練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『高瀬川』 平野啓一郎

2006-02-07 | 読書
4編からなる短編集。
『高瀬川』は確か作者の実体験に基づく話であるということで出版当時話題になっていたように記憶している。
このような男女関係のかなりきわどい話を私小説である、と公言することに関してはあまり認めたくないと思うこともあるが、ストーリーとしては面白かった。
情事の名残の象徴であるかのような、オブジェのようなペットボトル。
それが橋の欄干から川面へと落ちてゆくシーンは、男が二人の再会を約束するための小道具をあえて捨て去り絆を断ち切ろうとしているのか、逆にそのようなものがなくとも変わらず続いてゆく未来を思っていたのか、読み手のコンディションによってはいかようにも取れるラストである、と感じた。

その他の作品はどれも実験的ともいえるような、視覚にも訴える効果を狙っていて、興味深い。
『氷塊』が面白かった。
紙面を上段と下段に真っ二つに分断し、全く別の話であるかのように二つのストーリーが進行してゆき、最後にはこれがみごとにシンクロしてゆく。
そして真実とは裏腹のところで大切な決断がなされてゆく。
サスペンス映画のようにスリリングだった。