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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

チャンドラ・ボースの遺骨はホンモノか

2025-04-21 03:50:19 | コラムと名言
◎チャンドラ・ボースの遺骨はホンモノか

『人物往来』第5巻第2号(1956年2月)=「昭和秘史・戦争の素顔」特集号から、吉野宗一執筆の記事「チャンドラ・ボースの死因と財宝」を紹介している。本日は、その四回目(最後)。

  謎 の 石 油 罐
 遺骨と遺品とは、九月十四日に在日インド独立運動のインド人と同志の日本人を含めた百人近い人人によって、東京杉並区にある日蓮宗の蓮光寺に納められたのだ。
 住職の望月清矣〔ママ〕師は当時を追憶しながら、
「とにかく、何のまえぶれもなく〝遺骨を預ってくれ〟と云うので遺骨を持って来られました。そして、それは今も安置されてありますが、その時見かけました二個の石油罐は、印度人が持って帰りました」と、云っている。
 とすると、時価にして約百ルピー(数十億円)といわれる金銀宝石は姓名不明のインド人に渡されたことになっている。
 しかるに、この金銀宝石の行方が忽然として分らなくなったばかりか、ボースの遺骨そのものも、ボースのではないと主張する人物が現れた。
 それは現在銀座四丁目で貿易会社を営むナイル氏である。
「去年の九月十八日に蓮光寺で故ボース氏十回目の慰霊祭を行ったが、私は蓮光寺に安置されている遺骨はボース氏のものでないと断定した。それはこの遺骨がボース氏に違いないと立証するものが一つもないからだ。それで私は本国政府に運動し、ネール首相を動かして、ボース氏の実弟のサラワド・ボース氏を筆頭に三名の調査団に来て貰うことにした。何故偽物〈ニセモノ〉だと断定したかということについては、調査団の調査することだから、現在の私の口からは云えない。ネール首相は最初そんな必要はないと云っていたのだが、調査団を送って来られるようになったのは、その必要があるという資料を、私が提供したからだ。とにかく、私はボース氏と生活を供にして、インド独立のために闘って来たもので、飛行機による事放死を聞かされた時から、一種の疑惑をもちつづけて来たのだ。ボース氏の遺骨に、彼の身につけていた指輪だとか、時計などがある筈だし、台北飛行場での目撃者の証言がまちまちだったりするが、どうも信じられなくなった原因でもある。私はボース氏の死因は、インド人に渡したと云う貴金属の行方を探索することによって、一覧判然すると思っている」と語っている。
 ナイル氏の言葉が私をして何か割り切れない気味にさせたのが、この謎を解玥しようとして各方面に当らせたのである。
 ボース氏の実弟サラワド・ボース氏らの調査団が如何なる結論を導き出すか、とにかく数十億円の金銀財宝を秘めた謎の石油罐の中味が果して何であったか、数々の疑問がここに提出される。
 台北から届けられた遺骨がボース氏のものでなく、果して石油罐にボース氏の携行したトランクから、その中味がうつされていただろうか?
 とにかく、台北飛行場に於ける事故は、今日にも尾をひいているのだが、われわれとしても、あの遺骨がボース氏のものでないとしたならば、遺骨は果してどうなったか、金属の行方が一日も早く判明することを望んでやまない。  (元日映特派員)

 文中、「望月清矣師」とあるのは原文のまま。これは、望月教栄師の誤りと思われる。なお、望月清矣(せいい)という人物は実在する。
 また、「貿易会社を営むナイル氏」というのは、A・M・ナイルこと、アイヤッパン・ピッライ・マーダヴァン・ナーヤル(Ayappan Pillai Madhavan Nair、1905~1990)のことであろう。

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