まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

産業文化遺産で映画が楽しめるまち 鶴岡

2011-04-24 22:06:05 | 講義・レクチャー Lecture

東北公益文科大学・公益総合研究センターから『産業文化遺産で映画が楽しめるまち 鶴岡』(平成22年度庄内開発協議会地域づくり支援事業)が出版されました。

P1120101

       

これは、3月12日に行われる予定であったシンポジウム「社会を変える公益ビジネス-地方都市の再生をめざして-」の講義録としてまとめられる予定でした。シンポジウムの会場は絹織物工場であった㈱松文産業旧鶴岡工場を再生活用した映画館、鶴岡まちなかキネマ(㈱まちづくり鶴岡)です。      

      

大地震の翌日に予定されていたシンポジウムは中止となりましたが、上記の冊子は私たちがシンポジウムで伝えたかった3つのテーマを3人で分担執筆したものです。出版作業に当たっては公益総合研究センターのスタッフの皆さんが奮闘してくれました。編集デザインは社会人院生の高城豪です。

       

私は、1、2章で地域の歴史・文化をつたえる絹織物工場がどのような経緯で映画館に生まれ変わったのか、その経緯を、その元になった革新的なアイデアや建物の価値などと共に伝えたいと思いました。

    

一部、建築的な詳細に入り込んでしまう部分もありますが、会場がまちキネのシネマ2であったため、木造の骨組み(小屋組み)を見あげてもらいながら、理解していただくつもりでした。地域を牽引した絹織物産業の遺構を映画館として楽しめるということの意義を共に考えたいと思っています。

P1120100

      

第3章では、國井美保研究員が㈱松文産業鶴岡工場に関わる人やくらしを、聞き取り調査や古い写真からひとつの物語としてつむぎだしています。

     

4章は、私たちが歴史的建築、歴史的建造物を考える上でいつも学ばせてもらっている工学院大学後藤先生の手を煩わせました。

      

日本だけでなく世界的な視野で、産業文化遺産がどのように扱われてきたのか、また日本は何を学ぶべきなのか、更にはまちキネは世界の潮流の中でどういう位置づけにあるのかという点についてお話をいただきました。本来は鶴岡市民の前で講演いただく予定でしたが、國井研究員と私の前で小講演会を開いてもらい、私が記録させてもらいました。

      

ところで最近深谷を訪れる機会があり、深谷シネマの竹石さんを訪ねました。七つ梅の酒造工場あとにできた映画館はそのアプローチ、中庭など大変素敵なものでした。深谷も中心市街地空洞化の課題を抱えていますが、映画館がその運営体制なども含めていろいろな意味で地区再生の核となるに違いありません。

        

古い建物の映画館といえば、上越市高田には明治建築が映画館(高田世界館)としてがんばっているそうです。時間が許せば、どんなものなのか覗いてみたいものです。

     

まちの中でぶらっと映画を楽しんだ時代は終わりました。むしろ映画を見ることが特別の体験になってきているのが現代の状況でしょう。それはそれでしょうがないと思いますが、映画館で映画を見る楽しみ、しかも地域の歴史を伝える産業文化遺産で映画を見る贅沢を鶴岡の人たちに十分満喫していただきたいものです。

     

     

         


最新の画像もっと見る

コメントを投稿