ちくわブログ

ちくわの夜明け

「ミュンヘン」を観たぜおい!

2006-02-20 14:11:31 | 鑑賞
「スプラッター映画の帝王は、スピルバーグだ」

80年代スプラッターホラーの重鎮、特殊メイク界の大御所、トム・サヴィーニ御大が、当時わたしが在学していた映画学校に特別講師として招かれた折、このようなことを言っておられました。

これは当時公開したばかりだった『プライベート・ライアン』を観てのひとことです。

これはわたしもおおいに納得のいく意見で、事実『プライベート・ライアン』以降、映画の中の「リアル」は本質的な変革、再定義を迫られました。

それはトム・サヴィーニ達が「現実的な現実」、つまり脳内で咀嚼する段階でのリアルを描いていたのに対し、スピルバーグは「現実」それそのものをスクリーンに再現しようとしたからだと思います。

なぜこれまで「現実」そのものを映画で描かなかったのかというと、これは極端な例ですが、例えば9.11テロの貿易センタービルに飛行機が突っ込む映像があります。
あれを見たとき、不謹慎ながら「意外と壊れ方が地味だ」と思いませんでしたか?もっと、なんか真っ赤な炎がもうっと舞い上がって「ドッカーン!」っていくと思いませんでしたか?
で、もしこのテロを映画化するとして、あの飛行機突っ込みシーンを現実そのままに再現してもなんだか味気ない、ちょっと「うそ臭い」ものに見えてしまうと思います。
だから今までの映画って「現実」と「現実的」を区別して「現実的」に見える、見栄えがする、表現をとってきました。

それが、『プライベート・ライアン』以降は少しずつ変わっていったような気がします。「現実」と「現実的」を絶妙なバランスで織り交ぜて、観客に「痛み」を伴った(わたしがたまにエラソーに言ってる「リアリティ=痛み」ってやつです)表現を突きつける。
観客はそこから、「嘘」である映画から無理矢理にでも「現実」を掴まされてしまう。

話がそれましたが、スピルバーグ監督は、こういった表現の第一人者であり、ものすっごく上手い!と思うのです。


『ミュンヘン』もそんな映画のひとつで、ここ数年ほとんどスピルバーグ映画に関心を示さなかったこのわたしでさえ、「これは劇場で観ねば!」と思わされる作品でした。
そもそもスピルバーグって、こういう映画撮らせたら右に出るものはいないのに、なぜ滑稽な馬鹿映画ばかり撮り続けるのでしょうか?『A.I』以降、大嫌いな監督になってしまい、おまけに主演のハーレイ君まで嫌いになってしまいましたがな。
もう・・・あの目で見つめられたら・・・・!
めくりアッパー昇竜拳くらわせちゃうよ!!

さて、それで『ミュンヘン』本編はそのリアリティあふれる戦闘(?)シーンはもちろん、個人的に好きなシチュエーションてんこ盛りのたいへん楽しめる映画でした。
何がいいって、数人の男が自らの信じる大義のため身を挺して戦い、ターゲットをひとつひとつ葬っていく。このちょっと『アンタッチャブル』的なシチュって自分的にはたまらんのですよね。大好きです。
イデオロギー的なことは抜きにして、エンタメとして観て楽しめました。もちろん、いろいろ考えさせられるところはありましたが。実際のテーマの内容どうこうにかかわらず、こういった「思わせぶり」的な重いテーマがある映画もまた、好きですね。

ただ、この映画、普通の人は観てて分かったのかな?日本人にはかなり馴染みの薄い問題なのでは?出てくる単語はそれ関係が多いし。PLOはまだしも、モサドなんて・・・そもそも中東問題そのもの、イスラエルとパレスチナってなに?どんな関係?って人、多いんじゃないでしょうか。
実際、「スピルバーグの映画観にきました~映画終わったら食事してせっくるしま~す」って感じのカップル多かったし。
もちろん、映画では関係ないので語られませんが、われわれ日本人としては当時パレスチナと日本赤軍が共闘して、日本赤軍が英雄視されてたなんて、すごく興味深い話なんですが、こういった歴史って多分誰も教えようとしないだろうし、そうである限り中東の問題なんてわれわれとは疎遠であり続けるんでしょうね。だからこそ今回の戦争で日本人が中東の人々にどれだけ憎まれてしまったか、ということにも関心を示さないのだろうし。
もう、「子供達の未来のため」なんてセリフ言えないでしょ。ちゃんちゃらおかしいw腹いてーよ、そんなざれごとは。

すいません、脱線しました。
それで、テーマなんですが、これは「報復の連鎖」とかそんなんなようですが、それよりわたしとしては「国家と個人」ってテーマの方がしっくりきたような気がします。
だから「国家」だとか、一定の「集団」に愛を求める甘ったれた人はご覧になってみるとよいかも。

ちなみに、さんざん偉そうなこと言っておいて、わたし自身もそんなに中東問題詳しくないので、この映画が実際詳しい人にはどう写るのか、それもまた興味あります。



・゜゜・:.。..。.:・゜(n‘∀‘)η゜・:.。. .。.:・゜゜・
THE・じまん

来校時、トム神に『悪魔のいけにえ』スチールにサインしてもらいました。宝物です。
実際トム神が関わったのは『悪魔のいけにえ2』なんだけど。
コメント
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