まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

都市デザイン研究体『日本の広場』再読

2023-11-11 15:39:39 | 建築・都市・あれこれ  Essay

久しぶりに事務所(Studio TAK)をかたづけようとすると、いつものように本や雑誌に目が惹きつけられて、片付けの手が停まってしまう。私のサボリ癖ではなく、本や雑誌が私を呼ぶせいである。今回、片付けの邪魔をするのは『復刻版 日本の広場』(都市デザイン研究体 2009 彰国社)。

都市デザイン研究体は伊藤ていじのもとに集まる研究者たちのグループ。1960年代に3つの本(雑誌の特集号)を出している。

『日本の都市デザイン』1961、『日本の都市空間』1963、『日本の広場』1971。

どれをとってもエポックメイキングであり、またエキサイティングな都市デザイン論の展開がある。都市デザイン研究体のメンバーはその都度変わっているが、常にその中心にあるのが伊藤ていじ先生。民家研究の第一人者ということになるのだろうが、そこに収まらない建築評論、あるいは時代批評の鋭さが多くの人の耳目を集めるのだろう。

『日本の広場』では西欧の広場と違う、独自のコミュニティがときに顕在化する場所として日本の広場をとらえている。

そこでは「広場化という主体的な行動を通して、宗教的・社会的・経済的・政治的コミュニケーションの節点として利用される人工のオープンスペース」として日本の広場を定義する。その視点に基づいて、様々な場所縄文の空地からお寺の境内、そして銀座ソニービルのコーナープラザ迄がその広場化の過程とともに分析される。見事である。

一方、きちんと定義して、独自のものとして日本の広場を記述していこうという姿勢に貫かれているものの、例えば現代建築家の作った広場を分析する文章に「ほんとうの意味での広場」には成長していないという記述があるように、「西欧の広場」と比較する視点もまだ見え隠れする。ならば、素直に比較の視点をもう少し真正面に据えてもいいのではないか・・・などという思いもある。

しかし、いい本です。今これだけの質の高さを持つ本がどれだけあるのかなとも思う次第です。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

設計計画高谷時彦事務所


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