「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

明石のブルースマン「ハウリンメガネ」が贈る!「どこまでもヴァイナ中毒!」(第23回) 「マーク・ボラン編 最終回」

2020-01-16 09:11:25 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やあやあやあ!読者諸賢!

あけましておめでとう!

ハウリンメガネである。

 

インフォされた様に編集長「Mash氏」のお店

「鎌倉ジェリーズ」のクローズや、

当ブログによる連載の変更など

新年早々諸々動きだしているが、

当コラムは全くもって方針転換なし!

 

いつもどおり、好きな盤、好きな音について

これまた好きなように書き散らかし吠えまくる!

相変わらず阿呆なコラムであるが

今年もご愛読頂ければ幸いである。

(なお、Mash氏の予告どおり、今年は氏と私の共同連載も開始予定なのでお楽しみに!)

 

早速行こう!

今回は去年の最後に予告していたとおり、

「T.Rex最終回」しかも、シングル編である!

 

冒頭の写真を見ていただければお分かりだろうが、こちらに並べた6枚は全て日本盤シングル……

なれど!

(左上→右下)

・20th Century Boy/Solid Gold Easy Action

(89年CD時代プロモ盤、テイチク)

・Solid Gold Easy Action/Born to Boogie

(オデオン)

・Telegram Sam/Cadillac

(オデオン)

・Children of the Revolution/Jitterbug Love/Sunken Rags(来日記念盤、オデオン)

・Jeepster/Life's a Gus(ポリドール)

・The Groover'/Midnight(オデオン)

 

と、強力なラインナップ!

(T.Rex、当時の日本での配給はオデオンだったんだね。英EMI系列はオデオン配給だったから、英国が彼らを手放すまではオデオンレーベルで販売されていたのだ。)

 

実はこれ、Mash氏にお願いして、氏経由でとあるT.Rexマニアの方から譲って頂いたブツなのである。

というか、実はこれまでの一連のT.Rex話はこいつらが発端。

 

とある日。レコード棚を整理していた私。

(お、T.Rexだ(ザ・スライダーね)。久々に聴いてみるか……やっぱりカッコいいねぇ……シングルで聴いてみてぇな……Mashさんに聞いてみるか)

私「T.Rexのシングルあります?」

氏「いまはアルバムしか手持ちがないからT.Rexマニアの人に訊いてみるよ!」

 

結果、まあ出てくる!出てくる!盤の山(笑)!(譲って下さったT.Rexマニアの方、ありがとうございました)

 

そんな訳で、アルバムとシングルをまとめて一気に聴いたおかげでこれまで自身の中で消化できていなかった「T.Rex論」が固まったので、こうして集中レビューしている次第なのである。

 

しかし、こうして並べてみるとやはりシングルもピクチャースリーブ(ジャケット)があると見栄えするな(当然だが)。

シングル盤は音がいいのでついスリーブなしでも買ってしまうのだが、やはりあるとないとでは大違いだ。ま〜たやらしいことに日本盤のスリーブには当時の写真やら解説やらも載っており、資料性も抜群!

このマーク・ボランの写真についてる「ファンにもみくちゃにされるマーク」のキャプションを見ると当時の熱狂ぶりがよくわかる。

(しかし、キャプションに時代を感じるなぁ。「明星/平凡」的というか……昭和的ですな)

 

話が逸れた。

さて、肝心の音はどうなのか?

ご愛読頂いている方には耳タコ(目タコ?)だろうが、やはりシングル盤はずば抜けて音がいい。

コレは今月で終わり、我々が引き継ぐ「スターマン氏」のコラム 「爆音45回転」で記事のたびに書かれていた通り。

 

だが、今回はそういう話がしたいわけではない。

今回の焦点はシングル盤の音が「T.Rexのイメージ」を決定づけてしまった、という話なのだ。

 

一番分かりやすい例を上げる。

下段中央の「Jeepster/Life's a Gus」だ。

先日紹介した「電気の武者」(国内オリジナル盤はオデオン、翌年72年に早くもポリドールからの再発売となった! ) からのシングルカットとなるこの2曲、アルバムではいい具合の軽さを持ったロックとサイケ感漂う良質なアシッドフォークだったが、これがシングル盤だとどうなるのか?

 

なんとロックど真ん中!これをロックと呼ばずして何をロックと呼ぶ!?と言わんばかりのロックチューンになっているのだ!

