まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

松本まち歩き(その3)

2024-09-12 16:32:57 | 建築まち巡礼中部 Chubu

松本に来ると誰もが訪ねるのがお城とこの開智学校でしょう。

ただ残念なことに、ただいま耐震補強工事中で閉鎖されています。いわゆる擬洋風の建物ということです。昔は、物真似のキッチュなものという見方が多かったと思いますが、最近は洋の建築に接した明治の人たちが、創意工夫を凝らして作り上げた一つの作品としてきちんとした評価がされているように思います。設計は立石清重、1986(明治9)年ですから、本当に「文明開化」の時代の産物です。

擬洋風とは言うことで、壁を石積みのように見せたり8角の塔や、玄関のポーチが合ったりしていますが、細部は日本の伝統建築だともいえます。唐破風や龍の彫刻などは寺院にもあります。また天使が持っている看板も、懸魚の一種ともいえます。いろいろ試行錯誤を繰り返したのだと思います。中が見られないのが残念ですが、机やいすは、隣の旧司祭館に展示してありました。かわいい家具です。いきなり、椅子と机で勉強したんですね。

旧司祭館は1989(明治22)年の建物。フランス人の神父さんが設計したそうです。アーリーアメリカン(コロニアル)様式とのこと。

確かに、下見板張りで、ヴェランダもあります。

ただ、縦長の窓や、下写真の2階屋根の破風など、古典主義的な香りもある・・・と藤森照信先生の解説がありました(コピーをして来ればよかった!)。

「古典様式(クラシシズム)」としてみると、屋根の軒の水平要素(コーニスなどで構成されるエンタブラチャー)を断ち切るように三角形の破風(ペディメント)があるなど、オーソドックスではなく、設計した神父さんの自由な造形だと思います。もちろん、切妻破風を両端で支える持ち送りなどは古典様式の柱(オーダー)の柱頭になっているので、その下に付け柱があれば、立派な古典様式です。

そのあたりのことを藤森先生は述べておられるのかもしれません。ヴェランダについても、藤森先生の解説をお聞きしたいと思いました。

高谷時彦

建築・都市デザイン

TAKATANI Tokihiko

architect/urban designer

 

 



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