礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

国民社会主義独逸労働党ノ条款ハ総統コレヲ決定ス

2020-06-30 00:05:51 | コラムと名言

◎国民社会主義独逸労働党ノ条款ハ総統コレヲ決定ス

 電報通信社発行の『独逸大観』(一九三六)を紹介している。本日は、その四回目。
 昨日は、同書の第三篇「党と国家」から、「一、党と国家との統一」の前半部分を紹介した。本日は、その後半部分を紹介する。

 以上の如き考へ方から一九三三年十二月一日、「党国帰一を鞏固〈キョウコ〉ならしむる為の法律」が発布せらるゝに至つたのである。
 右法律の本文は、次の通りである。
 中央政府ハ、次ノ法律ヲ決裁シ、茲ニコレヲ公布ス。
 第一条⑴、国民社会主義革命成就後ハ、国民社会主義独逸労働党ハ独逸国家思想ノ支柱タリ。従ツテ国家ト不可分的ニ連結セラルルモノトス。
 ⑵、国民社会主義独逸労働党ハ、公法上ノ団体トス。ソノ条款ハ総統コレヲ決定ス。
 第二条 党ノ諸機関ト公ノ官庁トノ間ノ緊密ナル共働ヲ保障スル為、総統ノ代理者ハ中央政府ヲ〔ママ〕閣員タルベキモノトス。
 第三条⑴、国民社会主義国家ノ指導的並ニ活動的原動力タル国民社会主義独逸労働党及突撃隊員(ソレニ従属スル部隊ヲ含ム)ハ、総統、国民及国家ニ対シテ、重大ナル責務ヲ有ス。
 ⑵、党員並ニ隊員ガ、コノ責務ニ違背シタル場合ニ於テハ、特殊ノ党裁判管轄権、又ハ突撃隊裁判管轄権ニ服属スベキモノトス。
 ⑶、総統ハコノ規定ヲ。〔ママ〕ソノ他ノ諸組織ニ属スル人々ニ準用スルコトヲ得。
 第四条 国民社会主義独逸労働党ノ存続、活動又ハ威信ヲ侵害シ、或ハ毀傷スルガ如キ一切ノ所為又ハ不作為、特ニ突撃隊員(ソレニ従属スル部隊ヲ含ム)ニアリテハ規律ト秩序トニ相反スル如キ一切ノ非違ハ、コレヲ責務ノ違背ト認ム。
 第五条 其他ノ場合ニ於テ慣行セラルヽ懲戒罰ノ外、更ニ拘留及禁錮ヲ以テ処罰セラルルコトアルベシ。
 第六条 公ノ官庁ハソノ権限内ニ於テ、党裁判管轄権並ニ突撃隊裁判管轄権ノ行使ヲ委託セラレタル党又ハSA〔突撃隊〕ノ諸機関ニ対シ事務上ノ又ハ司法上ノ互助ヲナスベシ。
 第七条 一九三三年四月二十八日附、突撃隊及親衛隊隊員ノ懲戒処罰権ニ関スル法律(RGBI・Ⅰ二三〇頁)ハ、ソノ効力ヲ失フ
 第八条 宰相ハ国民社会主義的独逸労働党総統トシテ、並ニ突撃隊総統トシテ、本法律ノ実施上最高司令官、並ニ補充上必要ナル規定、特ニ党裁判管轄権及突撃隊裁判管轄権ノ組成及訴訟手続ニ関スル規定ヲ公布ス。宰相ハコノ裁判管轄権ニ関スル規定実施ノ時期ヲ定ム。  宰相並ニ内務大臣(署名)
 以上掲ぐる処の法律本文に関して、尚次の事が注意されてよいであらう。
 第一条は国民社会主義革命の成果たる国民社会主義国家の宣言を包含してゐる。国民社会主義独逸労働党は、独逸国民の国家思想の支持者となり、以て自ら国家の根柢なりと宣言するのである。党は該法律の発布までは、民法上の「登記社団」といふ法律上の一形式を持つてゐたにすぎない。該法律第三条は党を目して、「国民社会主義国家の指導的並に活動的原動力」と呼ぶのである。これによれば、国民社会主義独逸労働党は、国家生活及国民生活全体を形成する公法上の最高の団体であるのである。
 第二条に於ける総統の代理者は、国家組織の範囲内に於いては、無任所大臣である。その任務とする処は、「連繫本部」の長として、党の機関と国の官庁との間の不断の接触連絡を確保する事である。加之〈シカノミナラズ〉党と国家との間の統一は、既に該法律発布前に於ても官党兼摂に伴ふ多岐的な制度のおかげで、著しく促進させられてゐたのであつた。即ち国務大臣は党にも地位を占めてをり、統監及州知事は同時に党の地方支部長であり、又国民社会主義の郡長〔ママ〕は、同時に又党の郡支部長の職にも在つた事は、特筆に値する。
 第三条は、NSDAPの党員に対して、一層重大なる責務を課するが、しかしその為に余計の特権を与へると言ふ事は決してない。此の規定は重責を進んで引受ける代償として特権を要求することを最初からして拒けた〈シリゾケタ〉国民社会主義者の理想主義的且道徳的な精神にふさはしいものである。NSDAP又は突撃隊に加入することが自発的に行はれるのと同じく、団員たるものは、何時でもその脱退を宣言し得るのである。
 党と突撃隊とに特殊の裁判管轄権を創設することは、党の共公上〔ママ〕法律上の性質の何たるかといふことと、党が国家に対して独立してゐるといふ事とを、明瞭に表明してゐるのである。

