赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

政治とは現実の変化に対応すること

2015-05-08 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(19)

政治とは現実の変化に対応すること





日米首脳会談に見るアメリカの本音

4月28日の日米首脳会談の冒頭で、アメリカのオバマ大統領は「様々な国際場裡(こくさいじょうり=国際的な交流の場所)やグローバルな課題への取組において,日本ほど心強いパートナーは存在しない,安倍総理の勇気と強さは,米国にとっても世界にとっても重要である」と述べています【※1】。

【※1】オバマ大統領の冒頭発言:安倍総理は日本経済を前進させ,再活性化しようとしており,米国はその努力を支持している。日米間では安全保障関係を更に活性化するための試みが行われており,日米両国がこの地域において様々な課題に取り組む上で同盟の強化が重要である。様々な国際場裡やグローバルな課題への取組において,日本ほど心強いパートナーは存在しない,安倍総理の勇気と強さは,米国にとっても世界にとっても重要である。

この冒頭発言は、あまり報道されてはおりませんが、極めて重要な意味を持つものだと思います。筆者はこれを「アメリカの日本観が劇的に変わった瞬間だ」と受け止めました。と申しますのも、これまでのオバマ大統領の発言を見ている限りでは、日本に対する期待はあまり高いものではなく、同盟国ではありながらも単にビジネスパートーナーとしての位置づけしかなかったように感じていたからです。

しかし、国際社会の情勢の激しい変化に、もはやアメリカ一国だけの力だけでは対応しきれなくなり、日本に頼らざるを得なくなったと思われるのです。

その理由の第一が、最も親密な同盟関係にあったイギリスがあてにならなくなったこと。第二にEU諸国はギリシアとウクライナ問題で手一杯となって、これまた頼りにできなくなったこと。第三に、アジアでは、中国の覇権主義が目に余るようになってアメリカの利益にまで手を突っ込み始めたこと。第四にロシアとの関係が良好ではないこと。第五に、イスラム社会との協調は未だ上手く築けないこと、などが挙げられると思います。

このようなアメリカの抱える一つ一つの問題に対し、唯一、しっかりとした見解や解決能力を持ち得るのが日本政府であるとの認識があるようです。また、そのような状況の中で、「集団的自衛権行使を容認してお互いを守りあう」と決意した日本がいまやアメリカにとって最良のパートナーであると感じるのは当然でしょう。。れゆえに、オバマ大統領の冒頭発言は単にリップサービスではないと考えるべきで、アメリカの本音は日本との関係を深めようとしているところにあると思うのです。


これからの変化に政治家はどのように対応すべきか

ところで、21世紀はボーダレス社会の到来だとか、国際社会もグローバル化の波が到来するといわれていました。しかし、実際にグローバル化したのはインターネットなどを通した情報通信と情報を基盤とした経済行為だけだといわれています。国際社会は全くと言っていいほどにグローバル化していません。依然としてボーダー(国境)は存在し続けています。そして、いまもなお、昔ながらの領土問題と経済問題に、歴史認識による憎悪の連鎖が続いているのです。

本来なら、世界の政治指導者にはこのような負の連鎖を断ち切るための努力が要請されるのですが、現実は、政治指導者の多くがこれに逆行する動きをしています。

とくに中国の習近平国家主席は、日本および太平洋沿岸諸国、また、東南アジアからインドまで「真珠の首飾り戦略」で覇権主義の影響を及ぼそうとしています。さらに、内陸部にあっては、ロシアに近い中央アジアにも広げようとしています。この拡張主義に対して、ASEAN諸国は4月26日の外相会議で、「南シナ海における中国の埋め立て中止」を明確に主張したほどです。



一方、ソ連時代はアメリカとともに覇を競い合っていたロシアも、ウクライナ問題でアメリカ及びEU諸国と対立を深め、「21世紀の冷戦」とまで言われる事態を引き起こしています。

