練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『嫌われ松子の一生』 山田宗樹

2006-02-08 | 読書
文庫の帯に映画化されるという情報がのっていて、映画館でも予告を観ていたのでずっと気になっていた作品だった。

だいたい「嫌われ松子」っていうのが気になる。
誰からも好かれた優等生の話なんて全然興味ないし、むしろすごいヤナ奴、大悪党の話の方が面白いに決まってる。

で、読んでみた感想は・・・
松子さんは誰に嫌われてたかというと、他ならない、「しあわせ」というものに嫌われていたんでしょうねぇ。
冒頭、勤務先の中学校でうまくたちまわろうとして墓穴を掘ったあたりではたしかにちょっと嫌な感じの女だったけれど、そのあとみんなからどんどん嫌われて悲惨な人生を送ってゆくのかと思ったら、違った。
転落の人生でどんどん悲惨な生き方になってゆくことには変わりないが、松子はすごく一生懸命だったような気がする。
それでもなんでだかすべてうまくゆかなくて、ことごとく失敗してしまう、そんな波乱の人生のお話だった。

ラストがずいぶんとあっけなくて、無意味に爽やかな感じに終わっていて、ちょっと物足りなかったかなぁ。

『高瀬川』 平野啓一郎

2006-02-07 | 読書
4編からなる短編集。
『高瀬川』は確か作者の実体験に基づく話であるということで出版当時話題になっていたように記憶している。
このような男女関係のかなりきわどい話を私小説である、と公言することに関してはあまり認めたくないと思うこともあるが、ストーリーとしては面白かった。
情事の名残の象徴であるかのような、オブジェのようなペットボトル。
それが橋の欄干から川面へと落ちてゆくシーンは、男が二人の再会を約束するための小道具をあえて捨て去り絆を断ち切ろうとしているのか、逆にそのようなものがなくとも変わらず続いてゆく未来を思っていたのか、読み手のコンディションによってはいかようにも取れるラストである、と感じた。

その他の作品はどれも実験的ともいえるような、視覚にも訴える効果を狙っていて、興味深い。
『氷塊』が面白かった。
紙面を上段と下段に真っ二つに分断し、全く別の話であるかのように二つのストーリーが進行してゆき、最後にはこれがみごとにシンクロしてゆく。
そして真実とは裏腹のところで大切な決断がなされてゆく。
サスペンス映画のようにスリリングだった。

『ウランバーナの森』 奥田英朗

2006-02-06 | 読書
『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』そしてこの『ウランバーナの森』
奥田英朗さんは「人との会話の中にこそ癒しがある」と信じているのだと思う。

思い出したくもない過去、決して他人には口外できないような悪事、記憶の中に封印していたはずなのにあるとき蘇ってしまった悪夢。
そういうものに苦しめられている人は多いはず。
いえ、誰しもが必ずそんなトラウマを多かれ少なかれ抱えているのだと思う。

そんな心の中の黒い塊のようなもの、それを取り除いてくれるのは、薬でもなく、刹那の享楽でもなく、やっぱり心を持った生身の人間と暖かい気持ちで接するという、ただそれだけのことなんだろうなぁ、と思わせてくれた作品でした。

でも、食事中には読めない本かもしれない・・・。
あの、出そうで出ない、ずっと出ないと感じるものすごいプレッシャー、そしてやっと出たときの天にも昇るような快感・・・というのはよく分かるケド・・・。