赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

①BRICS首脳会談――共同通貨構想の不発

2023-09-13 00:00:00 | 政治見解



①BRICS首脳会談――共同通貨構想の不発:230913情報

BRICSについては、当ブログ『"新生BRICS"が世界にどのような影響を与えるのか?』で、極めて肯定的な立場の人(投資家サイド)のレポートを掲載しましたが、今回は、国際政治学の学者がどう見ているのかの分析をお届けします。立場が違うと見方が大きく異なりますが、両者に共通するのは「金」の有用性についての言及があるのは驚きです。


BRICS首脳会談が8月22日23日とありまして、24日には拡大会議という名目で現メンバーではない国まで入ってきて、イベントとしては世界の注目を集めました。

このことに関して一番注目していたのは、共同通貨構想が出てくるのかどうかということでした。しかも、それが金本位制的なものなのかどうか、それを出した場合かなりのインパクトを国際為替市場・金融市場に与えるのではないかということが不安要素であったわけです。

それを一部の評論家といいますか、その予測する人たちの中でBRICSが共同通貨構想を出して、それが金本位制的なものであるとなると、ドルの信頼性が一挙に揺らいでドル基軸通貨体制が崩壊してしまい、それによってドルが暴落する、あるいは人によっては「ドル消滅」という言葉まで使っている人までいました。

私はそういうことはないという予測を繰り返してきたわけです。しかし、これについて皆さんは相当不安が大きかったようで、特に日本の投資家にとってはドルの地位は揺らがないと、非ドル化というのは長期的に大事なことであって、そういう現象が起きています。

例えば、第3世界の国同士で今まで世界の基軸通貨のドルを使って輸出入をやっていたけど、そういうことはやらないようにしましょうという動きが起きてきています。

それからチャイナとロシアも両方とも現在反米だから、貿易するのに前はドルを使っていましたが、ドルを排除してルーブルと人民元でやりましょうということになっているのです。

そして、経済規模はチャイナの大きいから人民元優位で貿易体制として輸出入が営まれるということになってきています。あるいは、イランも反米だから、イランとチャイナが貿易するときもドルは排除して、2国間の通貨だけでやるようにしましょうという形で進んできているのです。

そして、長期的にはドルの地位が徐々に世界の経済の中で揺らいでいるということは確かです。しかし、ここでBRICSの4カ国が一致協力して金位本位制で新しくドルに取って代わるような基軸通貨を出すという構想を出しています。要するにその後ろで黒子になって糸を引いているのがゴールドマンサックスという会社であるという図式になっていました。

しかし、ここのところに来てBRICSの思惑が一致しなくなっているわけです。そもそも中心になるチャイナにしても「BRICS共同通貨という面倒くさいものはいらないから、今後世界のドルに対抗する通貨は我が国の人民元である」という考えを挟んできています。当然これは、うまくいかないと思いますけども、習近平さんの考えからすればそうなっているのです。要するにBRICS通貨という中途半端なものを作る気はないと言っています。

ロシアもドル基軸通貨体制を揺さぶりたいというプーチンさんの気持ちはその通りですが、ロシアとチャイナでも思惑が違ってきているのです。それにロシアからすればチャイナの人民元経済圏に完全に吸収されてしまっては困ります。それが非常に大きな心配事であり、両国の人口も圧倒的に違いますし、下手すると東シベリア極東地方ロシアはチャイナに乗っ取られる可能性も出てくるのです。そういった危機感もあります。

それからインドはアメリカ、ヨーロッパ、日本とも仲良くやっていきたいし、他の第3世界とされるチャイナやロシアとも付き合っていきたいという、まさに漁夫の利を得たいということで反米・反欧米の旗を振る気にはなっていません。また、主催地になりました南アフリカも同様です。

南アフリカは、いろんなところのいいとこ取りをしたいと考えていて、ヨーロッパやアメリカに嫌われても困るという立ち位置になっていてBRICSの思惑が一致するわけがありせん。そこで共同通貨を出しましょうという考えにはならないのも当然です。

ブラジルのルーラ大統領の政権は左寄りとなっていて反米色が強いので、彼が演説で「BRICS共同通貨は将来大事になってくる」と言っており、このドルに取って代わるような存在にさせたいという希望を表明しました。しかし、BRICS共同通貨に対しての大きな言及や発表に関して、これからBRICS共同通貨を出すという表明などはありませんでした。ブラジルでも完全に不発だったのです。

今後この構想はくすぶっていくと思いますけど、このBRICSの5カ国が中心になって一致団結してBRICS共同通貨を作っていくということは政治的に不可能でしょう。本当に全く一致していません。ただし、進むのはドルを使わないで2国間貿易やっていきましょうという動きは着実に少しずつでも実務的に前進していくと思います。

チャイナからすればドルを使わせないで人民元をなるべく使わせたいというところでしょうが、現在人民元の価値が非常に危うくなっています。なぜならチャイナ経済が今、大不況にあるからです。そういった国の通貨を誰も持ちたがらないのは当然でしょう。このような背景があるためBRICS通貨構想はここで一旦完全に潰れたと言っても過言ではありません。

話題としては、これからも出てくる可能性はあります。チャイナやロシアがドル離れをしたいというのは当然のことですが、日本の国の投資家にとってドルが持っている重要性は一向に変わらないと思います。むしろ有事のドル買い、国際危機のときのドル買いということで、不安定要素が起きるとドルがまた強くなるという今までも起きていた現象が起きております。今後の日本の経済、アメリカの経済の動向を考えると、ドルに対して長期の円安の時代が来ているという考え方です。

また140円台から150円台が定着して、これが150円台から160円台になっていけば日本経済は安泰します。日本経済はGDPの高い成長率が望めるため、その方が日本にとっても経済全体が良い状況になります。そういったことを前提に、良いか悪いはともかくとして円安・ドル高の状況が長期的に続いていくでしょう。それは日本経済にとってプラスの良いことです。

このようなことを考えますと日本の投資家にとってドル通貨が持っている重要性、ドル建ての自分の資産の重要性、資産のある部分をドル建てに変えておくということの重要性は一向に変わらないと思います。今回それが再確認されたといっても良いのではないでしょうか。

これはチャイナの立場、ロシアの立場、ブラジルの立場などの観点からも、それぞれ全く違うからです。ドルに次ぐ国際通貨で頼りになるものはあるのですかと問われたら、私の答えはあります。

それはゴールド(金)です。金は貴金属であり、マテリアルであり、コモディティであるというだけではなく、これ自身が一つの国際的に有効な通貨となっています。だから、ドルに不安があるという方は金関係の投資をされると良いというのが私の答えです。それと同時に結局、金はドル建て資産であること、金が取引されるときの国債価格はドルで決まります。だから、金は国際通貨としての側面もありますけど、ドル建ての資産であるという側面もあるということです。


(つづく)


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