時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

自衛隊が個人・団体の違法な情報収集

2007年06月09日 | 政治問題
陸上自衛隊の情報流出防止機関である情報保全隊が、イラクへの自衛隊派遣に反対する市民運動や報道機関の取材に関する情報を広範囲に収集・分析していたことが分かった。
共産党が6日、自衛隊関係者から入手したとする「内部文書」を公表した。集会の日時、場所、発言内容などを詳細に記載したもので、関係者の個人名もある。防衛省側も一連の情報収集活動については認めているという。自衛隊の秘密保持を目的とする保全隊の本来の任務からは逸脱するとの指摘もある。
文書は「情報資料」と「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」の2件。A4判で計166ページに及ぶもので、2004年のイラク派遣の前後に行われた調査活動を記録しているという。
この「情報保全隊」というのは、2000年の海上自衛隊幹部による秘密漏出事件を機に、防衛庁(当時)が情報保全体制の強化のために、2003年3月に陸海空の各自衛隊の「調査隊」を改編して発足させたものだ。
そして、その任務は、2002年4月の衆院安全保障委で中谷長官(当時)が、「自衛隊に対して不当に秘密を探知しようとする行動、基地、施設などに対する襲撃、自衛隊の業務に対する妨害などの外部からの働きかけから部隊の秘密、規律、施設などを保護するのに必要な資料や情報の収集など」と答弁しているそうだから、今回発覚した個人、団体の情報収集はこの任務とはかけ離れたものである。
しかも、この資料が「情報流出防止機関」である情報保全隊から「流出」していることである。お粗末極まりない話である。国民の税金を使って、いったい何のお遊びをしているのだ。
もう一つは、国家機関が、その敵対者、反対者と認定した団体や個人の情報をつぶさに収集しているという怖さである。
自衛隊の施設や駐屯地に取材に来た、などの記録であれば、これが自衛隊の記録に残るのは当然であろう。いつ、誰が、どういう目的で自衛隊を訪問したか、その記録を残しておくことはまったく差し支えはない。しかし、新聞や雑誌記者の海外での行動や面談の相手の記録までが残っているという。これなどは、徹底的に尾行をしなければわからない情報である。
久間防衛相や塩崎官房長官らは、「自衛隊としての当然の活動だ」と開き直っているそうだが、国家権力による調査、介入ということの重大さをまったく理解していない発言である。
多額の税金を投入し、しかも自らに敵対的な思想を持つ者、行動する者を付け回すことは、プライバシーの侵害であり、言論弾圧にも相当する悪質な行為である。
しかも集めた情報の中には、イラク派兵や自衛隊への態度だけではなく、年金や消費税などの運動、関係団体、個人も調査の対象になっている。これを見ると、単に自衛隊に対する態度だけでなく、現在の政府の政策に反対するものすべてが調査対象になっていることがわかる。
これでは戦前の憲兵政治と同じではないか。
昨今の安倍政権の危険な流れと合わせて考えると、自衛隊という国家機関による個人、団体に対する調査は、なお一層の怖さを感ずるのである。