『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

私たちは、どこから来てどこへゆくのか?    ゆうでん流ブログ・マガジン(エッセイ・旅行記・小説etc)

オジイ達の夕景

2013年03月30日 13時06分41秒 | 航海日誌
夕方になると、島絣のたもとをはだけたオジイたちが、決まって、湯飲みを片手にふらふらとやって来て、「きょうの、味みましょうね」とだれにいうともなく、口々に言い、湯飲みを差し出す。

島の泡盛蒸留所の大釜の前は、大木戸が開かれ、風を通している。はな垂れという、できたての原酒を絞り出し、ぽたぽたと落ちる口に、湯飲みを差し出すのだ。

オジイは3人、4人といて、みな注いでもらうときはおとなしいのだが、それを口にするやいなや、「味いいね。きょうのも上出来さ」

そういうオジイ達を見たのは小学生の頃だったね、と、石垣島の高嶺酒造三代の若社長が話してくれた。オジイ達の夕景だ。そうして小さな蒸留所に帳が下りていく。どこからともなく、三線(さんしん)の音色が聞こえて来る。

今は昔の話。またオジイたちが復活するときが来るさあ。