時々新聞社

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グローバル企業、賃金伸びず・日銀が分析

2007年05月26日 | 経済問題
日銀は企業のグローバル化に伴う賃金の抑制圧力を調べるため、外国人持ち株比率と賃金の関係を分析した。賃金の指標として物価騰落を加味した実質賃金と、労働生産性の伸びからみた妥当な賃金との格差(実質賃金ギャップ)を計算した。外国人持ち株比率が高く、グローバルな企業が多い自動車や電気機械などは賃金水準が比較的高い要因もあり、労働生産性が伸びている割には賃金の引き上げが抑えられているという関係が分かったそうだ。
この分析によると、外国人持ち株や輸出比率の高いグローバル企業ほど、生産性の上昇と比べた賃金の伸びが低めに抑えられる傾向が出ている。国際競争にさらされる度合いが高いためだ。労働需給が引き締まり、人手不足感が強まっているものの、企業の賃金抑制姿勢は根強く、家計部門への景気の波及は緩やかにとどまりそうだと分析している。
しかし、これは当たり前のことだ。わざわざ日銀が調査などする必要もない。
経済のグローバル化によって、企業は莫大な収益を得られる可能性が著しく高くなるが、一方で生産規模が大きくなり、いったん販売不振などに陥ると莫大な設備投資や不良在庫などで取り返しのつかない事態を招くという、いわばハイリスクハイリターンの事業形態になっているということだ。
その万一のリスクを回避するために、節約できるところは人件費しかない。これが今回の調査結果に現れた中身である。
もっとも、わざわざこのような調査をしなくても、大企業が非正規雇用者や違法な偽装請負を大幅に増やして、ワーキングプアなどの新たな貧困層を生み出してきている事実を見るだけで賃金抑制の実態はわかりそうなものではないか。
問題は、このような事態をどのように受け止めるのかということだ。
企業の生産性が著しく向上し、莫大な利益を上げているにもかかわらず、賃金が抑制されているという事態を当たり前、あるいは仕方がないと考えるのか、それとも、労働者を犠牲とした企業の横暴は許されないことだと捉えるのか、そこが問題なのだ。
安倍内閣は、企業の収益が伸びれば景気が回復し、国民生活も豊かになる。財政赤字も解決すると主張している。すなわち、企業が大もうけをすれば、そのおこぼれがサラリーマン、OLにも及ぶだろうという考え方である。しかし、企業の収益が伸びても、労働者の賃金は伸びないという事実は隠しようがなく、この主張の破綻は明らかではないか。
日本は、ヨーロッパなどと比較して企業に対する規制が甘い資本主義国である。このような企業の横暴に対する法的な規制を強化すべきである。最低賃金の引き上げ、所得税減税と法人税の増税、企業に対する種々の違反金の創設など、政府がすぐにでもできることはたくさんあるはずだ。
同時に、労働現場では、このような企業の横暴を告発し、これと対抗する労働者自身の活動が不可欠であり、これを応援する世論の高揚もまた不可欠であると思われる。


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