 

ギターもそこそこデカくなっているが、それ以上にドラム!キックがデカい!ドコドコどころではない!ドッカンドッカン鳴りまくっているのだよ!特に「Life's a gas」!アルバムでの繊細さこそないが、一聴しただけで「うわ!カッコいい!」としか言えなくなる程のアコースティックロックに仕上がっているのだ!

 

同じ傾向で更にラウドなのが下段右の

「The Groover'/Midnight」

(見ろ!この顔の圧力!)で、こちらについては私、曲が始まった途端、慌ててステレオのボリュームを下げたほど。楽器隊の音がとことんヘヴィで、そこに乗ってくるマークの歌声もノリにノっており、もうこれを聴いて彼らに夢中にならないロックファンはおるまい!と断言できるラウドなグラムロックが聴こえるのだ(あまりの音に筆者は彼らのステージを幻視してしまった)!

 

多少の差はあるが基本的にどのシングルもこの傾向のミックスになっている。

(しいて言えば上段左の「20th Century Boy/Solid Gold Easy Action」は後年の盤なのでボトムは多少抑えてあるがこっちはギターがラウド!)

 

そしてこのシングルのサウンドこそが「T.Rexをグラムロックの王者」に押し上げたと同時に、彼らのその後を決定づけてしまったと筆者は断言する。

 

きっとあなたも身に覚えがあるはずだ。

まだ大して金もない頃。ラジオやテレビから流れてきた音を聴いて

「うわー!このバンド、カッコいいなぁ!買いに行こう!」

そういう時、いきなりアルバム買いましたか?いや、買えましたか?

 

そう!高かったんだよ!アルバムって!(まあ、今もそうかもしれんが)

 

もはやシングルチャートなんてものは時代遅れの遺物と化してしまったがレコード文化華やかりし頃(CDもネットが普及して曲単位でのダウンロードが当たり前になるまではそうだったが)、多くの人(特に若者)は少ない軍資金でどうにかたくさんの音を聴くためにシングル盤を購入していたのである(CD世代の筆者ですらそうなのだからレコード世代の人たちはもっと大変だっただろう)。

 

そう!つまり、当時の人々が最も聴いたT.Rexとはシングル盤のT.Rex!

 

この「ロックのど真ん中をブチ抜く」ようなラウド・サウンドのT.Rexだったのである!

そして、このシングルで定着したロックバンドとしてのイメージが、アシッドフォークの名手としての彼ら、そして後年、黒い方向へ進もうとした彼らの邪魔になった。

 

「あれ?シングルの方がラウドでカッコいいじゃない」

「え?もっとロックな曲が聴きたいのに」……

 

この

「シングルはロックど真ん中の名盤、アルバムはアーシーさに富んだグッドミュージック」

というアンビバレントな状態こそT.Rexがグラムロックの王者というイメージから逃れられなかった最大の要因だったのだと筆者は考える……

 

余談になるが、実はシングルというのはアルバム未収録の曲というのがとても多い。

オデオン繋がりで引き合いに出すとビートルズのペイパーバック・ライターやレディ・マドンナ、レボリューションなんかもそうだ(これらはオリジナルアルバムには未収録)。

 

おそらく「シングルヒットで一儲けするんや!」というレコード会社の思惑から、シングルでしかこの曲は聴けない!というレアリティをつけることでシングルをアルバムとは別のアイテム、グッズとして売る戦略があったのだろうと思う。

事実、今回紹介しているシングルも大半がアルバム未収録(ベスト盤は除く)。そしてどの盤もロックど真ん中の大名盤……そりゃあ、売れるよ!彼らにロックのイメージを持つよ!だって抜群にカッコいいんだもの!

 

あまりにも派手に咲いてしまったが故に枯れざるを得なかった時代の徒花、それがT.Rexだ。

だが、枯れたとて、美しい華は人々の記憶に残る。

かくて彼らが残した種は現代に至ってもフォロワーを生み出し続けているのである。

 

……そう!アルバムだけじゃダメなんだ!シングルも聴かなきゃこんなことには気づけない!

結局聴くしかないのだ!アナログで!

今年も回していくぞぉぉぉ!諸君も回せ!そして聴けぇぇぇ!

 

この想いを抱き、当ブログの編集長Mash氏との

「爆音45回転 Take2」に突入して行くのだぁああ!

 

興奮冷めやらぬ中、今年もよろしく!

ハウリンメガネでした!

 

《ハウリンメガネ 筆》

( 企画・編集・校正・加筆リライト「Mash」)