また、イスラム原理主義者のテロは一向に収まる気配を見せていません。テロの横行に、どこの国の指導者も問題の解決ができない状態が続いています。

このような地球規模で危機が拡散しているときにこそ、世界の政治指導者は互いに歩み寄らねばなりません。「人類全体の問題」として手を取り合わねばならないのです。それは万人の望みでもあります。

必要なのは、演説、政策ビジョン、イデオロギーではありません。

政治家は、常に「社会の変化」をつぶさに観察して「自分は何をすべきか」を問い、それを実行することが本当の仕事です。現実を直視して問題を解決していくのが政治の役割なのです。何も変革しようとせず、論評や批判ばかりしている人は政治家を名乗る資格はありません。


「社会の変化」に対し、世界の政治的指導者はどのように対応してきたのか

現代史において、「いま起きていること」に機敏に反応し、「やるべきこと」を確実に成し遂げた政治指導者は少なからず存在しています。その中で、とくに名前を挙げるとするなら、イギリスのウィンストン・チャーチルとアメリカのジョン・F・ケネディです。

チャーチルは、当時のイギリスで支配的であったナチス・ドイツへの宥和政策(敵対国の主張に対して、相手の意図をある程度尊重する事によって問題の解決を図ろうとすること)を危険視して、英国民に覚醒するよう呼びかけた人物です【※2】。これにより、イギリスはナチス・ドイツによる被害は受けましたが、大きな危機は回避することができました。

【※2】ヒトラーの傍若無人な周辺国への侵略行為に憤慨したチャーチルは議会で何度もドイツの危険性を訴えるが、第一次大戦の惨禍に懲りていたイギリス国民と宥和政策をとっていたチェンバレン政権はそれを許さなかった。チャーチルは著書『第二次世界大戦回顧録』のなかで、「第二次世界大戦は防ぐことができた。宥和策ではなく、早い段階でヒトラーを叩き潰していれば、その後のホロコーストもなかっただろう」と述べている。

一方、ケネディは、日本では理想主義のアメリカ大統領であるととらえられていますが、かれの本質は「危機への対応能力」に評価を集めるべきです。核戦争の危機でもあった第三次世界大戦を、毅然たる外交姿勢で回避させた決断力は特筆されるべきです【※3】。

【※3】1962年、ソ連は核ミサイルをアメリカののどもとにあるキューバ国内に配備を始めた。これに対して、ケネディは全米テレビ演説で国民にキューバにミサイルが持ち込まれた事実を発表し、アメリカ軍部隊をソ連との全面戦争に備え臨戦態勢を敷いた。結局、ソ連のミサイル撤去により危機は回避された。その首謀者であったるフルシチョフはソ連首相を解任された。



これらから学ぶ歴史の教訓は、変化に速やかに対応することであり、社会の変化が国家的危機を伴うものであれば、毅然たる姿勢と不動の信念でこれに対処していかなければならないということだと思います。

また、ここで述べた「国家的危機」という言葉を「国際社会の危機」と読み替えるならば、それは、「人類全体の危機」という意味になるはずです。そのように考えていけば、いま世界各地で起きているテロ、紛争、戦争は、日本人にとっても他人事ではなくなるはずです。


日米の協力で世界を平和と繁栄に導く

冒頭に紹介した日米首脳会談で、安倍総理は「本日の会談を通じて,自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値の上に立つ日米同盟が,アジア太平洋や世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たしていく」と述べました。第二次世界大戦で壮絶な戦いをした日米両国が、恩讐を超え手を携え「世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たす」という言葉は実に重みがあります。これこそ政治的指導者が真っ先にやるべきことなのです。

これまで、世界の政治指導者の誰も手をつけようとしませんでした。それを今回の会談では日米両首脳が「協力して実現する」と宣言したのです。日米首脳会談が歴史的快挙であったという意味がここにあります。日米から世界に希望の光が届けられようとしているのです。実に日本国民にとっても嬉しいことではないでしょうか。

そのためにも、枝葉末節の議論や雑音に惑わされることなく、日米の指導者に対し、日本国民として絶大な応援をしたいと思います。

人類の明るい未来を開いた歴史的瞬間と同時代に生きていることに感謝しつつ・・・。




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