っていたのですが映画館の場所を間違えていました。
さて映画オデッセーですが、週刊誌の映画批評で「予定調和」の極みで・・・、と糞味噌の評価をしている日本人映画監督がいました。予定調和、予定調和と云うけれど、そんなに予定調和が面白くないのかと言うとそんな訳でもないように思うのですが。予定調和の最たるものは「水戸黄門」でしょうが、何代目かの黄門さんに石坂浩二が「より本物の、史実に近い黄門を・・」とお馴染みの髭もつけず「この印籠が目に入らぬか!」と悪代官を懲らしめなかったら視聴者はソッポを向いて1クールでお終い。オデッセーは極限の状況から脱出すると言うパニック映画です。ですからこのオデッセーを見に行く人が端から「脱出に失敗し、不幸な結果になる」などとは思っていないでしょうし、困難な状況を如何に乗り越えるかの過程に期待しています。そのストーリーこそが予定調和なのです。「ウルトラマン」に登場する「ジャミラ」と云う怪獣は、人間衛星に乗っていた宇宙飛行士が水のない惑星に不時着し、救助を待つ間に惑星の環境に身体が適応して皮膚が粘土質に変化した結果、ずっと欲していた水を不要として生きられる怪獣と化した正真正銘の地球人です。映画オデッセーも火星の有人探査中、嵐に遭遇し死亡したと思われた主人公マーク・ワトニーが、ひとり置き去りにされた火星で懸命に生き延びようとするストーリーです。予定調和からすると「ジャミラ」の方が意外性があって遥かに面白いのかもしれません。 過去にオデッセーに似た映画として「アポロ13号」があります。アポロ13号ではヒューストン管制センターが必死の救出作戦を展開します。NASAのスタッフがアポロ内にある物をかき集めて、二酸化炭素を吸着する水酸化キャニスターの不足を補う方法を見つけ出し、「丸い穴を四角い栓で塞ぐ方法を考えろ!」と地上に設営されたアポロと全く同じ資材で装置完成させます。それを管制センターからアポロに指示を出すことでアポロ船内の困難な状況を解決して行きます。一方オデッセーでは火星に置き去りにされたワトニーは通信手段もたたれ、将に孤立無援の中で限られた条件下ありとあらゆる知恵と工夫で生き延びようと試みます。最初に試みたのはジャガイモの栽培です。ワトニーは食料の備蓄が300日ほどであることを知ります。そして4年後に「アレス4」のクルーが到着するまで生き残るため、ハブ内にジャガイモ農場を作ります。ただ、火星の土にはバクテリアがいないため、地球から持参した土と自ら生産する天然肥料をブレンドして土壌を整える手に出ます。しかし植物栽培に必要なもう1ツの物質、水がありません。そこでワトニーは水素を作り出し、それを燃焼させて水を作ることに成功します。映画ではそこまでですが、当ブログが思うにもう1ツ光の問題があるのでは・・。恐らくLEDライトで3色の光をジャガイモに照射したのでは・・。
映画オデッセーが面白いと思ったのはこのような宇宙での生存技術をリアルに体現でき、原理などを解説してくれるのではないかと言う期待でした。
産経新聞本紙番組欄に囲み記事が掲載されています。2月21日~2月25日5回シリーズで「銀幕裏の声」として映画オデッセーのことが取り上げられていました。NASAのJ・P・L(ジェット推進研究所)の現役職員・小野雅裕さんから聞いた話をとしてオデッセーでの技術を解説しています。ワトニーが酸素も水もない状況で4年間生きる方法としてジャガイモ栽培を行いますが、小野さんによると「技術的に詳細且つ正確なSFを観た事がない」そうです。この様に映画ではポテト栽培に必要な水の量、ローバー(探査車)を走らせるのに必要な電気量の計算、ロケット燃料から化学反応で水素を得る方法、古い探査機を使って地球と交信する方法、・・・・また火星の砂嵐の方向予知など知識さえあれば画面に驚くような技術が映し出されているのだそうです。また、二酸化炭素から酸素を取り出すオキシジェネレーター(Oxygenerator)が登場しますが、この技術は「Mars 2020Rover」で実際に実験される技術なのだそうです。
このようにオデッセーで描かれている技術についてはネット上に沢山紹介されています。将にコスミックフロントの世界です。オデッセーを推薦した太田さんと話をした時、太田さんもオデッセーでどの様にこれらの技術を描くかに興味があるとのことでした。彼は物理科学を専攻した専門家で、彼の学生時代、隣の研究室が「イオンエンジン」を研究していたと聞いたことがあります。今話題の重力波やニュートリノ振動などを数式で理解する人がオデッセーを観れば、当ブログなどが見過ごしているような凄い事を見つけることが出来るのでしょう。