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党と国家の統一は魂と肉体の統一に比すべきものである

2020-06-29 02:25:09 | コラムと名言

◎党と国家の統一は魂と肉体の統一に比すべきものである

 電報通信社発行の『独逸大観』(一九三六)を紹介している。本日は、その三回目。
 本日は、同書の第三篇「党と国家」から、「一、党と国家との統一」の前半部分を紹介したい。

   ――――――――――
   第三篇 党 と 国 家
   ――――――――――
  一、党と国家との統一
 アドルフ・ヒッラーは、独逸国家に理念と形態とを与へた。彼は大精神的更新並に国民的新生の創始者であつた。彼が運動をおこし党を建設する事をしなかつたならば、彼は只単に野に叫ぶ一予言者として終つたことであらう。彼は全国民と相〈アイ〉提携し、民衆一般の信頼の下に政治的権力を行使し得るために、党内にその為の機関を創設したのであつた。
 彼の党与〔なかま〕は献身と忠誠との念に燃えて、幾年ともなく続いた苦闘実に文字通りの苦闘の裡〈ウチ〉を終始彼に随従して来たのである。彼等こそは、道徳的精神的革新の遂行者であり又政治上の闘士であつて、国民の政治的構成力を身を以て具現した人々なのである。
 党の使命とする処はアドルフ・ヒッラーが宰相の地位を贏ち得た〈カチエタ〉だけでは、まだ達成されなかつたのである。政治教育は引続き行はねばならなかつたし、国家を純国民社会主義的なものに改組し、青少年を含めての国民を国民社会主義の世界観に完全に親しませると云ふ任務が残つてゐた。一九三三年三月二十四日の「全権委任法」こそは、国民社会主義的精神に依る国家改造の発端を意味するものであつて、之により無制限の権力がヒットラー内閣に委せ〈マカセ〉られた。
 新国家形成に就て党の演じた役割が、単に議会に於ける活動のみに止り〈トドマリ〉得ず、党が政府に取つては改革の支持者となり、又民間に於ては政治運動、啓蒙、教育等に尽力して終始したといふ事は明白な事実である。
 マルクス主義諸政党が禁止され、又爾余の諸政党が、自発的に解散した後、国民社会主義独逸労働党(NSDAP)は、一九三三年七月十四日の法律に依つて独逸国に存する唯一の政党と認められた。そして既存政党を継続し又は新党を樹立せんとする一切の試〈ココロミ〉に対しては罰則が設けられた。
 NSDAPの、かうした独特無二の地位は、十有余年間に亘り不撓不屈の精神によつてつゞけられた苦闘に伴ふ、道徳的並に歴史的に当然なる結果であつた。そして同時に独逸国民と独逸国家との生存上の必要を充足したものであつた……国民社会主義独逸労働党は、上は総統より下は最下の従者に至るまで、独逸国の将来を築上げる為の原動力である……国民社会主義独逸労働党は実に国家の魂である。党と国家との統一こそは、実に魂と肉体との統一にも比すべきものである。(プフゥントネル=ノイべルト著「新独逸国法」、一九三三年十二月一日附法律序言。)【以下、次回】

