まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

藤島、東田川文化記念館

2009-05-31 17:46:37 | 建築・都市・あれこれ  Essay

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いよいよ明日は藤沢周平記念館の竣工引渡しの日です。内外部ともすっかり出来上がり最後となったのはサイン工事です。金曜から最後の調整に入り、土曜にはピクトグラム(絵文字のサイン)の位置などを確認して取り付けてもらいました。この時期を迎えると手塩にかけた大事なものが遠くに行ってしまうようでさびしい思いがするものですが、それはこの工事に関った皆さんも同じでしょう。

さて今日は日曜で藤沢周平記念館の現場に入れないこともあり、近いにもかかわらず見学していなかった明治建築、東田川郡役所などを藤島に訪ねました。庄内の主要鉄道駅に降り立つといつも上左写真のような米倉庫が迎えてくれます。この藤島も例外ではありませんでした。庄内地域における米生産の重要な位置づけが江戸時代から連綿と続いていることを感じます。東田川郡役所、旧田川電気事業組合倉庫を見た後、上右写真の東田川郡議事堂を見ました。二階が明治ホールという貸しスペースになっています。今日は木彫作品の展示会をやっていましたが、結婚式などのパーティ会場にもなると聞いています。歴史的建築の活用としてうまい方法だと思います。

一階に下りてみると図書館になっていました。周囲に回廊状の閲覧スペースがめぐり、中央部分が畳敷きの開架書架室になっています。廊下をぐるっと歩くと小さな部屋が次々と現れてくる仕掛けです。住宅スケールなのでゆっくり落ち着いて本を探し、また読むことができます。しかし、管理する側から見ると来館者の行動が完全な死角となり「問題が多い」プランニングです。

図書館建築を私も設計したことがありますが、発注者からもまた建築計画学からも一室の大部屋でカウンターから一望できるタイプを求められます。ベンサム流パノプティコン(一望監視システム)です。公共建築はどうしても管理する側の視点で作られてしまうことが多い中で、落ち着いて本と触れることのできる藤島方式を採用した方々に敬意を表します。

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駅に向かう途中に面白い左官仕事(だと思います)を見つけました。上左の写真の2階左手にある戸袋の意匠です(上写真右)。蝶々が花の蜜を吸っています。どういうことを意味するのかよくわかりませんがこういうところを丹念に作ったオーナーや職人さんに感心させられます。

職人さんで思い出しますが、藤沢周平記念館でも監督さん以下職人さんの一人ひとりに至るまでのきちんとした丁寧な仕事ぶりが目に焼きついています。これも庄内の豊かな歴史文化を背景にした風土がはぐくんだ文化だと思います。そういう人たちの手になる記念館もきっと庄内の風土になじむものになることを確信して明日の竣工日を迎えます。

 

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高谷時彦記 Tokihiko Takatani


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