時々新聞社

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中谷巌氏の「懺悔の書」

2009年01月27日 | 経済問題
三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏が、昨年末に「資本主義はなぜ自壊したのか」という著書を出版した。
中谷氏は、小泉「改革」のブレーンであり、日本において、新自由主義、市場万能主義を徹底的に推し進めてきた人物である。
その同氏が、この著書を出版した理由を以下のように述べている。
「その意図は、国の方向性は市場参加者の意図が反映される「市場メカニズム」に任せるべきだという「新自由主義」的な考え方で進んできた日本の「改革」路線では、日本社会の良いところが毀損していくのではないか、マーケットだけでは日本人は幸せになれないのではないかという疑問を率直に示すことにあった。」
そして、「「なんでも市場に任せるべき」「国がどうなるかは市場に聞いてくれ」という新自由主義的な発想に基づく「改革」は、無責任だし、危ないのではないかということを強調したかった」と述べ、「平等社会を誇っていた日本もいつの間にかアメリカに次ぐ世界第2位の「貧困大国」になってしまった。そのほかにも、医療難民の発生、異常犯罪の頻発、食品偽装など、日本の「安心・安全」が損なわれ、人の心も荒んできたように見える。これを放っておいてよいのかという問題意識である。」と述べている。
そして、「新自由主義的改革においては、「個人の自由」を「公共の利益」に優先させ、あとは小さな政府の下、「市場にお任せ」すれば経済活性化が可能になるという考え方をとるが、それが上記のようなさまざまな副作用を生んでしまった。したがって、「改革」は必要だが、それはなんでも市場に任せておけばうまくいくといった新自由主義的な発想に基づく「改革」ではなく、日本のよき文化的伝統や社会の温かさ、「安心・安全」社会を維持し、それらにさらに磨きをかけることができるような、日本人が「幸せ」になれる「改革」こそ必要であると考えたわけである。」と書いている。
なかなか立派な文章である。
同氏のように、積極的な「改革」推進者が、自らが推進した「改革」の誤りを率直に認め、自らが「懺悔の書」と呼ぶべき本を出版した意義は大きい。
100年に1度と言われるような金融危機に見舞われている時に、未だに「まだ改革が足りないからだ」といった主張をする恥知らずな元大臣、経済学者や評論家が多い中で、自らの主張の誤りを認めた態度はりっぱであろう。
そして、当面の取り組みとして、「とりあえずは、「貧困大国」の汚名を返上する改革が必要だろう。底辺を底上げし、貧困層が社会から脱落していくのを防ぐこと。このことが重要なのは、「日本の奇跡的成長の原動力であった中間層の活力を回復しないと日本の将来はない」と考えるからである。日本が富裕層と貧困層に2分されてしまえば、社会は荒み、日本の良さが失われるだろう。」と述べている。
編集長も中谷氏のこの提案に賛成である。
同氏が、小泉「改革」の推進者として単に「懺悔」に終わらせるのではなく、「改革」の犠牲者に芽を向けた積極的な提案を期待したい。


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