杏林大学呼吸器内科 『あんずの呼吸 part2』

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MESCC :Metastatic epidural spinal cord compression

2007年11月29日 | Kanpo-Master の部屋
Kanpo-Masterです。 

今日のカンファレンスではY先生の提示した御題に関して結構熱い議論になりました。突然の麻痺や直腸膀胱障害、腰背部痛などを主訴に来た患者がいたら、
迷わずMESCCをまずR/Oしたいものです。
癌などのヒストリーのない初診の患者かも知れません。また必ずしも癌ではなく
椎体を破壊し脊柱管をcompressしているものはlymphoma, myeloma,などいろんな
可能性があります。高度医療ができる病院では即座のMRIでの責任病巣の同定を
行いできるだけ早く外科的に除圧のための手術に持っていくことも考えたいものです。また、椎体に破壊がなくても脊髄転移という病態も念頭におくべきかと思います。一つ文献を挙げるとするなら、
Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomised trial.[LANCET 2005;366:643-648]でしょうか、、、
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673605669541/abstract

surgery+radiation vs radiation aloneのRCTです。
対象は18才以上の癌の診断のついている余命3ヶ月以上の123人の患者
primary endpoint: ability to walk after treatment
みそは、randomisationする前にすべての患者は直ちにMRIを行い、MESCCを確認、
すぐに100mgのdexamethasoneを投与、randomisationされるまで24mgを6hrごとに
投与。surgeryはrandomisationから24時間以内に開始され放射線は3GyX10fractionsで合計30Gy行う。ステロイドはradiationが終了するまで漸減投与
で両群はITT解析されています。結果はsurgery groupが勝っていました。
後方からの圧排には椎弓切除、前方からの圧排には前方からの外科的アプローチが
いい、ということが最近分かってきたようです。実際僕も2例のMESCCを経験しました。いつどこで出会うか分からないけれどもできうる限りsurgeryに持っていく
ということ、何より神経内科、整形外科を巻き込んで、この病態が一刻を争うemergencyであるという共通の認識を持つ、ということが大事かと思います。
dexaの量も諸説ありますが、とりあえず100mg投与は悪くないかと思います。
必読の論文の一つかと思います。