赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

日本は中国の環境汚染改善に手を差し伸べよう

2015-04-01 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(11)

日本は中国の環境汚染改善に手を差し伸べよう





刻な中国の環境汚染

日本のマスコミはなぜか中国の深刻な環境汚染を報道しません。あくまでもトピック的な報道なので、日本国民はPM2.5【※1】の飛来くらいにしか認識していない可能性もあります。

【※1】大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子。非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が心配されている。

しかし、詳しく中国内部の情報を集めますと、中国は、大気も、大地も、そして水も汚染されていて、それも想像を絶する汚染度になっているようです。とても、人が住めるような環境ではありません。これを改善しない限り、環境によって中国の国土が破壊され、生活や経済活動に大きな影響が出てくる可能性も考えられます。

2013年、NASAの人工衛星が撮影した中国大陸の東部の平地は、ほぼグレーのスモッグで覆われていました。太陽の光が届かないほど大気汚染が悪化している北京の状況は、「核の冬」に匹敵すると科学者が警告しているほどです。原因はPM2.5でした。その濃度は、WHO(世界保健機関)基準の40倍を超えると報じられていて、外出のみならず室内での活発な行動も控えるよう警告が出されているほどです。



さらに、大地【※2】も水【※3】も、深刻な状況です。また砂漠化【※4】も進んでいます。

【※2】Searchina 2014-06-06:中国では「食の安全」が足元から崩れつつある。土壌汚染だ。耕作地2328万1000ヘクタール余りで、カドミウム、ニッケル、銅、ヒ素、水銀、鉛、DDT、芳香族炭化水素などの汚染物質の含有量が国の基準を超えていることが分かった。同面積は2012年における日本の耕地面積合計、454万9000ヘクタールの約5.1倍だ。

【※3】中国では工場排水や生活廃水などが垂れ流され七色の川が流れる。また、都市の90%の地下水、河川、湖沼の水の75%が汚染されている。水質汚濁の広がりのため、毎日7億人が汚染された飲料水を飲んでいる。

【※4】遊牧地の開墾、樹木の輸出や農作物の増産などが原因で砂漠化が深刻化している。現在中国の30省、889の県で合計174万平方キロメートルの砂漠が広がり、これは中国国内の18パーセントに当たるとしている。この砂漠化により黄砂が年々悪化し、中国国内や海を渡った日本にまで被害を及ぼしている主要因と見られている。



地球の生命体の一員として考える

人間は一人で生きられるものではありません。地球という生命体の上で、大いなる自然環境の中で生かされ、人々と支えあってこそ生きていけるのです。自然環境に逆らって人間は生存できません。

しかし、このまま中国の環境が悪化していけば、中国人の生存が危うくなるレベルから、地球の全ての人びとの生存に影響を及ぼすような状況になってきます。

昨今の環境問題に関する国際的な意見交換の場でも、先進国は発展途上国の環境汚染を非難し、発展途上国は先進国のかつての環境破壊を問題にするばかりで、なにも解決ができないまま今日に至っています。あくまでも、自国の利益のみに固執し、国際社会全体の利益を考えていませんでした。

ここは、政治的対立を越えて、地球に存在する同じ生命体として手を携えて環境を改善していかなければならないときが来たようです。いまや、中国も事態の深刻さを認識【※5】しはじめています。

【※5】2015年3月7日の全国人民代表大会(全人代=国会)に関する記者会見で、陳吉寧環境保護相は「経済発展と環境保護の、人類史上未曽有の矛盾に直面している」と述べ、強い危機感を示した。


中国の複雑な国内事情

ただし、中国という国は内部事情が実にややこしいものがあります。政治的には一枚岩ではありません。現国家主席の習近平氏、前主席の胡錦濤氏、元主席の江沢民氏の三派に分かれ、それぞれがいま激烈な主導権争いを演じているといわれています。

専門家筋の話によりますと、軍は莫大な軍事予算の15%を軍幹部が不正使っていると言われ、また、軍が中国の石油利権の大部分を握っていると言われています。

このように権力を握るさまざまな集団が存在し、一方、国民の側は政治には無関心のため、日本のようなまとまりのある国として見ることのできない難しさがあるように感じます。


日本が積極的に行うべき提言

しかし、このような内部事情を踏まえた上で、中国の深刻な環境汚染に対し積極的に手を差し伸べていくべきだと思います。

環境汚染の改善対策は、国内の政治的な対立とは無関係であり、周辺諸国への軍事的脅威にも繋がりません。環境汚染を克服することは中国にとっても地球環境にとっても良いことなのです。

さらに、環境汚染を克服する姿勢は発展途上国へのモデルケースともなり、未だに環境保全に消極的な先進国にも重大な影響を与えることができます。結果的に、先進国 vs 発展途上国の環境汚染問題の対立を収束させるきっかけになるかもしれません。国際社会に調和をもたらす要因になる可能性があるのです。

その提言を日本が積極的に行うべきときがきたと思います。

これは、かつての公害を克服することができた日本だからこそできることだと思います。


日本は本気で取り組むべき

日本には環境汚染に対抗する技術や改善するノウハウもあります。かつて日本は公害で苦しみ、これを克服してきました。空気がきれいになり、水道水がおいしくなりました。土壌汚染も改善され河川には魚が戻り、海も浄化されつつあります。かつての公害を問題視された1970年代の日本とは大きく様変わりをしています。

こうした日本の蓄積された技術のノウハウを、地球全体の環境を守るという観点から、無条件で提供することも必要ではないでしょうか。 


真のナショナリズムの発揮

さて、日本が積極的に中国の環境問題に取り組むことで、日中双方ともに存在する排外主義の壁を乗り越えることができるのです。排外主義とはナショナリズムでもなく、愛国主義でもありません。単なる利己主義です。自分さえ良ければいい、自分の国さえよければいいというような国家利己主義です。この排外主義がある限り国際社会の調和実現は不可能なのです。

いまの日中関係は、「己の欲せざる所は人に施すこと勿れ(自分が好まないことは、他人に対してもしてはならない)」という孔子の言葉とは真逆の、自分が嫌がることをもって日中双方で非難しあっているのです。排外主義の悲しい現実なのです。

従って、いまほど真実のナショナリズムが求められるときはありません。ナショナリズムとは、自分の国を愛するように他の国も愛するという感情です。その感情は、同時代に互いに地球の一員として生きているから生まれます。どんな姿格好をしていても、その人間に内在する善なる性質を発見するところから生まれるのです。

まず私たちがやるべきことは、日中双方の人びとからも、また国際社会の人びとからも何の異論も出ない「中国の環境汚染の改善」ということではないでしょうか。

いまこそ真のナショナリズムをもって日本人の心意気を示すべきときだと思います。大和魂とはこういうときに発露すべきものではないでしょうか。



次回更新は4月6日 0:00です。AIIBについての私見です。


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