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特に猶太人は公民たるを得ざるものとしてゐる

2020-06-28 04:55:05 | コラムと名言

◎特に猶太人は公民たるを得ざるものとしてゐる

 電報通信社発行の『独逸大観』(一九三六)を紹介している。本日は、その二回目。同書の第二篇「新国家の誕生」の「三、独逸国の再建(有機的形成)」から、「D 独逸公民法」の全文を紹介したい。

   D 独 逸 公 民 法
 前諸章に於いて述べた国民社会主義政府の立法的処置は何れも、国家自体、即その行政及行政機構に関してゞあつたが、本章に於いては、国家自体を支持してゐる個人及その国家内の地位に関して述べるこゝする。
 独逸〈ドイツ〉国が従前連邦的性質を有し、各邦が夫々伝統的地位を固執してゐた結果、凡ての独逸人は夫々の属する各邦の邦籍と同時に独逸連邦の国籍を有してゐた。従つて従来の独逸発行の旅券には国籍の項に「プロイセン人」「バイエルン人」又は「ザクセン人」等と誌されてあつた。一九一三年七月二十二日の法律は「連邦及邦国籍法」と称せられてゐる。一九三四年連邦構成各邦の国家的独立が廃棄されて茲に始めて、プロイセン或ひはバイエルン国籍と云ふものも消滅した。即ち同年一月三十日の独逸国組織更新法に基き同年二月五日独逸国籍命令が発布され、これに依り独逸連邦内の各邦国籍なるものが消滅し、唯独逸国籍のみが存在することゝなつた。
「独逸国籍所有者」の概念は、依然として上掲した一九一三年の法律にしたがつて決定されるが、国籍所有者たることの特徴は、当該者が独逸国防禦団体員であり、その為にそれに対して特別の義務を負ふと云ふ点に存してゐる。
 国籍所有者の政治的権利に関しては、一九三五年九月十五日の「独逸公民法」の中に特に意義深い諸規定が定められた。
 自由主義の見解に依れば、苟しくも国籍を有するものは、その心情、能力、人種的差別の関係なく平等に政治的権利を有するのである。ワイマル憲法は満二十歳に達した国籍所有者はみな選挙権を有する事になつてゐるが、民法では満二十一歳を以て成年としてゐる。即ち自分自身のことすら独立に仕末の出来ない国民が、国民及国家の重大事に参与決定し得ると云ふことになつてゐた。この珍妙な状態はニュルンベルクの立法によつて一掃され、その上更に真に国事を托し供に決するに足る特定の範囲の人々を一般市民から抽出した。ヒットラーはその著「我が闘争」の中に「国家はその存立及その発展の源泉であり担当者たる一群の人達即ち「国民同志【フオルクスゲノツセ】」と言はれる人々と唯利得を迫つてゐる部分として国内に存立するに過ぎない者達とを厳格に区別しなければならぬ」と云つてゐる。
 新法は此見地から独逸公民と独逸国民とはこれを区別し、国籍を有するも血統上他人種に属する者、特に猶太〈ユダヤ〉人は公民たるを得ざるものとしてゐる。のみならず血統上独逸人又はこれと類同の血統を有する国籍所有者でも、国政に参画するの特権を得るに足るのみならず且その資格あることを証明したものゝみが公民たるを得るのである。新法の重要なる個所を摘出掲載すれば次の如くである。
 第一条 独逸国籍所有者トハ独逸国防禦団体ニ属シ、且ソレガ為ソレニ対シ特別ノ義務ヲ負フ者ヲ云フ。
 国籍ハ連邦及び国籍法ノ規定ニ従ヒ之ヲ享ク(出生、認知、婚姻、帰化)。
 第二条 独逸公民タルハ、血統上独逸人又之ト類同ノ血統ヲ有スル独逸国籍所有者ニシテ、国民及国家ニ誠実ニ奉仕スル意思ヲ有シ、又其レニ適スルコトヲ行動ニ依リ実証シタモノノミニ限ル。
 独逸公民権ハ公民証書ノ交付ニ依リ発生ス。
 独逸公民ノミガ法律ノ規定ニ従ヒ与ヘラレル政治的権利ノ完全ナル享有者ナリ。
 この国籍法は一九三三年三月二十四日の立法委任法に基いて発布せられたものではなくして、一九三五年九月十五日ニュルンベルク党大会中開催されたる独逸国会に於て全会一 致を以て可決せられたものである。これは政府の提出したものと称するより議会の発案に なるもので、一九三五年九月十七日より実施せられた。更に一九三五年十一月十四日発布の独逸国公民法に関する法規に於て猶太人の法律的地位が細目に亘つて規定されてゐる(「猶太人の地位に関する処置」参照)。

