馬糞風リターンズ

世ノ中ハ何ノヘチマトオモヘドモタダブラリト下ツテモオラレズ

映画「超高速参勤交代」を観ました。

2014年07月02日 | 映画
中々評判の良い映画のようで、平日の昼間なので観客も疎らかと思っていましたが客席はほぼ満席でした。磐城湯長谷藩主内藤政醇(佐々木蔵之介)が参勤交代で帰藩したばかりにも拘らず、悪役老中松平信祝(陣内孝則)の陰謀で、通常でも8日かかる参勤交代を5日で江戸へ再び出府するように無理難題を押し付けられます。このピンチを奇想天外な作戦の数々で切り抜けようとする時代劇。肩の凝らない娯楽映画で結構楽しめました。尚、道案内役の忍者・雲隠段蔵役の伊原剛志は、今宮高校34期だそうで最近映画・TVで大活躍しています。
  
画像をクリックすると拡大図になります
 娯楽時代劇と言えどもそれらしく見せるにはそれなりの時代考証が必要となります。幾ら「作り物」だからと言っても時代劇である限り背景にビルが映っていたり電柱や電線は絶対に禁止です。少し凝った監督であれば衣装などにも細かい注文があるそうで、室町時代、戦国時代、江戸前期、元禄以降、江戸末期、幕末でやはり衣装、髪型、所作、・・・・などに違いがあり、あまり時代考証に拘り過ぎると「虻蜂取らず」でつまらない作品になってしまいます。時代劇で普通に使用している「○○藩」という「藩」は当時は滅多に使うことの無いもので、例えば「岸和田藩」なら「泉州岡部美濃守ご城下」「岡部美濃守ご家中」などと言っていたようです。しかし、だからと言って今、「岸和田藩」と言わずに「岡部美濃守ご城下」などと言ってしまうと分かりにくい話となってしまいます。この様に時代劇としての「お決まり事」として、様々な舞台設定や所作などが暗黙の了承事項として作品が作られています。
 藤沢周平は架空の藩「海坂藩」を舞台にした作品が有名です。所が、「超高速参勤交代」の磐城国の小藩・湯長谷藩、藩主・内藤政醇は実在の藩であり人物です。
徳川幕府は諸大名の勢力を裂く方策として「参勤交代」「妻子の江戸在住」などの政策を実施しました。特にこの参勤交代は大変な財政負担となったようで、例えば加賀百万石前田家の参勤交代の1回の費用は5億円掛かったとされていますのでその負担の大きさが窺い知れます。
今回の湯長谷藩が通るルートは本来ならば磐城・陸前浜街道から水戸街道で江戸に出るのですが、金がない・時間がない・人手が無いの「無い無い尽くし」のため高萩宿から山越えをして牛久宿までショートカットを敢行します。今の常識からすれば、湯長谷藩であれば小名浜から海路で大洗か鹿島に行けば3日あれば充分江戸に到着で競うに思うのですが・・・・・。江戸時代の旅で一番費用が掛かったのは船の旅だったそうです。一説には陸路の10倍以上掛かったと言われています。東海道があるにも拘らず中仙道を利用し遠回りしたのは中山道には「川越」が無かったためなのだそうです。(この項つづく)