時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

最低賃金の引き上げを先送り

2007年07月06日 | 格差社会
政労使の代表らでつくる「成長力底上げ戦略推進円卓会議」でめざす中長期的な最低賃金の引き上げ目標の合意を今秋以降に先送りする方針を固めた。
参院選前に例年以上の大幅な引き上げで大筋合意することを目指していたが、引き上げの根拠となる最賃法改正案が今国会で成立せず、引き上げに反対する経済界の説得は難しいと判断したと報道されている。
最賃法改正案などの重要な法案を廃案に追い込む一方で、社会保険庁の解体法案などのくだらない法案を熱心に審議していたということだ。
要するに、政府、与党には、最低賃金を大幅に増額しようという気持ちがまったくないということである。
以前にも、記事の中で述べておいたが、最低賃金は都道府県ごとに、物価水準などを基に定められており、最低額は青森、岩手、秋田、沖縄の610円、最高額でも東京の719円である。
この最低賃金額で、1日8時間、月に20日間働いたとしても、東京では11万5040円であり、ここから、税金、社会保険料、家賃、公共料金を支払えば、おそらく、生活費はほとんど残らないだろう。最低額の610円では、同様に9万7600円である。東北地方や沖縄がいくら家賃や物価が安いとはいっても、これでは生活できないのは明らかである。
賃金というのは(これも以前に詳しく述べたが、)生きた労働者に備わっている労働力という商品を維持し、再生産するためのものである。したがって、労働者本人とその扶養家族の衣食住を保証し、社会的に見て最低限の文化的な暮らしを送ることができるだけの費用でなければならない。もし、これができないのなら、たとえば、お金のあるところから税金として取り立て、不足するところに回すという所得の再分配がきちんとできるような社会的な仕組みを作らなければならない。
世界第2位の経済大国と言われる日本の中に、ネットカフェ難民、バーガーショップ難民などと呼ばれるような「難民」のほとんどは、最低賃金よりも高い賃金で働いているだろう。それでもこのように次々と「難民」が生まれている現実は、とても、この最低賃金では、生活ができないことの現われである。
少なくとも生活できる賃金を保証することが必要だ。
これに対して、厚生労働省は「要請には法的な根拠がなく大幅アップは難しい」との見解を示しているようであるが、おかしな話だ。その法律を作るのは、われわれ人間である。必要な法案を作成して、国会に提出すればよいではないか。
多くの国民が、格差社会の根絶を願っている。最低賃金の底上げは、その第一歩である。ぜひ早期に実現するよう、政府、関係省庁、国会は努力すべきである。