練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『八本脚の蝶』 二階堂奥歯

2007-05-24 | 読書
二階堂奥歯さんは出版社に勤める編集者であり、まだうら若い女性だ。
でも、もうこの世にはいない。

この本は彼女が自らの意思で死を選び亡くなるその直前まで書かれた日記である。
2年弱の期間に書かれたものが収録されているが、
その長いような短いような期間の彼女の言葉を読むだけでも、
圧倒的な読書量、人並み以上の感受性の強さ、あまりにも深い思考、哲学的(宗教的)なものへの傾倒、分析能力のするどさ・・・いろいろなものがあふれかえってくるのが感じられて読むのにこちらも体力をかなり使うほど。

私はこの本をバックグラウンドを知って読み始めたので、全く息が詰まる、というか、悲しくて仕方なかった。
始めのうちこそ、お洋服の話、コスメフリークを自認する彼女のお化粧品の話、買い集めてしまう雑貨(でもかなり変わったものばかり)の話題、など、かわいいマテリアルガール的な話もたくさん日記に書かれているのに、
あるときを境に全くそういったことが書かれなくなってしまう。

怖い怖い怖いと羅列される文字。

初期の日記に彼女がある人の自殺の報を受けて
「辛くて死んだのではなく、気が済んで死んだというのならいいのだけれど」
とかいうことを書いていたが、
彼女自身こそ、気が済んで、というのとは明らかに違う心境にあったということが手に取るようにわかるのでとてもつらい。

何も分からずに、自分で分かろうともしないで「怖い」とか言っている人は愚かだと思うけれど、
彼女の場合は知りすぎて、考えすぎてしまって、生きていることに恐怖を感じてしまっているように思えてならない。

私の好きなある歌の歌詞に、くだらないことで笑えるぼくらは愚かだけど幸せ、みたいなフレーズがある。
今もしも生きている奥歯ちゃんに会えるとしたら、
そんなにおりこうでなくていいし、毎日生きていくだけで精一杯みたいなつまらない毎日でもいいから、おバカさんでもいいから生きていてよ。お父さんやお母さんより先に死んじゃいけないよ。
と言って頭をなでてあげたい。


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