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日本電報通信社発行『独逸大観』(1936)を読む

2020-06-27 00:28:31 | コラムと名言

◎日本電報通信社発行『独逸大観』(1936)を読む

 最近、新聞紙上で、「電通」という社名を目にすることが多くなった。この会社は、正式には、「株式会社電通」と言い、一九五五年までは、「株式会社日本電報通信社」を名乗っていた。いずれにしても、古い伝統を誇る日本最大の広告会社である。
 戦前の一九三六年(昭和一一)月、その株式会社日本電報通信社から、『独逸大観』という本が出版されている。今、これを手に取ってみると、デザインといい、印刷技術といい、紙質といい、すばらしい出来栄えである。定価一円七〇銭。
 冒頭近くに、「緒言」と題した一文がある。本日は、これを紹介してみよう。

   緒  言

 独逸最近に於ける国民生活全般に亘る大変革並にその国際的地位の驚異的躍進は由因する所極めて遠く、それが理解は同国に於ける建設的諸事業の根柢をなす世界観にまで到 らねば完璧を期し得ない。而してこれは簡単なる報道のよくする処にあらず、系統的記述 の始めてなし得る処である。弊社がこゝに「独逸大観」を発行するは、此現下緊切の要求を充たし、以て我読書界に貢献せんとするの微志に外ならない。
 固より伊太利のファシズムが同国独特のものである如く、独逸の国民社会主義は独逸民族の特質と歴史を除外しては考へられない。偉大なる民族運動は総て其民族独特の内面的必然性によつて捲き起されるものである。斯かる必然性は民族に依り其性質を異にし、従つて或一国の民族運動をそのまゝ他国に移し得ざる事は固より言を要せざるところであるが、新興独逸の各方面に於ける諸種の試みは我々に幾多の有益なる示唆を与へることを信じて疑はない。此意味に於て本書は専ら新興独逸のあるがまゝの姿を敍述するに止めた次第である。
 本書発行に当り駐日独逸大使フォン・ディルクセン閣下は懇篤なる序文を寄せられ、又本書中の記事写真に就ては同大使館の参事官ハンス・コルプ博士が最も懇切熱心且つ公平なる立場に於て之が蒐集及び編輯に多大の援助を与へられた。茲に深甚なる感謝の意を表する次第である。
 尚弊社は本「独逸大観」の姉妹書として独文「日本大観」の刊行を計画し、近年欝勃として醸成されつつある独逸及中欧諸国に於ける日本研究熱に応へ、政治・経済・軍事・文化等万般に亘つて躍進日本の紹介を企て鋭意之が準備を進めつゝあるが、この新しき企画に対しても江湖の御協賛を賜らば幸甚である。

 昭和十一年五月         株式会社 日 本 電 報 通 信 社

 執筆者はハッキリしないが、奥付に、「編輯兼発行者」として名前が掲がっている光永星郎(みつなが・ほしお)ではないのか。

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薪炭自動車の取扱いで注意すべき事項

2020-06-26 00:13:01 | コラムと名言

◎薪炭自動車の取扱いで注意すべき事項

 国防科学知識普及会発行『自動車時代』第九巻第八号(一九四一年八月)から、「代燃車の試験課題と解答整理の二つ」という記事(山口安治執筆)という記事を紹介している。本日は、その四回目(最後)。
「薪炭自動車」という言葉が出てくるが、読みは「しんたんじどうしゃ」。薪(まき)および木炭を燃やしてガスを発生させ、そのガスを用いて内燃機を動かす自動車のことである。

