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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『アラビアのロレンス』これで見納め(青木茂雄)

2023-12-27 01:30:01 | コラムと名言

◎『アラビアのロレンス』これで見納め(青木茂雄)

 先日、映画評論家の青木茂雄さんから、「『アラビアのロレンス』これで見納め」と題するエッセイの投稿があった。本日以降、三回に分けて、これを紹介したい。

『アラビアのロレンス』これで見納め(1)         青 木 茂 雄

 最近、また『アラビアのロレンス』を池袋の新文芸坐で観た。これで何回目になるか(7回目以後はカウント不能になった。DCP上映で3回目くらいになるか)。よくも飽きもせずに……。 
 2022年4月に、一旦休館していた新文芸坐がリニューアルして再開したが、チケット購入など入場方法が変わってしまって、面食らった。スマホを持っていないので会員ポイント割り引きも使えなくなり、それに2本立てがなくなり(2本目割り引きはあるが)、それに加えてチラシも大幅に減少した。特集プログラムのチラシを片手に、作品内容を事前にチェックしてスケジュール手帳を片手に観賞プランを練る、というあの至福の時間が新文芸坐上映作品については経験できなくなっているのが、とりわけ淋しい。また上映プログラムがやたらと細分化されていて、今何を特集しているのか皆目検討がつかないという有り様である。なんだか自分のような年寄りはもう観に来なくてもよいと言われているようで、しばらく新文芸坐から足が遠のいた。
 思えば、ちょっと昔の映画館、ロードショウ(今はもう死語か)劇場ではなく、とくに2番館とか、老舗の名画座の2本立て上映は、入れ替え制がなく入退場が随時OKで、途中入場で突然に暗闇に鮮やかな画面が面前するというあの醍醐味が味わうことができ、また意味がわかるまで何度でも観られるという、あの、これまた醍醐味を存分に味わえた。それがけち臭い「入れ替え制」で全部できなくなった。私が、過日閉館した岩波ホールに行かなくなったのは、料金もあるが、あのけち臭い「入れ替え制」のせいだ(岩波ホール上映の作品は、概して難しく、私のように観賞中しばしば失念する習性のある者にとっては、2度観ないと十分理解できない)。最後の砦早稲田松竹劇場は2本だてだが、コロナをきっかけに上映入れ替え指定席制となり、従ってそのまま居座ることはできなくなった。コロナがうらめしい。ラピュタ阿佐ケ谷はとっくの昔に1本立てとなり渋谷のシネマヴェーラも少し前に1本立てとなった……。
 私のように年間200本以上(かつては360本以上)を観ることにしている者にとって、経済的な負担は結構大変である(エンゲル係数ならぬ“フィルム係数”は上がりっ放しである)。後期高齢者となり、年金以外に収入がなくなった者にとっては、そろそろ見納めの時期かな、と思うこともなくはない、このごろであった。
 その新文芸坐の入り口をくぐったのは10カ月ぶりぐらいになるだろうか、新装なってすでに何回か入場しているのだが、10カ月のあいだを置くとまた何か違っている…。そういう異邦人感におそわれつつ、館内に入場してみると、そこには有り難いことに以前と同様のスクリーンが鎮座しており、客席も以前のままだ。
 館内は8割近くの客席が埋まっており、私も前の方の指定された座席で上映開始を待った。自分の左右の座席が観客で埋まっていることは、必ずしもベストの観賞条件ではないが、見渡すところ若い観客も結構いて、映画愛好者としてはそれなりに嬉しい。
「序曲」から始まった3時間47分の上映時間は、間然することなき、文字通り至福の時間であった。そのことは何度観ても変わらない。今回も同様であった。
 何度観ても感銘を受ける。自分がどういう状態であるかにかかわりなく、必ず感銘を受ける、そういう映画を私は「絶対映画」と呼ぶことにしているが、『アラビアのロレンス』は“ほぼ”絶対映画である、と言える。“ほぼ”というのは、完全でないところがわずかにあるからなのだが、その点についてはこの後述べる。
 ちなみに私が推奨する絶対映画は、洋画では『天井桟敷の人々』・『道』、邦画では『人情紙風船』・『七人の侍』(前半のみ)・『東京物語』。成瀬巳喜男作品の幾つかは(『浮雲』『稲妻』『女が階段を上る時』『放浪記』など)は絶対映画といって良いほどの出来だが、観る状態によって感銘の有る無しがあるのは、やはり絶対映画としては何かが欠けていると言わざるを得ない。
 技法にいくら長けてもテーマの背景にある“思想”の≪質≫が、やはり最後の決め手であると私は考える。                        (つづく)

*このブログの人気記事 2023・12・27(10位の豊後竹田城は久しぶり、8位に極めて珍しいものが)

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