http://www.asahi.com/paper/editorial20071115.html#syasetu1
福田首相はきょう、就任後初の外国訪問に出発する。ワシントンでブッシュ大統領と会い、来週にはシンガポールで東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓などの首脳会議に臨む。
福田外交には、前任者にはない強みがある。靖国神社参拝や慰安婦問題といった、歴史認識にまつわる難問を抱えていないことだ。歴史問題は日本に対する不信をアジア諸国に呼び起こし、米国でも下院が非難決議を採択した。
今回は、そうしたくびきから解き放たれた旅である。日本外交が自由な対応力を取り戻したのは久々のことだ。
首相が最初の訪問先に米国を選んだのは理解できる。安倍氏のタカ派的な路線とは一線を画すにせよ、日米同盟を外交の基軸と位置づけ、協力していく。新首相としてこの基本を米側に印象づけるのは意味があるだろう。
具体的なテーマとしてまず話し合ってほしいのは北朝鮮の問題だ。
米国はこのところ、核問題の解決に向けて積極的に北朝鮮との交渉を進めている。核の脅威が取り除かれるとすれば、日本には大きな利益だ。首相は米国の努力を支持することを明確に語るべきだ。
日本国内には、拉致問題が置いてけぼりにならないかと心配する向きがある。米国は年内にもテロ支援国家の指定を外す方針と言われる。首相は米大統領に待ったをかけるべきだという声もある。
だが、米朝関係が進展し、核放棄が実現に近づくのなら、日朝関係にも好影響を及ぼす。それを忘れるべきではない。
核放棄の見返りに、北朝鮮は日本との国交正常化と経済支援を期待している。だが、それには拉致問題を避けては通れない。その道筋に変わりはないのだ。
米国との間で大事なのは、この認識を確認し共有することだ。同時に、北朝鮮との合意を急ぐあまり、核の無能力化や廃棄の対象に漏れがあってはならない。今後の交渉の進め方について、両首脳には腹を割って話してもらいたい。
インド洋での海上自衛隊の給油活動の停止や、在日米軍の駐留経費負担の削減といった懸案もある。首相にとっては悩みの種だろうが、それで日米同盟の土台が揺らぐものでもあるまい。
むしろ今必要なのは、不透明な東アジア情勢をどう安定させていくか、両国の外交戦略をすり合わせることだ。優先順位は何であり、互いにどのような役割を期待するのか、首脳レベルでの意思疎通をはかっておかねばならない。中国への認識は欠かせないテーマである。
首相はその果実を持って、第2幕のアジア外交へと転進してほしい。中国の温家宝首相や韓国の盧武鉉大統領との初会談、さらにはこの3カ国の首脳会談も予定されている。
安定した日米関係がアジア外交の幅を広げ、それが米国に向き合うときの強みとなる。そんな骨太の外交戦略を描く旅にしてもらいたい。
「歴史問題を初めとして、日本の外交姿勢が対中韓朝謝罪のスタンスに戻り、中韓朝三国の後押しで対米強硬に出たらいいなあ」という、論説委員の願望、それ以上でもそれ以下でもない。
もっとも、例によって思いついた事をそのまま書き連ねたようなまとまりのない文章なので、どうとでも取れる。
筆者は、韓国の盧武鉉大統領が提唱した、東アジアバランサー論、を思い出した。