 次の問題は
問 薪炭自動車の取扱ひ及び其の運転に際して注意すべき事項を問ふ……と云ふのである。これも実地運転と直接関係する問題で、実地試験の要求する点を学科試験官が採用した処のその反映であると見てよいのである。
 この問題には取扱ひと運転の時の注意と云ふ具合に一つの問題で二つの解答を要求してゐるので、解答も取扱ひの場合と運転の場合とに区別して答へる様にした方が解答を整理する場合は都合がよく且つ書き易いのである。
答、取扱ひに就いては左【さ】の如き注意が必要である。即ち
イ、発生炉内にまだ残火【ざんくわ】がある場合に掃除せねばならぬ時は、その残火を灰と一処に書き出しても、これをその侭【まゝ】不用意に危険な場所に捨てゝはならない。(火災の虞れ〈オソレ〉があるから)又残火を始末する時に車庫内で行ふ場合は充分注意し火を処分すること。また発生炉に埋つた灰やクリンカーは炉の温つてゐる内に掃除を行ふと綺麗に除去出来る。 
ロ、エンヂンの調整及び発生炉、冷却器、清浄器の掃除又は手入れは入念に行ふこと。この際余り手荒に行はず静かにやること。
ハ、発生炉内に炭や薪〈マキ〉を補給する時はよく注意して濫りに〈ミダリニ〉額や手を詰込口【つめこみくち】に差出さぬこと。また発生炉を余り過熱させぬこと
ニ、斯の他取扱ひ上火災防止の為めには、積荷の位置を発生炉に接近して積載せぬこと。或は薪、木炭を着火の虞れある場所に置かぬ事とか運転中焚口【たきくち】から炭火が落下せぬ様に前以て注意して完全ならしめて置くこと。 
 次に、運転に際して注意すべき事項を挙げると。
イ、始動の時は発生ガスが充分なりや否やを確めてから行ふべきである。若【も】し不充分なガスを用ひて始動する時はエンヂンは僅かの間回転してもまた停止して仕舞ひ且つ充分な動力が発生しないから避けること。 
また停止したエンヂンを再始動する時には再び始動送風機を廻さなければならないから時間を倍加すると同時にバツテリーの電流を余分に消費するか〔ら〕極力が避ける必要がある。
ロ、運転中は発生炉内の燃料消費に付き常に念頭に置いて注意すること。
 以上の如き解答が得られる。この外の問題としては
 ガス発生炉装置自動車を取扱ふ場合に火災予防の為めどんな注意をせねばならぬか。
 薪炭自動車の始動に際し加速器並【ならび】に空気弁の操作は如何に調整せば可【か】なりや。
 薪炭自動車運転中俄【にわか】に力の減ずることあり其の原因如何【いかん】。
 などと主として代燃車を運転する運転者が是非とも知らねばならない身近な問題を獲へて〈トラエテ〉、代燃車への知識吸収の刺戟となる様な課題が多い。
 この外にも代燃車として許されてゐる種類はどんなものがあるかとか、薪炭車にはどんた薪炭を選んだらよいかとかの常識問題も出てゐるが要するに代燃車への課題は前記の試験官の説明にもある如く、実地試験に即応した運転者の知らねばならない身近な処から獲へた課題が多いのであるから、この考へをよく承知の上で、常に実地試験を受ける心構へを同時に学科試験へも移し直して、従来課題されたものを参考として研究して置けば、代燃車の問題に関する限り先づ鬼に金棒で、学科試験の合格は疑ひないであらう。

 文中、「薪炭自動車」、「ガス発生炉装置自動車」、「代燃車」などの語が出てくるが、基本的に、すべて同義と考えてよい。
 明日は、話題を変える。

*このブログの人気記事 2020・6・26(2位になぜか那須補足意見)

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