玉川上水の木漏れ日の下

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のメンバー katakura のブログ  since 2013

彫刻の森美術館5 「クライン・ブルー」

2018-01-16 | 映画と美術と音楽と

イヴ・クライン 作品「人体レリーフ_PR3」 1962
178×94×33 顔料「クライン・ブルー」・合成樹脂、金で彩色された板

 彫刻の森美術館には屋外展示だけではなく、屋内展示の名作もあって面白かった。
〜〜〜
 屋内展示室の一番奥に真っ青に塗られた作品があった。なんだかとても懐かしい気がした。この「青」はIKBと呼ばれ、近代美術史上とても有名な特別な「青」なのです。意外にも箱根で本物のIKBに出会うことができて嬉しかった。
〜〜〜
 IKB(AKBではない)は「インターナショナル・クライン・ブルー」の略、フランスの画家イヴ・クライン(1928 - 1962)が考案した「理想的な染料」としての「青」なのだそうです。
 イヴ・クラインはこの「クライン・ブルー」を使ってなんでも作品にしてしまった凄い人だ。当時、とても飛んでいたアーティスト、パフォーマンスアートの草分け的存在だったが、34歳の若さで心臓発作のためになくなった。
〜〜〜
 全裸の女性達の全身に「クライン・ブルー」の染料を塗り、白いキャンバスに塗り付けた魚拓(女拓?)のようなパフォーマンス「人体測定」シリーズは有名だ。ドキュメンタリー映画「世界残酷物語」でも紹介されている。
〜〜〜
 「世界残酷物語」(1962年)はヤコペッティ監督のイタリア映画。当時の世界の野蛮で残酷な奇習・風俗を描いたドキュメンタリー(映像的にはやらせだったらしい)映画、当時とても話題になった。
 この映画の主題曲があの名曲「モア」。凄惨な映像とは対照的な爽やかなメロディーのコントラストが素敵な効果を出していた。
 当時小学生だったわたしは、母親に連れられるままに、半ズボンにジャケットの「よそ行き」の正装で銀座までこの映画を見に行った。小学生には衝撃的なシーンの連続、特に青く染まった全裸の女性達がうごめくシーンに、私の目は点となり体が硬直して動けなかった。その後、わたしのこの状況を母が友人たちに楽しそうに話していたのを子供心に覚えている、凄い母親だと感心する。
〜〜〜
 このブログの記事を書きながらイヴ・クラインを改めて調べていて驚いたのですが、
「(映画:世界残酷物語)劇中で紹介される芸術家イヴ・クラインは、試写会で本作を見て激怒し、心臓発作を起こして数日後に死亡した。激怒した理由は、彼が映画のために作曲した音楽が使われていなかったためだとも、悪意ある編集のせいだとも言われている。」(出典:世界残酷物語 - Wikipedia)
 なのだそうです・・凄い話です。イヴ・クラインの死の真相を初めて知りました。


イヴ・クライン「人体測定」1958〜


イヴ・クライン「空虚への飛翔」1960
このまさに「飛んだ」パフォーマンスは有名です。
「芸術のためならこのぐらいのことをしなくちゃダメなんだよな〜」と
まだ若かった美大生の私たちはこの写真に憧れました。
でも皆恐ろしくて真似をしなかったので誰も死にませんでした。
この写真が「実は合成」だと知ったのは随分時間が経ってからです。
真似をしなくて本当に良かったデス。

この記事についてブログを書く
« 新年会とペキンダック・キクチ | トップ | 3年後 »
最新の画像もっと見る

映画と美術と音楽と」カテゴリの最新記事