桔梗おぢのブラブラJournal

突然やる気を起こしたり、なくしたり。桔梗の花をこよなく愛する「おぢ」の見たまま、聞いたまま、感じたままの徒然草です。

悪茄子(ワルナスビ)

2021年09月06日 22時46分14秒 | 薬師詣で

 先月三十一日から今日の昼まで一週間つづいた雨……。久しぶりに拝むことのできた陽射しにつられて散策に出ました。

 いつものようにまず慶林寺に参拝。以前ならその途中で「あるもの」を見ることができたのですが、十日ほど前に通りかかると、すっかりなくなっていました。犬酸漿(イヌホオズキ)という名の野草です。
 調べてみれば、別段珍しくもなんともない野草だとわかりましたが、私としてはこの夏初めて名前を知った草だったので、同じ野草であれば、ヤブカラシやカタバミが生えるのに任せっぱなしの我が庭に一石を投じんものと、実を収穫できそうな時期がきたら、摘んで帰って庭に播き、来年夏の愉しみにしようと考えていたところ、その存在を知った何日かあとに通りかかってみると、他の野草ともども一網打尽にされてしまっていたのでした。
 がっかりしていたところ、今日、久しぶりに通った別の場所で、小さく白い花を咲かせている草を見つけて、しゃがみ込んでじっくりと眺めてみれば、イヌホオズキでありました。
 すわ、と手を伸ばし、黒い実をいくつか頂戴することにしましたが、私が最初に見たイヌホオズキはほぼ花期が終わって、これから黒くなって行くのであろう緑色の実と、すでに黒くなっている実とが半々の割合で混在していたのに、今日見たのはまだ白い花がたくさん咲いていて、実のほうも黒色より緑色のほうが多そうな感じでした。



 久しぶりに仰ぎ見る青空です。

 


 富士川の土手は夏の間に草刈り隊がやってきたようで、夏草は一網打尽にされていました。
 それなのに、野草というのはじつに生命力旺盛です。もう草が伸び始めていると思って覗きこんでみたら、悪茄子(ワルナスビ)が花を咲かせていました。
 種子が家畜の糞などに混じって広がり、垂直と水平に広がる強靭な地下茎を持っています。その地下茎を張って非常によく繁茂するのです。
 駆除しようとして耕運機などで漉きこんでも、切れた地下茎の一つ一つから芽が出て、かえって増殖してしまうのだそうです。除草剤もあまり効かないとあって、一度生えると、完全に駆除するのはむずかしいということです。

 花は白または淡青色で、同じ科のナスやジャガイモに似ていて、春から秋まで咲きつづけるのだそうですから、いまはまだ真っ盛りです。果実は(私はまだ見たことがありませんが)プチトマトに似ています。しかし、全草にソラニンという毒が含まれています。ソラニンはじゃが芋の芽に含まれていることでよく知られている毒ですが、ワルナスビの毒はじゃが芋より強いみたいで、家畜が食べると、場合によっては中毒死することがあるということです。

 牧野富太郎博士の「植物一日一題」という著作の中に、ワルナスビに触れた一項があるので、以下に紹介しておきます。

 ワルナスビとは「悪る茄子」の意である。前にまだこれに和名のなかった時分に初めて私の名づけたもので、時々私の友人知人達にこの珍名を話して笑わしたものだ。がしかし「悪ルナスビ」とは一体どういう理由で、これにそんな名を負わせたのか、一応の説明がないと合点がゆかない。
 下総の印旛郡に三里塚というところがある。私は今からおよそ十数年ほど前に植物採集のために、知人達と一緒にそこへ行ったことがある。ここは広い牧場で外国から来たいろいろの草が生えていた。そのとき同地の畑や荒れ地にこのワルナスビが繁殖していた。
 私は見逃さずこの草を珍らしいと思って、その生根を採って来て、現住所東京豊島郡大泉村(今は東京都板橋区東大泉町となっている)の我が圃中に植えた。さあ事だ。それは見かけによらず悪草で、それからというものは、年を逐うてその強力な地下茎が土中深く四方に蔓こり始末におえないので、その後はこの草に愛想を尽かして根絶させようとしてその地下茎を引き除いても引き除いても切れて残り、それからまた盛んに芽出って来て今日でもまだ取り切れなく、隣りの農家の畑へも侵入するという有様。イヤハヤ困ったもんである。それでも綺麗な花が咲くとか見事な実がなるとかすればともかくだが、花も実もなんら観るに足らないヤクザものだから仕方ない、こんな草を負い込んだら災難だ。
 茎は二尺内外に成長し頑丈でなく撓みやすく、それに葉とともに刺がある。互生せる葉は薄質で細毛があり、卵形あるいは楕円形で波状裂縁をなしている。花は白色微紫でジャガイモの花に似通っている一日花である。実は小さく穂になって着き、あまり冴えない柑黄色を呈してすこぶる下品に感ずる。
 この始末の悪い草、何にも利用のない害草に悪るナスビとは打ってつけた佳名であると思っている。そしてその名がすこぶる奇抜だから一度聞いたら忘れっこがない。



 田んぼはすっかり黄金色です。



 富士川の中州にアオサギがいました。何を見ているのか、川の中ではなく、土手を見上げているように見えます。画像の撮し手である私は橋の上から眺めていますが、彼我の距離は10メートルほど。
 普通なら、私が橋の欄干から身を乗り出した瞬間に、「エーッエーッ」という独特の悪声を上げて飛び立ってしまうものですが、そうしなかったところを見ると、やはり何かに気を取られていたので、私の気配を察することができなかったのか、とみえます。



 この日、摘んできたイヌホオズキの実です。
 黒い
色をして硬そうに見えますが、実際は非常に柔らかく、潰れると紫色の液が出ます。小さなブルーベリーという感じですが、この実にはワルナスビと同じソラニンが含まれています。柔らかいので、摘んだときにいくつか潰してしまいました。
 毒は毒でも、どの程度の毒なのか知識を持ち合わせないので、左の掌の上でコロコロと転がしながら庵に帰り、小さな容器に移し替えるまでは、左手で何も触れないようにしました。
 コロナウイルスの消毒も兼ねて、そのあと念入りに手を洗いました。

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