保守はゴジラの夢を見るかⅡⅩⅦ

　冷戦終了後、社会主義に対抗するために新自由主義と結託していた保守主義が、いつの間にか社会主義が崩壊したら
「この結託こそが成功だったのだ」と勘違いしました。確かにその時は世界的にも勘違いしていました。勘違いしてもしかたない面もありました。
その後その矛盾があふれ出し、新自由主義＋保守主義が完全に失敗したのは2008年のリーマンショックであります。
社会主義が失敗し、新自由主義とくっついた保守主義が「成功だ！」と凱歌をあげたのは情けないと思うが情状酌量の余地はあるでしょう。
しかし、リーマンショックを見て5年たっているのに「新自由主義＋保守主義以外に選択肢がない」と言い続けています。
「この道しかない！」はサッチャーが好んで使ったフレーズでした。安倍さんもこれがお好きなようです。
他にもやり方があるのに「この道しかない」と断言してしまうようではもう付ける薬はないでしょう。
あまりに観念的過ぎで経験から学ぶことができないのは痛すぎます。
物語論から見れば物語が強すぎてリーマンショックが目の前で起きているのに見えないのです。資本主義そのものを新自由主義が壊してしまったのです。
だから考え方を変えなければいけない事態なのです。日本でこういう議論を全くしていないのです。
20世紀の社会主義は庭師たる政府が万能で、自由主義は庭師いりませんといっています。保守は強い社会主義に対抗するため自由主義に寄りました。
19世紀は自由主義が強かったのでそれに対抗する保守主義が社会主義側につきます。ある意味保守は節操がありません。
17世紀のイギリスの保守政治家ハリファックスはそういう態度をとるので”日和見”と批判されました。
彼は”日和見主義者とは何か”という本を書いて、
「左右にバランスをとり、極端に走らない知恵なんだ。そうすると左側から右翼と呼ばれ右からは左翼と呼ばれる。これが保守なんだ」と自己弁護しています。
一方で社会主義と自由主義をよく見ると結構似ている部分があります。
自由主義では経済学者が自分のことを万能だと思っていて
「万能な理性で市場原理主義を発見したのだ。自分の理性によれば政府は手を出さない方が良いのだ」という人達です。
社会主義では自分の「理性で世の中をいじくり回せるのだ」という計画経済です。どちらも”合理主義”なのです。
新古典派経済学は市場メカニズムにおいて、
「もしみんなが持っている情報が不完全の場合、例えば商品情報が不完全な場合、取引が成り立たちません。商品情報がお互いに完全ならば取引が成立します。
　　従って市場メカニズムが上手く働くためにはパーフェクトに情報が行き渡っていなければなりません」これが自由主義の教義です。
よく考えてみると、情報が完全だったら社会主義もできるではありませんか。極端な新古典派経済学者は社会主義に大変近いのです。
現にランゲという人物が”市場社会主義”という議論をしていました。
最近の議論では”異次元緩和”、インフレ目標を日銀が設定して量的緩和を行うというというのです。
つまり「目標が達成できるまで緩和を止めない」と宣言することで民衆がインフレ期待を持って経済活動をし出し、投資を始めるだろうというのです。
理論的には日銀が人々の下向きの気持ちを上向きにコントロールしてインフレ誘導できるとしているのです。
もし本当にそんなことが可能なら社会主義は成功していたことでしょう。
水戸黄門の印籠と同様に、これさえできれば方がつくという点では社会主義も新古典派自由主義も変わらないのです。根っこは合理主義なのです。
ちなみに日本では”合理主義”はほめ言葉として使われることが多いようですが政治思想の世界では良くない意味で使われる事が多いことは知っておくべきでしょう。

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