礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

独学者に送る森本清吾の名言

2017-02-06 01:28:57 | コラムと名言

◎独学者に送る森本清吾の名言

 森本清吾著『独学者の行くべき道』(文修堂、一九四一)の紹介を続ける。
 今のところ、本篇の「3. 数学と独学」を紹介しただけであるが、このあと、付録の「文検授験記」の中から、いくつかを紹介してみたいと思っている。
 本日は、本篇のうちから、森本清吾の「名言」を抜き出し、これを列挙してみたいと思う。というのは、この森本清吾という数学者は、意識してかどうかは不明だが、その文章の随所に、気のきいた名言を散りばめているからである。
 引用にあたっては、自立した形の名言にするため、若干、表現を改変している場合がある。また、仮名づかいは、現代かなづかいに直した。

「1. はしがき」より
○数学は独学に適し、独学で成功した人も多い。

「2. 数学の学習法」より
○独学者の中には、書物の文字を読むことに追われ、真の学習法から遠ざかっている者がある。
○数学の学習の主力は「練習」におくべきである。
○練習による実力の養成は「他力」ではできない。
○先生が良ければ良いほど、自分の努力も大きくしなければならない。
○剣道の道場では、自分が痛い思いをしなければ上達できない。
○数学は、智識に属する学科で、体力や技能に属する学科ではない。
○数学を学習する努力においては、精神の集中ということが第一である。
○智的活動では、精神が集中しているか否かで、十倍、二十倍の開きがある。
○書物に向かうときは、満身の緊張を学問の上に集中すべきである。
○講義をきくときは、満腔の興味を持ち、教師の言葉の裏までききぬくべきである。
○精神を集中して勉強すれば、時間は多くを要さない。
○長時間の勉強を誇る人は、精神の集中ということを知らない場合がある。
○勉強していて眠くなったら、一時間でも二時間でも寝てしまい、自然に目がさめるのを待って勉強するとよい。
○勉強は量より質。
○練習問題は、少しむずかしいものを選ぶとよい。
○問題集は、解答のないものを選ぶとよい。
○問題のヒントがつかみにくいという場合は、問題のヒントがつかむ練習をする。
○問題の解答に価値があるのではなく、解答に達するまでの努力に価値がある。
○問題が解ける前に、人に聞いたり、解答書を見たりしてはいけない。

「3. 数学と独学」より
○数学ほど独学に適する学科はない。
○正しい頭で考えて正しいと思ったことは、書物に書いてあろうがなかろうが正しい。
○わからないことは、みずから考えたら自然にわかる。
○独学での成功は、天分によるのではなく努力による。
○独学者は、自分の努力を自分で鞭韃しなければならぬ。
○独学者は、勉強ならざる勉強をして時を費していることがある。
○環境は体を縛るが精神は縛らぬ
○勉強は精神力によっておこなうものである。
○境遇の差を肉体的な努力でカバーしようとしてはいけない。
○時間が不足ならば少い時間に多くの効果を挙げるように精神を集中したらよい
○やるなら全力を尽してやるがよい。
○苦しみを楽しみと思うようでなければ戦いには勝てない。
○試験を受けるなら、最短期間での合格を目指すべきである。
○必ず受かるぞという決心の有無で、成績が違ってくる。
○独学で成功するか否かは、注意と努力によるので、実力や境遇によるのではない。
○中等教員検定試験に合格すれば、一生、中流の生活ができる。
○自ら助けんとする意志と努力とに燃える人たちに対して、世間は決して酷ではない。

「6. 其の後」より
○学者として大成するためには、専門の一分科を選び、その分科で第一線まで進出する必要がある。
○一分科をひと通り胸に収めるまでには、条件が揃っていても、約三年かかる。
○努力によっては、学会に認められることもある。
○「天はみずから助くる者を助く」

 当然ながら、すべて「独学」に関する名言、「独学者」に向けられた名言である。
 注意しなければならないのは、この時代において、この本で論じられている「独学」とは、一義的には、検定試験に合格するための「独習」のことであるが、特に数学という分野に関しては、その「独習」が同時に、「学者」として大成することを目標とする、文字通りの「独学」でもあったという事実である。
 そうした時代に、検定試験のための独習を手はじめに、実際に理学博士の「学位」を得た、森本清吾という数学者(独学者)が書いたのが、この『独学者の行くべき道』という本である。独学者にとって、参考にならないはずがない。【この話、さらに続く】

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